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著作権

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引き際も彼に倣って欲しかった。映画『シェーン』事件

引き際も彼に倣って欲しかった。映画『シェーン』事件

TPP(環太平洋パートナーシップ協定)が発効され、日本での著作権の保護期間が50年から70年になったのが2018年だが、施行日が「2018年12月30日」というのをご存じだろうか。なぜ、2019年1月1日ではないのか。これについて説明を見つけることができなかったが、本稿で述べる「シェーン事件」と無縁ではあるまい。この事件こそまさに1月1日の始まりが問題にされたものだからだ。なお、ドイツ人の元物理学

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著作物の定義にある「エラー」の可能性

著作物の定義にある「エラー」の可能性

先の記事(1)で、「著作権」という言葉そのものについて触れた。今回は、旧著作権法には記載がなく、現行の著作権法にはある「著作物の定義」について考えてみたい。これは大家重夫氏の著書において次の文に差し当たったからだ。

著作権法で保護される対象はあくまで結果であって、そのプロセスではない。創り手の思い、発想、かけた時間への報いでもない。定義に合致するかどうかが条件なのだ。著作権法にある定義を見てみよ

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「著作権」って変な言葉?ー法律用語はつくられるー

「著作権」って変な言葉?ー法律用語はつくられるー

(※3/27の16:00頃公開後、タイトルを変更、本文の流れをよくするために追記、文字の強調をしました)
著作権は難しい。少なくとも私には難しい。一応それなりの資格も持っているので、ある程度は理解しているつもりだが、いまだに「無理くり飲み込んでいる」感覚である。なぜか。

条文は辞典ではない「著作権法とは何か」「著作権とは何か」を考えるとき、人が向かうのは条文(法律の内容が書かれた文書)である。一

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著作権とはなんですかー世界のサイトからー

著作権とはなんですかー世界のサイトからー

20年程前に少しだけ特許翻訳を教わったとき、「日本語より、英語を読んだ方が意味がわかりやすいな」と思ったことがある。特許文書や法律文書は特にそういうことがある。母語だからといってわかるとは限らないのだ。

著作権についてたまたま調べ物をしていたら、WIPO(ワイポ;World Intellectual Property Organization)という公的な知的所有権組織のウェブサイトに、以下のよ

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ファスト映画、無断利用そしてリスペクト

ファスト映画、無断利用そしてリスペクト

「ファスト映画」というワードを見聞きするようになった。ある映画作品の「あらすじまとめ」を映画本編の映像、画像、セリフを用いながら、10分程度の動画に編集し、Youtubeなどにの動画配信したものを指すというものである。それが相当な再生回数となり、劇場での鑑賞、DVD販売、配信の妨げとなっているということで問題になっているらしい。

「そりゃ問題になるわいな」と、記事にまとめていたらとうとう逮捕者が

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川上大雅『著作権Q&A』玄光社、2020.

川上大雅『著作権Q&A』玄光社、2020.

著作権について語りながらも「間違ってたらどうしよう」と日々おびえていたりする横山、条文だけでなく書籍にもあたろうと、ジュンク堂に行ってみた。いくつかの著作権法関係の書籍の中で、表題の一冊を購入。

2020年8月31日刊で新刊である。著者の川上大雅先生はこのご著書で初めてお名前を知ったが、私よりお若い弁理士・弁護士さん。「実際に発生しがち」という相談への回答をメインに、著作権法のざっくりとした説明

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著作権をまもらせるために

「クリエイターたるもの、最低限の著作権法の知識は学んでおくべきだ」とはよく聞く(ように思う)が、知財業界に入って著作権法を学んできた印象は「とても難しい」というものだ。もちろん他の法律も同じだと思うが、「最低限の知識」とはどこからどこまでなのか説明するのはなかなかに困難だ。

道路交通法を知らなくても、道を歩くことはできる。しかし、ルールを知らないと、大変なことになる。最悪の場合、人にケガを負わせ

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ジブリの提供画像を利用する

ジブリの提供画像を利用する

スタジオジブリが「常識の範囲内でご自由にお使いください。」というメッセージをつけて、公式ホームページに画像を公開した(2020年9月18日)。まさかの画期的な取り組みであり、知財関係者の間でも静かな盛り上がりを見せている。

しかしながら、どのように使うのならいいのか、いけないのか、実際問題として判断は難しいのではないだろうか。そこで私の考えを簡単にだがまとめてみたいと思った。あくまで私見だが、ご

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