夏目漱石の名作に登場するお茶・紅茶への思い 6
Ⅱ 漱石と紅茶 1
帰国後漱石は、大学の講師(英文学)をしていたが、教え子たちを自宅に集めて、紅茶を振る舞っていた。また漱石の小説にも、紅茶のことがたびたび登場します。
❶『虞美人草』
「うんいた」と甲野さんは献立表(メヌー)を眺ながめながら答える。
「いよいよ東京へ行くと見える。昨夕京都の停車場(ステーション)では逢わなかったようだね」
「いいや、ちっとも気がつかなかった」
「隣りに乗ってるとは僕も知らなかった。――どうも善く逢うね」
「少し逢い過ぎるよ。――この