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「『人間にとって差別は一番いけない』とまず言わはった須田さん」岡部伊都子

最近の悲しいニュースを見て思い出したのは、随筆家の岡部伊都子と哲学者の鶴見俊輔の対談。

須田剋太という司馬遼太郎の『街道をゆく』で挿絵を描いていた画家を知る岡部と鶴見は、彼の服装の話から始まり、少しずつ思い出を語る。ー以下引用ー

岡部:まったく労働服やね。

鶴見:ジーンズですね。

岡部:ジーンズ。いっぱいあちこちにポケットがあって、そこに何やかやいっぱい入れてはった。それで会うたらやさしいねん。やさしい。ー中略ー

いっぺん、講演があった時に聞きに行ったら、一番最初に言いはった言葉、人間にとって差別は一番いけない、と。差別いうもんを許してはならない、って言わはったんですよ。私びっくりして、絵描きさんのお話や思うて行ったら、違いますねん。そういう差別との闘いをまず言わはったことに、私は感動しましたね。-中略ー

ここにある「バスク大統領官邸」の絵もそうですけど、まったく国境の外からは認められてないような国に愛着をもつという、そういう意味では、はじめから差別を嫌う、平等が好き、人間愛が好き、そういうお人でしたな。ー以下省略ー

鶴見:すごい人だったね。-中略ー不思議な人でしたよ。自分の生涯で会った、驚くべき人物だったね。-以下省略ー

岡部:そうね。やさしい人ですやん。やさしいやさしい・・・・・・。いつでも展覧会を見せてもらいに行きました。なんかその絵が物語ってる。言葉を発してる。ー以上引用ー

高齢の画家の家に鶴見が訪問した際には、画家は、客へお茶も出さずに、目の前で”逆立ち”をしてみせたというユーモラスなエピソードも。それが、須田にとってのおもてなしであったようだ。

こんな、人間味あふれる、愛すべき人がいたんだな。この対談は、『まごころ 哲学者と随筆家の対話』という本から引用したが、YOUTUBEで岡部さんと鶴見さんの実際お話ししている音声が聞けます。本当に素晴らしい対談です。学問、歴史について、戦争、生きるとは、死とは、お話しの内容は多岐にわたります。

長いけれど、このお二人のおやさしい声を聞いているだけでも、ためになります。

岡部さんと鶴見さんは戦争体験を実際に持たない私の世代からは考えられないような辛い体験をされてきて、平和のために懸命に活動されていました。

お二人や画家の須田さんのことを思い出すと、私も、平和を願い、平和な世界のために動かなきゃと思います。

平和のために動くことは、有名な人や活動家だけがするものではなくて、誰だって幸せになりたいし、そう願うなら誰にだってできることです。

私は音楽をやっているから、"Music for all of you"という言葉がどこからともなくやって来ました。

音楽は、人間だけでなく、植物や動物をも癒す力があるようです。

自分がいなくなってからの時代にも、まだ暴力や戦争が正当化される考えがあっては困ると強く思います。








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