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自動車工学

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【自動車】出力かトルクか(続き)

【自動車】出力かトルクか(続き)

 クルマにおいては、トルクは加速、出力は車速維持と昨日話しました。これは厳密ではありませんが、実用上はこの考えで問題ありません。
 なおトルクと出力は、下式のように回転数により関連付けられます。

 エンジンにおいては出力でしょうか? それともトルクでしょうか? この問題を複雑にするのはトランスミッション(以下ミッション)です。
 エンジン単独では回転数のレンジ(幅)が狭くて、車速に対応できないの

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【自動車工学】出力かトルクか

【自動車工学】出力かトルクか

 よく出力(馬力)かトルクかと言われていますが、実際にはまったく意味合いが異なります。
 出力は速度を維持するために必要で、トルクは加速するために必要です。

 加速はトルクというのは、上図を観てください。

記号の意味
 α;加速度(m/s^2)
 F;タイヤが地面を蹴る力(N)
 m;クルマの質量(kg)
 T;トルク(Nm)
  タイヤトルクはエンジントルクにギヤ比(減速比)をかける
 r;

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【自動車工学】エンジンの回転方向

【自動車工学】エンジンの回転方向

 自動車の場合、エンジン前方から見て、時計回りが標準の回転方向なのですが、飛行機の場合は、エンジン前方から見て、反時計回りが標準です。
 なぜこうなったのかは、過去の資料(エンジン設計の本やエンジン技術史の本)にもなく、良くは分かりません。
 自動車では、昔はホンダのエンジンが反時計回りでしたが、そのうちになくなりました。他社がすべて時計回りなので、トランスミッションやデフの調達に難があったのでし

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【自動車工学】圧縮比と膨張比

【自動車工学】圧縮比と膨張比

 圧縮比18と、圧縮比10+膨張比18とでどちらが燃費率が低いのか、すなわち燃費率が良いのかと言うと、PV線図を描けばすぐに分かるのですが、圧縮比18のほうが燃費率は低いです。計算すると下図となります。

【自動車工学】燃費向上策

【自動車工学】燃費向上策

 出力計算エクセルシートを使って、圧縮比、過給圧力比、冷却損失、機械損失(摩擦損失)だけを変化させた場合の、燃費率に及ぼす影響を観てみました。

 圧縮比を上げるのが、燃費率低減に一番効果があります。ガソリンの場合はノッキングが課題で、マツダSKYACTIV-Xの圧縮比16.3、日産可変圧縮比の14あたりがトップレベルです。
 ディーゼルは排気(特にNOx)との兼ね合いです。NOxを下げるため、圧

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平均有効圧の上限は何で決まるのか?

平均有効圧の上限は何で決まるのか?

 ガソリンエンジンの大敵はノッキングで、酷いとピストンやシリンダボア内面が溶けて、焼き付いたり穴が開いたり、エンジンが大破します。筒内圧や筒内温度が上がると、ノッキングが起きますので、これで最高筒内圧の上限すなわち平均有効圧の上限が決まります。
 排気や燃費を気にしなかった時代は、ノッキングを防ぎつつ平均有効圧を上げるために、高負荷時には過濃混合気とし、ガソリンの気化潜熱で筒内を冷やしていて、兼坂

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【自動車工学】平均有効圧

 排気量が大きければトルクは増えるので、エンジンの本質的なトルク性能を考えるのには平均有効圧を用います。排気量1リットル当たりのトルクみたいなものです。式は下記です。

 平均有効圧は、

無過給ガソリンエンジンで大体
 平均有効圧=1MPa=10bar≒10気圧
 最高筒内圧=7MPa=70bar≒70気圧
過給ガソリンエンジンで大体
 平均有効圧=1.4MPa=14bar≒14気圧
 最高筒内

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【自動車工学】公式集

【自動車工学】公式集

 性能計算用エクセルシートを作りました。開くと下記ですので、灰色セルの青太字の数値を変えることでバリエーションを楽しめます。灰色セルの普通の字には、常識的数値が入っていますので、いじらないで下さい。
 同じクラスのクルマで、ガソリンとディーゼルの排気量の違いとか、燃費の違いとかが分かります。

都度追加していきます。

【自動車】ガソリンか電気か;動力性能

【自動車】ガソリンか電気か;動力性能

 日産リーフのトルクカーブを見つけたので、ガソリンエンジンと比べました。ガソリンエンジンは、リーフの出力に合わせてトルクカーブを決めました。その際には一般的なNAガソリンエンジンの回転数と平均有効圧を用いています。

 ガソリンエンジンの低速トルクが貧弱すぎると思うのは早計で、ミッションで低速トルクを持ち上げます。
 ミッションも含めて、駆動力相当を比較すると

 このときガソリンエンジンは排気量

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【自動車】ガソリンか電気か;燃料代

【自動車】ガソリンか電気か;燃料代

 ガソリンの仕様は下記のようなものです。

値段;136.4円/リットル(神奈川県ガソリンスタンド平均)
 e燃費(https://e-nenpi.com/gs/prefavg
低位発熱量;44MJ/kg
 村中重夫『新訂自動車用ガソリンエンジン』32ページ
密度;0.783g/cm3 at 15℃
 機械工学便覧γ4-1

つまりガソリンは1MJ(メガジュール)あたり、3.96円します。
 一

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【自動車工学】番外編

【自動車工学】番外編

 蒸気機関を発明したのは誰でしょう? ネットが発展する前だったら、間違いなくジェームズ・ワットと答えたことでしょう。でも違います。
 クリスティアーン・ホイヘンス(1629~1695)が1673年に、世界で初めて火薬を使った往復型のエンジンを発明し、実際に試作されました。

 Cに火薬を入れておきます。ピストンDがBの位置に下がっている状態で、火薬に点火すると、火薬が燃焼し、ガス圧によりピストンD

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【自動車工学】氷冷システム

【自動車工学】氷冷システム

 インタークーラの水冷とか空冷の話をしましたが、速度記録車には氷冷があります。JCB DIESELMAXというディーゼル車です。2006年に563.418 km/hというディーゼル車の記録を出していて、まだ破られていません。
 なお開発には、イギリスのエンジン研究所リカルドが携わっていました。

 インタークーラだけでなく、エンジンの冷却系全体が氷冷です。上記ホームページの動画からですが、氷冷シス

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【自動車工学】インタークーラ

【自動車工学】インタークーラ

 面白いページを見つけました。第二次世界大戦時のアメリカ陸軍戦闘機P47のターボやインタークーラを含めた吸排気系が良く分かります。

 自動車だとエンジン本体とターボは近接させますが、P47ではエンジンから7~8mも離れたところにターボがあります。自動車はエンジン回転数や負荷変動が激しいですが、飛行機は左程でもないから許されるレイアウトなんでしょうね。
 インタークーラはターボと同時に、アメリカが

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【自動車工学】効率を計算すると

【自動車工学】効率を計算すると

 オットーサイクルとミラーサイクルの効率を計算しました。空気サイクルなので、比熱比κは1.4としています。ミラーサイクルの1.5とか2とか3は過膨張比ξです。

 実際の効率は、この6割くらいですが、ミラーサイクル化、過膨張化すると熱効率が上がることが分かります。
 いわゆるミラーサイクルの過膨張比は1.5くらいが限界なので、効率を追い求めるのなら、別の膨張シリンダが欲しいところですね。