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#14 おばあちゃんだけど、時々転生代行救世主やってます

 サキシマさんの勢いに押され疲労していた私達だったけど、幸か不幸か私達の体はエンマ様から頂いた擬似的な体だったから、お腹が空いたり眠くなったりするような事は、ないらしい。
 ただ、精神的な疲れ…いわゆるストレスのような物はしっかりと感じるようで、とにかく癒しを求めた私は、猫ちゃんの姿になったシロちゃんの頭や顎や背中をナデナデモフモフさせてもらった。これはシロちゃん自身も好きだと言うので、きっとお互いへの癒し効果があったんじゃないかしら?…たぶん。
 逆にクロ君は抱っこ苦手だからか、私の背中に体をくっつけて日向ぼっこをしていた。
 ともあれ全員がリフレッシュした所で、サキシマさんに教えてもらった国会議事堂のような場所と神殿、どちらに行こうか?という話になった。
「で、どっちに行きます?」
「そもそも、こっかいぎじどーってなぁに?」
「うーん…リーダーと上位の仲間たちで生活のルールを決める所というか?まぁ、この世界の偉い人達が居る場所って思えばいいんじゃないかしら?」
 そんな感じですったもんだしつつ猫ちゃん達と話し合った結果、一般人も入りやすい神殿よりも、この世界のトップ達が多く居そうな国会議事堂の方が神の頭がある可能性が高いのではないか?という結論に至った。
 行くだけならまぁ、簡単なんだしね…

「うーん、やっぱり一般人が中に入るのは難しそうね」
 生前の世界と同じく警備がしっかりしていて、正門はもちろん裏門にもしっかり警備員が立っていた。そして私の身長の倍はありそうな高い塀で囲まれていて、中の様子を伺う事は出来ない。
 猫ちゃん2人なら何とかなりそうだけど、エンマ様の知識があるとはいえ、ただの少女で中身はおばあちゃんな私が入り込むにはちょっと難しいかも。
「あ、ユメミおばあちゃん!私が中で騒ぐから、そのスキを突いて2人が中に忍び込むのはどうかな?」
 陽動作戦ってやつね。でも…
「シロちゃんが危なくならない?ケガでもしたら大変よ」
「大丈夫!私の運動能力を舐めたらダメなんだから!」
 シロちゃんが指でチッチッチッとちょっぴりキザな素振りを見せると、フッと猫の姿になり駆け出していった。そして数秒と経たずに敷地内が騒がしくなり始める。
 それは猫一匹を追い回すような大人しいものではなく、ドーン!ガシャーンとまるで爆発でも起きてるんじゃないか?と思う程のもの。
「さ、ユメミさん。行きましょう」
「え、ええ…。でもシロちゃん、大丈夫かしら?」
「シロは、ああいう暴れる系が得意なんで大丈夫です。それよりも、警備が手薄になってる今のうちに入りましょう」
 そう言うと、クロ君も身軽な猫の姿になり、私を先導するためか振り返り「にゃ」と小さく鳴いた。
「そうね、行きましょう」
 頷き、クロ君の後を追うように裏門へと急いだ。
 裏門には先程まで立っていた警備員の姿は無く、察するに正門へ応援に向かったみたい。
「警備員さんは居ないけど…鍵は掛かってるわね」
 当然と言えば当然なんだけど、裏口の扉のノブに手を掛けても、ガチャガチャと鳴るだけで開かない。
 思い悩んでいると、クロ君が上を見上げ高く飛び上がり、壁を軽々と乗り越えていった。そして、カチャリという音がすると、人の姿に戻ったクロ君が扉の隙間から顔を覗かせた。
「周囲に人影はありませんが、中に監視カメラのような物があるから気をつけて」
 クロ君の警告に頷き、私は周囲を警戒しつつ細く開けられた扉の隙間に身を滑り込ませた。

#15につづく


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