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#39 “手指の使いすぎ”は肩こりの原因?!

パーソナルトレーニングジムSISEIの宮谷です。

パソコンやスマホ操作、カバンの取手を持つ、調理や掃除の家事など、手指は毎日働き続けています。
そんな働き者の手指ですが、もちろん筋肉で動かしていますので、使いすぎると疲労が溜まってきます。

手指を動かす筋肉の疲労が溜まると、不良姿勢の原因になったり、肩こりの原因になることがあるのです。

今回は、「“手指の使いすぎ”がどうして肩こりの原因になるのか?」についてお話しします。


日常生活における手指の疲れ

現代人が毎日触れないことはない、スマホやパソコンなどの情報端末デバイス。
もう“生活の一部”と言っても過言ではないくらいですね。

指は構造上、「指を曲げる(手のひらを握る)」方向に動きやすい作りをしていますが、その一方向の動きばかり繰り返すと、知らないうちに疲れが蓄積します。

◾️ここで簡単なテストをしてみましょう。

手のひらが天井を向くように机や膝の上に手を置き、その状態で手指の力を抜いてください。

いかがでしたか?
指が丸まってしまう人が、かなり多いのではないでしょうか?

指が曲がり過ぎて(丸まって)しまう人は、手指の疲労がたまり過ぎている証拠です。

スマホを操作するとき、キーボードを叩くとき、ペンで文字を書くとき、バッグを手で持つとき、物を取るとき、フライパンや包丁を握るときなど、日常的に「指を曲げる」動作は無意識に多用されています。
カバンや荷物を持つときに、「重い」「力を入れてる」という感覚は腕や肩にあっても、指に感じることはなかなかありません。

こうして、指は知らず知らずのあいだに働きすぎて、疲労をため込んでしまうのです。
この指の疲労が、肩こりや首こりの原因になります。

しかし、指と肩は離れているのに、なぜ肩こりの原因になるのでしょう?


手指の疲れと肩こりの関係

「“手指の使いすぎ”が肩こりの原因」とタイトルにもあるとおり、手指と肩には繋がりがあります。

繋がりを解説する前に、まずは「指を曲げる」筋肉を見ていきましょう。

出典 : Visible Body

〈指(母指を除く)の屈曲筋〉
⚫︎浅指屈筋 ⚫︎深指屈筋 ⚫︎虫様筋
〈母指の屈曲(対立)〉
⚫︎長母指屈筋 ⚫︎短母指屈筋 ⚫︎母指対立筋
〈母指の内転〉
⚫︎母指内転筋 ⚫︎短母指屈筋 ⚫︎母指対立筋

「指を曲げる(手のひらを握る)」働きのある筋肉が、前腕の内側まで伸びてることが分かると思います。
この筋肉が収縮することにより、手のひらを握ってグーを作ることができるのです。

これらの筋肉は指の動きだけに関わる筋肉ですが、筋肉を包む「筋膜」によって他の筋肉とつながっています。

筋膜とは、皮下組織から存在するコラーゲン繊維で作られた白く薄い膜であり、筋肉を包むだけではなく、骨、関節、筋肉、腱、靭帯、神経、内臓器官、血管、内臓など身体のあらゆる構成要素を包みこみ、それぞれの場所に適正に位置するよう支えています。
他にも筋膜には、筋肉を保護する作用、筋収縮時の滑りを助ける作用、血管や神経、リンパ管を支えて通過させる機能があります。
筋膜は可塑性に富んでおり、怪我や緊張など様々な内的・外的ストレスによって短縮や過緊張し、他の筋膜と癒着して変形します。

また筋膜は全身のさまざまなラインで連結しており、スムーズな運動連鎖を行えたり、柔軟性を保つことで衝撃を分散させる役割を持っています。

※可塑性=物体に力が加わり形が変形した状態で 加えられていた力がなくなったとき、変形したまま元に戻らない性質

注釈に記載したように、筋膜は筋肉の緊張や関節の拘縮によってストレスが加えられると歪んで変形し、他の筋膜と癒着して影響を与え、元には戻らない性質を持っています。

故に、手指の筋肉の緊張はこの筋膜の癒着や連結により、筋膜をとおして他の筋肉に悪い影響を与えます。



それでは、手指の筋肉がどの筋肉に影響を与えるかを、アナトミー・トレイン(筋筋膜経線)理論を参考に見ていきましょう。

出典 : Thomas W.Myers「アナトミー・トレイン」

上の図は、手指の筋肉から派生する2つのアナトミートレインが描かれています。
向かって右側がカラダの深層を走行する「ディープフロントアームライン(DFAL)」、左側が浅層を走行する「スーパーフィシャルフロントアームライン(SFAL)」です。

深層のDFALは、親指(母指)から前腕の親指側の骨(橈骨)を介して、腕を曲げて力こぶができる筋肉(上腕二頭筋)をとおって、最終的には胸の大きな筋肉である大胸筋のインナーマッスル(小胸筋)まで、筋膜が連結しています。
親指の使いすぎによる母指の緊張が、筋膜の連結を辿って、上腕二頭筋や小胸筋にまで緊張を与えるということです。

上腕二頭筋と小胸筋は、カラダの前面にある肩甲骨の一部である烏口突起(うこうとっき)に付着しており、「巻肩の原因筋」として有名です。
この2つの筋肉が緊張で収縮すると、肩甲骨を前方に巻き込むように前傾させることにより、「巻肩」や「猫背」の不良姿勢の原因になります。

引用 : Visible Body


浅層のSFALは、指を曲げる筋肉(手指屈筋群)から手首を曲げる筋肉(手根屈筋群)を介して、“二の腕”と呼ばれる上腕三頭筋と上腕二頭筋の内側間をとおって、胸の大胸筋と背中の広背筋まで、広い範囲で連結しています。
指を曲げる動作の使いすぎは、手首を曲げる筋肉を緊張させてしまい、大胸筋や広背筋にまで影響を及ぼすのです。

大胸筋はインナーマッスルの小胸筋とともに「巻肩」姿勢を助長し、他のインナーマッスルである前鋸筋にも影響を与え、呼吸(主に呼気時)に関係する胸郭運動を阻害してしまう可能性が考えられます。
胸郭運動の可動域が狭くなると呼吸が浅くなってしまうので、代償的に肩を上下させて呼吸を行い、肩こりになりやすくなります。
また、胸郭の柔軟性がなくなることは、背中側の胸椎の柔軟性も失われてしまうので、他の頸椎や腰椎に負担をかけてしまい、首の痛みや腰痛の恐れも高めてしまいます。

広背筋は、同じ背中にある脊柱の横を走行をしている脊柱起立筋と混同されがちですが、脊柱起立筋は体幹を動かすのに対し、広背筋は主に腕を動かす肩関節に関与しています。
広背筋は上腕骨の内側に付いていることから、腕を内側にねじる「肩関節の内旋」の働きをします。
この「肩関節の内旋」の働きは大胸筋にもあるため、どちらの筋肉が緊張して固まってしまっても、「巻肩」になりやすくなります。

引用 : Visible Body

実際にやっていただければ分かりますが、肩関節を内旋させたまま(巻肩の姿勢で)腕を横から上げようとすると、肩の高さくらいから肩の詰まりを感じて上がりません。
それでも頑張って腕を上げようとすると、肩をすくめるようにしないと上がらないのです。
このような腕の上げ方をしていると肩こりになるだけではなく、肩関節を支えるインナーマッスルが損傷してしまい、「四十肩・五十肩」と呼ばれる深刻な肩の問題を抱えることになりかねません。



他にも巻肩や猫背姿勢は、頭を前に突き出す「ストレートネック(スマホ首)」を生じさせ、重い頭を支えるために首や付け根の筋肉が過緊張するため、首こりや肩こりの更なる火種になってしまいます。

このように手指の筋肉の緊張は筋膜の連結を辿り、姿勢を歪ませ、肩こりや首こり、腰痛などの原因になるのです。


手指の疲れの改善方法

一番の改善方法は、“手指を酷使しないこと”です。
とは言っても、「指を曲げる」「手で握る」「物を掴む」動作を使わないで生活するなんて無理な話ですね。

ですから、酷使しすぎて疲れている手指の緊張を、緩めて癒してあげることが大切です。

簡単な改善方法を4つご紹介します。

① 手指のマッサージ

※ 画像が小さいため、タップしてご覧ください。

② 腕のマッサージ

※ 画像が小さいため、タップしてご覧ください。

③ 手指の可動域を広げるストレッチ

※ 画像が小さいため、タップしてご覧ください。

④ 手首の可動域を広げるストレッチ

※ 画像が小さいため、タップしてご覧ください。

いかがですか?
やってみると、手指の疲れがどんなに溜まっているかが実感できると思います。

特に③のストレッチは、こんなに痛むのかと思うくらい痛いですよね。
でもストレッチ後には、手指が軽くなったと感じてもらえたと思います。


毎日のケアをしましょう!

疲れを蓄積させると筋肉が緊張して固まり、筋膜の柔軟性が失われることで、連結している他の筋膜を歪ませ、姿勢を歪ませます。
姿勢の歪みを放置しておくと、痛みを伴う症状を引き起こしてしまいます。

カラダのどんな部位の疲れも同様ですが、毎日酷使してる手指の疲れを、マッサージやストレッチで癒してあげましょう。

面倒くさがる人が多い入浴ですが…

湯船にしっかり浸かることも、筋肉や筋膜の緊張を緩めるのに効果的です。
寒い冬は筋肉や筋膜の柔軟性が低下しやすいので、お風呂でカラダを温めてから、マッサージやストレッチを行うとよいでしょう。

また、パソコンを使ったデスクワークやスマホ操作など、日常生活における動作では、カラダの前面の筋肉を優位に使うことが多く、背面の筋肉が弱化してうまく使えなくなることも、姿勢を歪ませる大きな原因になります。
週に1〜3回は運動やトレーニングで、カラダを大きく動かす習慣を身につけましょう。



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