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詩『マグリットの空』

ブラインド越しに覗いたあなたは、まるく切り抜かれた穴みたいだった。形になりそうで、かたちにならない入り口(仮)で、危うさをたたえながら、わたし、を監視している。湿度は目に見えない侵入者だ。朝露のなみだ、がミルクのように注がれた。つめたい温度を揉みほぐして、やわらかく、あたたかく、グラスにぶつかった液体の輪郭を変化させてゆく。両脇に湖の受け皿が産まれそうだ。ストローを介しての天気予報と解説、かつ警告音、

聴き取ろうとして
聞き流そうとして

まぼろしの蝶々が脱皮しようとしている仕草を宙に写し取りたい。トレーシングペーパーのまばたき。くしゃくしゃっと、微笑んでよ。弱々しい最期の笑顔のような、天使の嘆きのような、不思議な生物のモンタージュが床に散らばっている。こどもたちの未完成な翼を摘みとらないでちょうだい。なんどトライしても、空白のジグソーパズルは脱走中。WANTED!逆光を爪で剥がしてゆく。明日への助走、いっせーのーで、
『あかさたなはまやら和音!』

不協和音になるか、
うつくしいハーモニーになるか、
それはわたしたち次第だ、da、da、
だから、まず母国語で発音してみて、

〈aiueo……〉

無声音のせせらぎ、有声音のさえずり、
破裂音の荷物をまとめろ、
ぱぴぷぺ、頬に当たって、しゅっぽっぽっ、
ポスティング・ラヴ、ぽぽぽぽ、

たんぽぽの根を地下に張りめぐらせて、
力強いいのちの源泉を蓄えなさい、
たとえ地上の水甕が枯れ果てても、
足元の水脈まで死んでしまわないように、
絶滅保険をかけませう、

すべての予兆に耳の軟骨を傾けて、
すべての音楽は大切な日々の風景画、
あなたの穴は逆流してから、
マグリットの空をつかもうとして、
どこまでもたかく伸びてゆく、

わたし、はどんどん根を鍛えるために、
受け継いできた動脈と静脈で、
いそいそ縄跳びしちゃおう、
高鳴る鼓動を頬張っちゃおう、

わくわく、不惑のflash
どきどき、動悸のflush

入り口(仮)はどこまでも深く
出口のないゴルコンダを描いて

マグリットの絵画が降るでせう

『ねえ、みえないものを見せておくれ』
『ねえ、かたちのないものを形にして』

幼かったわたし、とあなた、が薬指と薬指で、約束をしたとおいあの日。

みえない指環の呪縛がゆらゆら揺れている、
穴埋め、あな、うん、巣へ
    (a n n o u n c e)

(マグリット)ルネ・フランソワ・ギスラン・マグリット (René François Ghislain Magritte, 1898年11月21日 -1967年8月15日) は、ベルギー・レシーヌ出身のシュルレアリスムの画家。

(ゴルコンダ)
マグリットの作品のひとつ。《ゴルコンダ》は1953年にルネ・マグリットによって制作された油彩作品。アメリカ・テキサス州ヒューストンにあるメンリル財団が所蔵している。

「ゴルコンダ」とは1687年にムガル帝国によって滅ぼされたインドの都市の名前で、かつて富で知られた幻の都のような都市であったという。「ゴルコンダ」というタイトルは、友人の詩人ルイ・スクテネアがつけたといわれている。

photo:1 見出し画像(みんなのフォトギャラリーより、Yasu Koma さん)
photo:2  未来の味蕾
design: 未来の味蕾
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