見出し画像

江戸川悠の考察教室シリーズ

江戸川悠の考察教室とは?

「日本近代文学作品をミステリのロジックで解き明かす」をテーマに、各巻読み切り形式で文学作品を読み解いていくライトミステリです。
 ライトノベルを読みながら、楽しく文学に触れてもらうために書いているので、文学初心者さん、国語が苦手だった方、読むきっかけが無いまま大人になってしまった……という方にオススメの易しい文学入門小説です。

ライトノベル形式でやさしく作品を解説。

 文学にあまり触れてこなかった男子大学生・倉知を主人公に、<僕>の一人称視点で物語が展開されるので、気軽に読み進められます。
 主人公と同じ文学講義を受講する、文学少女・有栖がサポート役に、講座を担当する江戸川や他の講師陣が、作品の成立背景、文学用語をわかりやすく解説。
 読み解き方は、各巻の課題作や担当する講師のスタイルによって変わり、同じような読み解き方にならないよう配慮しています。

ライトノベルですが、課題作の読み解きの邪魔にならないよう、イラストはありません。

基本的には刊行順にお読みください。

 読み切り形式なので、気になる課題作品の巻だけでも読むことは出来ます。
が、既に説明済みの用語などを省いているので、刊行順でないと厳しい部分もあります。
 シリーズとして登場人物やその関係性が解らないまま読むのにストレスを感じる方はオススメできません……。
 なので、背表紙の番号の若い順(刊行順)からお読みいただくのが一番楽しめるかと思います。
 
以下、刊行順にご紹介していきます。

第①巻は、芥川龍之介の『羅生門』

P.140/500円/(2015/09/20発行)

 高校の教科書採用率100%を誇る「羅生門」を、入門編にあたる①巻で取り扱いました。
 テクストに書かれた言葉の意味を丁寧に読んでいき、文学館に収蔵される直筆原稿や草稿、執筆当時の大学ノート、作品について言及した文章や書簡をもとに、作品に込められた意図を考える、という回です。
 第①巻ということで、ボクシングで例えるとジャブ的な1発になります。

第②巻は、プロレタリア文学の旗手・葉山嘉樹

P.136/500円/(2016/09/18発行)

 一般的にはあまり馴染みの無い作家、そして、プロレタリア文学です。
 かつては、教科書に採用されたこともある作品なのと、文庫4ページ程度の作品なので、第②巻で取り上げるのにちょうど良い作品でした。
 女工の手紙の真意は何か? そもそも女工は存在するのか? 手紙が虚偽の可能性は? なぜ、それを受け取る与三の設定が必要なのか? 様々な謎を一つ一つ議論しながら検討していく回。
 文学×ミステリシリーズとしては、ストレートな1発。

番外編①、『蜜柑』『坊っちゃん』などを扱う短編集。

P.154/500円/(2017/04/01発行)

 このシリーズ番外編にあたる学外①は、一冊にするほどのボリュームにならない話を短編集にしたものです。
 本編の講義を終えた主人公たちのその後を書いた後日譚。
 掲載順にお読みいただくと、本作(学外①)に共通するテーマがより深く味わえる仕組みとなっております。
 本編よりライトなので、ジャブ的な1発ですが、少し捻ってあります。

第③巻は、中原中也『山羊の歌』『在りし日の歌』

P.208/500円/(2018/01/21発行)

 本編③巻目ということで、詩を課題作に取り上げました。
 が、詩の読み方は人それぞれでもありますので、私の解釈を押し付けぬよう、中原中也にとっての「詩とは何か」を基盤に、史実や作家本人の詩論との照らし合わせから浮かび上がる詩に込められた想いを探る、という方法で読み解く回となりました。
 文学の講義としては、一番ストレートな回。(講師も違いますしw)

特別編①、森鴎外『高瀬舟』

P.208/500円/(2022/09/25発行)

 シリーズ本編の2年後にあたる特講①は、教室の中で終わる本編と違い、外に出てのフィールドワーク的要素を少し取り入れました。
 作品の読み解きも、喫茶店で雑談しながら、ド定番教材を授業ぽくない読み方で読んでいく、文学談義的な回になります。
 課題作に関連付け、<文学国語>と<論理国語>という問題と文学を習う意義についても触れています。
 本編よりミステリ要素の強い、変則的な回なので、フック的1発です。

特別編②、宮沢賢治『やまなし』

P.302/700円/(2023/05/21発行)

 前巻同様、本編の講義ではできないこと、として、年齢、性別、生育環境の違う者同士が協力して読み解く、グループワーク的な回です。
 課題作は、国語教材の中でも<難教材>として名高い『やまなし』。
 <クラムボン>をはじめとする、賢治独自の言葉をどう読んでいくのか、<幻燈>という装置や<私>の視点が置かれた意味を、あらゆるものをヒントに多角的に捉え、自分なりの答えを見つける回。
 現在の私に可能な、全体重をのっけた、全力アッパー的な1発。

番外編②、草野心平と茨木のり子

P.154/500円/(2023/09/10発行)

 学外は短編集ということで、短めのお話二本立てです。
 特講②の一か月後くらいの時系列の物語なので、特講①②が必読になります。(登場人物的に)
 二本とも詩が課題なので、本編③も読み返していただければ幸いです。
 一本目は、蛙の詩人・草野心平の詩。「冬眠」や「生殖」など、独特の表現に戸惑う方も多い詩。
 二本目は、現代詩の長女・茨木のり子の詩。平易な言葉で一読しただけで背景も内容も理解できる詩。
 わかりづらい詩とわかりすぎる詩という対比で、それぞれをどうやって<自由に>読むことが出来るのか。<自由な解釈>とはどういうことか、を考える回。
 あまり文学的な要素を含まない、読み方の提案的なジャブ2発。

刊行順に関係ない読み切り作品もあります。

 無料配布で出した冊子、アンソロ寄稿作品など、シリーズ未読の方でも読める作品もあります。

無料配布冊子①、芥川龍之介『父』

 シリーズの巻数が増え、手を出しづらくなっている状況を踏まえ、「こんなことをやっているよ」という案内のつもりで書き下ろした読み切り作品。
 芥川の作品としてはそれほどメジャーでない『父』という、ごく短い作品を課題作に、どういう技術が使われているのか、この作品がもつ構造の意図はどういうものか、最後の一文はどういう意味か、を考え、なぜ芥川作品は面白いのかという文学談義をする回。
 気軽に読んでもらうための無配の割に、文学用語が入りすぎたという反省もある作品。
 BOOTHにて無料ダウンロードできます。


出張版、志賀直哉『城の崎にて』

サークル『青冬』さまの『城崎にて?』(2018/07/16発行)寄稿作品。
文学解説要素はほぼ無いですが、『城の崎にて』に絡めた事件になるので、原作は必読です。

 2018年1月に、創作仲間と『城の崎にて』の舞台、兵庫県・城崎温泉を旅しました。その際、私のわがままで、作品内の旅館のモデル「三木屋」さんに泊まり、志賀直哉記念室となっているお部屋を見学したり、湯めぐりを体験したり、「城崎文芸館」にも足を運びました。
 それらの想い出を創作作品集として残そう、という提案をサークル『青冬』さまから頂き、旅行文集『城崎にて?』に寄稿が決まりました。
 その旅行の際、「旅館の館内地図を使用した<城崎殺人事件>を、みてみたい」と(冗談ついでに)お題を頂いたので、この作品が生まれました。
 時系列は学外②の数か月後の設定ですが、アンソロ寄稿作品のため、考察教室シリーズを知らない方でも読めるものになっています。(もちろん知っていた方が楽しめますが……)
 そのため、文学作品の解説要素はほぼ無く、ご当地ミステリ作品となっております。
 現在、個人誌未収録のため、アンソロをお持ちの方しか読めない状態ですが、主催の方からは完売後の個人誌再録はOK頂いているので、機会があれば本にする予定です。


以下、刊行予定。

 本編④巻:太宰治『道化の華』
 本編⑤巻:夏目漱石『こゝろ』

※文学フリマなど、創作文芸イベントにて刊行し、たまにBOOTHで通販もしています。 
 ほか、学外や特講を刊行予定。詳しくは以下の記事にて。


この記事が参加している募集

文学フリマ

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?