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授業ナッジ⑥7月の様子(3種類の振り返り)【行動経済学×学校教育】

本記事は、授業ナッジ第6話になります。
前回の記事(第5話)⇩


授業の「振り返り」が建前になっていない?

昨年度「振り返り」に関するアンケートを取りました。
児童自立支援施設に併設された我が校の子どもたちは
「先生のために書いている」
「すでに理解している内容をなぜ書く必要があるのか」
という非常に素直な回答をくれました。

学んだことを「振り返る」活動が、
子どもたちにとって
「有益である」「成績の向上に役立つ」と
実感できるような内容の作成が必要だと考えました。

いわゆる「血となり肉となる振り返り」です。

①毎授業の振り返り(一番大切な振り返り)

振り返りの前に語る言葉

課題に取り組み終わった後、授業の最後に振り返りを行います。その前に、必ず教師の語りが入ります。語りの内容は、学級の学び方の様子やよかったことについて語ります。そして、以下のような「振り返りの目的」も繰り返し語ります。

「振り返りはあなたのためのものです。教師が納得するものを書く必要は一切ありません。次のあなたがよい学び方ができるようになればそれでよいのです。絶対に教師のために書かないでください。よかったことも、失敗したことも全部受け止めるので、あなたのために、あなたのパワーアップのために書いてください。」

これは1月の振り返りです。ヤンチャだった生徒がここまで記述するようになりました。

振り返りの構成

A「今日の学習で学んだこと」・・学習した内容【見方考え方を通すとなお良い】
B「未来像を意識してできたこと」・・授業中の具体的な学び方や在り方
C「次回の授業への課題と対策」・・次の授業に繋がる行動を記述させます。

4月は、教師が示す例文を模写することもできず、「◯◯が理解できた」「協力して頑張る」といった抽象的な振り返りが多く見られましたが、「振り返りに真剣に取り組む」という大きな変化は速やかに見られました。

昨年度、振り返りの時間になると、適当に書いたり友達と話し始めたり、紙を丸めたりする生徒もいましたが、静かに自分自身と向き合うようになりました。何も書かずに提出する生徒や適当な内容を書く生徒は見られなくなりました。

学ぶ「質」の変化

6月の「クマゼミの増加の原因を探る」授業では、4月から変わらず「基本問題」の解答を写していた生徒Aが、「なるほど、そういうことか」とつぶやく場面がありました。その日の振り返りで、自分でも基本問題を理解できる可能性があることに気付き、自分で解答を考える習慣が始まりました。

7月には、解答を見ずに理解できない部分を仲間に具体的に説明し、アドバイスを求めるようになりました。

②単元テストの振り返り


掲載認可済

単元テストの振り返りでは、授業の振り返りで自己と向き合う効果を実感し始めていたことから、自身の良かった点や課題を具体的に記述する生徒が増えました。特に「できなかったこと」を的確に書き出し、良い判断に繋げる力が身についていました。

また、教師だけでなく「仲間」からも「単元を通した学び方」についてのフィードバックを受けるようにしました。アドバイスや悩みに共感するメッセージなど、内容は多岐にわたりました。1学期末のアンケートでは、9割以上の生徒が仲間からのフィードバックが自身の学びに肯定的な役割を果たしていると回答しました。

③定期テストの振り返り

7月の定期テスト振り返り

「学習時間」「学習の量」「学習の質」の3つの観点に着目し、長期的な「学び方」を考える機会を設けました。5月に行われた第1回目の定期テストの振り返りでは、単元テストの振り返りと同様に、抽象的な記述が目立ちました。

しかし、7月に行われた第2回目の定期テストでは、多くの生徒が自分の学習を適切に振り返り、具体的な記述をするようになりました。これは、授業や単元テストの振り返りを積み重ね、「学び方を振り返る」ことの有用性を多くの生徒が感じた結果と言えます。

まとめ

私の経験上、毎授業の振り返りはPC端末で良いですが、単元テストや定期テストの振り返りをする際は「紙」をお薦めしています。全てPC端末で振り返らせた年度に「長期的な記憶を振り返る際は、紙の方が思考を整理しやすい」という結果が出ました。

固い記事ばかり続いて申し訳ありませんでした。
生徒指導だけでなく、授業も大切にしていること、また授業もナッジできることをお伝えする記事を書かせていただきました。後日わかりやすい解説記事を改めて書く予定です。

ではまた次の記事で。


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