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オランダ人は周りの人に愛されていることを目の当たりにして色々ショックだった件

最近結婚した義理の弟夫婦。嫁は妊娠中で来月子供が生まれる予定だ。

数ヶ月前からベイビーシャワーをしようという話になった。

彼女の母、叔母や友達、義理の母(私の彼氏の母)、義理の姉や私が参加することに。

長い間誰が参加するか、どういうパーティにするかなどを話し合い、ようやく今日ベイビーシャワーを実現することができた。

元々全員がサプライズで彼女の家に訪ねてパーティをする予定だったが、オランダで陽性者の数が増えてきて、ソフトロックダウンになったこともあり当日は母と義理の母のみが訪ね、他の人はオンラインで参加したのであった。


ベイビーシャワーとは何か

食事やアフタヌーンティを囲みながら、バースデーパーティのようにみんなでワイワイ楽しい時間を過ごします。アメリカではゲームをしたりして日本の結婚式の二次会のように幹事さんが余興を考えたりして楽しまれています。ドレスコードやテーマカラーを決めるのも楽しいですね。また妊婦さんへのプレゼントを用意するのも一般的!
難しく考えず、妊婦さんの安産を願って、みんなで楽しい時間を過ごしましょう。

(ベイビーシャワー協会ホームページより)


ということで、私たちはWhatsappグループ(LINEグループと同じもの)で話し合いを重ねた。

主導になったのは彼女の母と義理の母の二人。二人ともベイビーシャワーをしたことがなかったけどがんばっていた。

ゲームの一部として赤ちゃんの肌着にイラストやメッセージを描いて主催者宅に郵送する、もしくは訪問して届ける、というのがあった。

これについては何を書けばいいのか全く分からず、なぜそれを書くのかもよくわからず、義理の姉に聞いてみたけど、「別に全員が強制で描くものじゃないしあなたは家が遠いから作らなくても大丈夫よ」と言われていた。

しかし当日はたくさんの肌着がずらり。

ミッフィの故郷オランダということもあり、ミッフィの絵を描いている人が多かった。メッセージを添えてる人もいればイラストだけの人も。

あとはかわいい動物や彼女が好きなベイビーヨーダのイラストなどもあった。


続いて自分の赤ちゃんの時の写真をデジタルで送ってと言われた。

私はそんな写真を持ってなかったので送らなかったのだが、みんなすぐに送っていたのでどうしてだろう?と思っていた。

オランダで出会った友達も大体みんな自分がこどものころの写真をスマホに入れていて何でだ?とおもっていた。


これはどの赤ちゃんが誰なのかを当てるクイズゲームだと言われたので、唯一のアジア人である私が写真を出せたところですぐ当てられてしまい意味がなかったのだ。


そのほかに、夫婦で30秒以内にどれだけたくさんの質問に答えられるかゲームをしたり。

素敵なお菓子や食事はケータリングで頼んで後で楽しんでもらった。



何がショックだったのか

結構グダグダした準備や進行を見て、こんなんで大丈夫なんか?と冷めた目で見ていたのはわたしだけだった。

彼女はとても感動して泣いていた。

えっ、泣くほどこのパーティが嬉しいの!?と最初は思ったのだが彼女が泣くほど嬉しかったのはパーティの内容や精度ではなかったのだ。

彼女の家族や友達がいかに彼女を愛しているのかを言葉や行動で表したことが彼女を感動させたのだ。


パーティがどれだけ完璧にオーガナイズされていたか、プレゼントがどれだけ見栄えがよかったか、肌着に描いたイラストのクオリティが高かったか、ゲームがどれだけ楽しく遊べるものだったか、そんなことはどうでもよかったんだ。

そんなことより、みんなが彼女を思い、不器用ながらも愛の詰まったパーティを開き、プレゼントは決して高くなくても実用的なものをあげたり、イラストの上手い下手とかではなく彼女のことを思っているよ、というメッセージやイラストを描き、みんなの赤ちゃんのころを愛でる、そういう愛が溢れる会だったのだ。

彼女の母が彼女とその赤ちゃんを大切にするだけではなく、義理の母も義理だから、という一線を引かず娘である彼女を大切にする、そんな義理の母の彼女への愛を育てるためでもあったのだ。



私は何もわかってなかった。

こんなにグダグダでほんとにいいのか?とか、正直ゲームがくだらなさすぎて大丈夫なのか?とか思っていた。

彼女はとても冷静な人だし辛口だしこのベイビーシャワーを喜ぶのか懐疑的であった。

肌着へのイラストも、強制じゃないなら描かなくていいやとやらず、自分の赤ちゃんのときの写真も私一人だけアジア人だし出したところでクイズにならんわ、と出さなかった。

でもそうじゃない。私は彼女への愛を怠ったのだ。


実は義理の姉が気を利かせてくれて、「肌着を2枚描いたから一枚をあなた用にしとくね」、と用意してくれていた。

だから当日は私が描いたとされた肌着を彼女が受け取り、「かわいい、本当にありがとう!」と喜んでくれたのを見て自分で描けばよかったと思った。

強制じゃないからやらなくていい、ではない。愛があれば強制でなくても描いたのだ。

写真も、私の赤ちゃんの頃の写真があったらクイズにならん、ではなく私の写真があればそれはそれでかわいいということになったのだ。クイズの精度なんてどうでもよかった。


私はとても遠慮というか一歩引いて参加してしまったので後悔した。



価値観の違い

日本でもベイビーシャワーが流行っているかというとそれはわからないが、色んなサイトを見ていると、日本ではいかに素敵なパーティにするかなど何をするかということに焦点が当てられているように思う。

それは日本人の習性でもあり、パーティをするときは完璧にプランニングするし実行するからだ。

日本人だったらきっともっとゴージャスなプレゼントや飾り付けがあったり、ゲームも精度が高いと思う。


対してオランダ人は愛にフォーカスする。

彼女の家族や友達がどれだけ彼女を愛しているか、大切に思っているか、赤ちゃんが産まれてくるのを心から願っているか、それが強かった。

私はその愛を目の当たりにしてショックを受けた。

その愛の深さに感動し、だからオランダ人は自己肯定感が高くて幸せな暮らしができるんだと思ったのだ。

みんながみんな自分が赤ちゃんのときの写真を常に持っているのも、小さい時からかわいいかわいいと育てられ、子供の時の写真を見せ合って育ってきて自分は常に愛されていると信じているからなのだ。



なんだかうまくまとまらないのだが、自分だけベイビーシャワーに対する考え方が違ったのもショックだった。

それは自分がオランダに5年住み、日本人だけどヨーロッパの文化に馴染んでいると思っていたからだ。

言語も話せて5年間現地で暮らせば馴染んでいるように感じる。

少なくとも日本にいる日本人よりはヨーロッパの感覚になっている。オランダに住み始めてすぐの日本人よりも5年住んでいる自分のほうがオランダ人のことをわかっている、と驕っていた。


だがそれは表面的なものだったんだとこのベイビーシャワーを通じてわかってしまい、自分で自分に失望したのだ。

オランダに5年住んでいてもオランダ人の価値観や感覚、ノリまではおなじにはならない。

育ってきた環境が違うから。

愛をダイレクトに伝えることも私たち日本人はしない。

私はオランダ人のパートナーがいて、オランダ人の家族に入って、何かわかったような気がしていたけど全然違う視点、全然違う感覚、全然違うノリを持っているのだ。


だからベイビーシャワーでオランダ人の統一された感覚、自分は周りの人に愛されているという根底にある感覚、愛している人に愛を伝えるというパーティの本当の意味を私一人だけ理解できていなかったことにショックを受けたのだ。


ショックから立ち直るために

ショックを受けて泣きながらパートナーに話をした。

私は確かに積極的にベイビーシャワーに携わらなかった。

でももう過去には戻れないし一番大切なのは彼女が喜んだかどうかである。

彼女は喜んだからそれでよし。

私はもし次にベイビーシャワーに参加することがあったら積極的に携わろうと思う。

そしてこのネガティブな思いをここに書き留めることで頭と心を整理する。

わたしは今回うまくやれなかったけど、でも普段はオランダ人に囲まれて楽しく生きてるし、だいたい5年間も現地で仕事してるだけで偉いし、オランダ語がペラペラほどではないけど勉強して一部理解してるだけで偉いと自分のいいところにフォーカスする。

私もまた、パートナーに愛され、パートナーの家族に愛され、自分の家族と友達に愛されていると自信を持つ。

そして部屋を片付けて、キッチンを綺麗にして、肌の手入れを丁寧にして眠る。

明日は別の日だから。もうショックは引きずらない。

またひとつオランダについての学びが増えた。よかったな。

おやすみ私、おつかれさま。






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