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詩『幸待草行進曲』

ビルとビルの隙間から漏れる光
あたたかい線を描きながら、sigh
まだつめたい街に接吻してゆく

ひた、ひた、ひた、
同じようなハルなんて
一度たりとも孕まない

頬にかかるあられが解けて、薄紅のゆめが混じってくる。ふわあ、ぶわあ、強風がひとびとの肌を騒ぎたてる。はる色のシャツを羽織って、季節に呼応してゆく。あたたかい視線を縫って、春一番が駆け抜けた。ポケットのなかで、指と指をすり合わせて、ほのかに手を叩く。今年のはるは、どんな顔をしているんだろう。満開のそらを想像している“幸”待草、ふらり。両足で背伸びして、ビルの谷間から、空を見上げる人影、はらり。温もりと肌寒さが同居しているんだよ、3月、March。わたし、といもうとの誕生月だから、陰と陽の空気を感じさせるんだね、正反対の行進曲。入り乱れる寒気と陽気みたい。今宵、とうとう笑顔がほころぶのかしら。開花を待つのはながいのに、満開から散りだすまでは、駆け足のはやいチルドレンのようだ。季節を切り替えるスイッチがゆっくりと加速してゆく。気温が上昇していって、Hello!さくら、さくら、咲く、斜めに光って、しゃららら、

やわらかい耳たぶよりも
薄い花弁が舞い上がって
記憶を掃いてゆく摩天楼

宙を泳げ

思いやりが詰まった櫻色が
背後から吹き上げて、hun
あっという間に過ぎ去って
光がくわらん、くわらん、
四方八方に迷っているんだ

(戦争なんていらない)

風に乗せてゆくメッセージ
都会の片隅に圧縮した残骸
雨が含んでいたかなしみを
光の欠片たちが跳ね返した

宙で踊れ

ぴた、ぴた、ぴた、
似ている、
似ているけれどちょっと違う、
いつもの誕生日に
すぷりんぐ・はず・かむ

まったく同じハルなんて
一度たりとも産まれない

『やあ、今年も異母兄弟みたいな春が来た』

photo:フリー素材
design:未来の味蕾
poetry:未来の味蕾

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