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私が「アイドル」から感じた切なさの正体

時々ふと耳にした言葉が脳内にこびりついたかのように、ぐるぐると回り続けてしまうことがある。メロディーに乗っているからこそどんどん巡っていく。しばらくすれば口ずさんでいる。つい最近私はYOASOBIというアーティストを初めて聴いた。小説を元に歌を作っているということくらいは知っていたものの、流行のアーティストに興味が持てなかったせいだ。


★ここから「アイドル」の話でなくて私自身の話になります。


私がこの曲を知ったきっかけとは推しの子という元々好きだった漫画がアニメ化したということだった。今期は好きな漫画が映像化していることが多かったのだが、その中で一番印象に残った主題歌がこの「アイドル」だった。最初に聴いた時に私は何だか強く切なさのような感情を抱いた。推しの子とは母の愛をテーマにしている話でもあるので、コメント欄にも感想がいくつも書きこまれている。だけど私が引き込まれたのは違う歌詞だった。

誰かを好きになることなんて 私分からなくてさ


この胸がぎゅっとなるような感覚は何だろうと思った。そして音色もどこか切なさを感じる。これはアイというキャラクターの抱える闇を表しているのだろう。そして次に私が思ったのは、自分が今まで好きになってきたのは本当の好きだったのだろうかという何だかよくわからない感傷についてだった。

私はこれまでに数人「誰かを好きになるってわからない」と言っている女の子と出会ったことがあるが、みんな普通に男の子と付き合ったり結婚している。それなのにどうして「好きってこういうことだよ」と言っていた私の方が今このことで違和感を感じているんだろう。



ふとした時に感じる自分の中にあるぽっかり空いた穴のようなもの。それはもしかしたら自分が一番欲しいものを持っていないからそんな風に感じるのかもしれない。恋愛観がどこかいびつでいつも幸せになれる恋を選べない人もいると聞いたことがある。私もどこかそういうところがある。

誰かに愛されたことも 誰かのこと愛したこともない

この言葉の全てが自分に当てはまるわけではないと確実に言える。だけどどうしてこの曲はこんなに刺さるのだろう。何かを思い起こされる気がする。


夜中に一人になるとたまに無性に寂しくなることがある。心が落ち着かずに何度も寝返りを繰り返すしかなくなる夜。深夜ってどうしてこういうどうしようもないことばかりを考えがちになってしまうんだろう。真っ暗な天井を見上げていても何か答えが降ってくるでもないというのに。

思い出したのはかつての自分のことだった。私は幼少期から次々にいろんな人を好きになるという恋多き少女だったらしいのだが、その一方でこれが初恋だといえるほどに深く好きだという人はなかなかできなかった。あの一瞬心の中に引き留めてはこれじゃないと思うような感覚。好きな人はできてはいたけど、遠くなる度に心に去来する虚しさにも似た気持ち。

だから「誰かを好きになることなんて 私分からなくてさ」という部分に共感する。確定的な愛が手に入るまではこれが愛だと認められないのだろうか。むしろ信じられないのは自分の気持ちの方なのかもしれない。離れる度に「本当はそこまで好きじゃなかったのかもしれない」と納得させる、その行為こそが自分を否定していることだった。その人を好きだった私自身を認めていなかった。



知っているけど認めない。愛と呼んで良かったのかもわからない。

YOASOBIのAyaseさんがどういう意図でこの歌詞を書いたのかはわからない。それでもこの歌詞は今の私にとても必要な言葉だった。いつか「誰かを好きになるってこういうことだよ」ともっと自信を持って言える自分になりたいと思った。

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