2018年

「早くしなさい、ハル。お父さん、もう家出ちゃったわよ」

私こと西城ハルは、大阪の地元の高校に通う高校2年生の女の子。
今は夏休み中で、特にすることもなく暇なので、
父と一緒に広島の呉までボランティアに出掛けている。

「ごめんごめん、支度に時間かかりすぎちゃって。
もう家出ます。置いてかないで、お父さん」

ボランティアに参加したきっかけは、
テレビで、西日本豪雨の悲惨な映像を見たこと。
ガレキが散乱した土砂、その場で泣き崩れる住民の方々の姿を
目にして、私は居てもたってもいられなくなってしまったのだ。

「はあはあ、待ってお父さん。いつも早すぎだよ」

息を切らして、呉行きのバスが出ている駅のホームへと向かう。
どうにかこうにか、父の背中に追いつくことができた。

「遅いぞ、ハル」

私の姿を目にした父は、嗜めるように

ひと言だけそう呟いた後、

「必要な時スグ取り出せるように、マスクと手袋だけ
別のポケットに入れてるんだ。どうだ、良いアイデアだろう?」

肩にかけた大きな黒いリュックサックを見せびらかし、
自慢気にそう呟いた。

「良いアイデアだと思うけど・・・
ファスナー、半分空いてるよ。それだと荷物落っこちちゃうよ」

父は、世のため人のため何かをするのが、好きな人だ。
それは良いことなのだが、少し慎重さに欠けている部分がある。

「10時30分発、大阪発呉行きのバス、
もうまもなく発車しまーす」

ホームで20代と思わしき若い男性のアナウンスが流れる。
あ、やばい。本当に置いてかれちゃう。
そう思い、慌ててバスが発着する場所へと向かう。

「ほら、お父さんも早く早く」

そう言って、勢い良く父の袖を掴む。
ホームの窓から雲一つない、澄み切った青空が目に映った。


「2018年」をキーワードに書いたもの。
西城=5月にお亡くなりになられた、歌手・俳優の西城秀樹さんのお名前から。
ハル=成人式の日に、世間を賑わせた「はれのひ」の「晴」 そして
山口県周防大島で行方不明だった藤本理稀くん(2)を発見・保護し、
西日本豪雨の被災地に出向き、ボランティア活動を行った
尾畠春夫さん(78)の「春」にちなんで名づけました。
あの騒動と掛け合わせるなんて、尾畠さんに失礼なような気もしますが・・・
今年大ヒットした曲や、ドラマのタイトルも盛り込まれています。
探してみてね。
2018年に起きたすべてのことを絡めるつもりでしたが、流石に無理でした。
「西日本豪雨」「星野源」「半分、青い」の3つくらいしか盛り込めなかっ

た・・・本人の許可を得ることができたら、尾畠春夫さんをモデルにした

小説を書いてみたいです。では、拙い文章を最後までお読み頂き

どうもありがとうございましたm(--)m

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