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銀色の缶に魅せられて


みゆです。

お昼前のテレビのニュースで「10月からスーパードライが値下げになる」というニュースを見ました。

10月から減税分を値下げするんだそうです。ただし、発泡酒や第3のビールは値上げの方向にいくらしいです。という事は、最近我が家で愛飲しているスタイルフリーは値上げになる模様です。

そんなニュースを見ていたら、もう2年近くタイトルだけが下書きに入っていたのを思い出しました。それで、やっと文章が降りてきましたので、タイトルを少し変更して記事を書く事にします。

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私は、ビールが大好きだ。
家でも外でも、まずはビール(若しくは発泡酒・第3のビール)を飲む。ビールだったら、アサヒスーパードライを飲む事が多い。

スーパードライはその昔、巷でバブルだと言われていた1987年に誕生したビールだ。なんでも、その頃はキリンビールが最強でアサヒビールはなかなかヒット作に恵まれなかったという。
そんな中、起死回生のビールがこのスーパードライだったそうだ。
スーパードライは瞬く間にヒットし、あれよあれよという間にビール界のスターにのし上がったという。

そうなると、類似商品が出回るのが世の常だ。各ビール会社からそれぞれドライと名を付けたビールが出回った。しかも、どのビールも銀色の缶にDRYと入っており、紛らわしい事この上なかった。CMも話題の人物が登場し、様々な物が連日放送されていた。

1988年に起こったこの現象はドライ戦争と言われ、少しでもシェアを奪おうと各社しのぎを削っていた。



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その頃の私は18歳のやわなお嬢さんだった。
新卒で働き始めたものの、社会の荒波に揉まれ始めた私は毎日が辛かった。それまで生きてきた中では、体育(走る事は除く)と理科以外はそこそこ何でもそつなくこなしていて、大きな挫折もした事が無かった。

ところが、社会に出ると、とたんに私は「使えない子」になっていた。社会人としての敬語もろくにできず、電話応対もイマイチで仕事も飲み込みが悪い。それに、先輩達ともうまく馴染めない。
こうして文章にするだけで、当時の辛い気持ちが思い出されてくる。

そんな頃、TVを見るたびにドライビールのCMを見たのだ。その頃も好奇心旺盛だった私は、ドライビールってどんな物なんだろうととても興味を持った。それに加えて、自分の不甲斐なさに落ち込むばかりだった私はビールを煽って憂さ晴らしをしたかったのだ。

ビールを煽ろうと決意した私は、酔ってしまってもいいように土曜日の晩に決行する事にした。ここで「あんた未成年でしょ」ってお叱りを受ける所だけど、もう30年以上昔の話で時効という事にして頂けたらと思う。それに、当時はいろいろ緩かったのだ。

その週の土曜日、仕事を終えた私はTSUTAYAでレンタルビデオを借り、立ち読みをして暗くなってから帰宅した。家の近くには酒屋さんがある。暗くなる頃には酒屋さんは閉まっていたけど、店の前には自動販売機があった。暗い道に明るく光る自動販売機と公衆電話と街灯の明かり。店の前に車を横付けすると、私はお財布を手に自動販売機の前に立った。

自動販売機にはアサヒやキリンなどのドライビールが並んでいる。私はお財布から小銭を取り出して、3本のビールを買った。銘柄はアサヒ・キリン、あと1本はたしかサッポロだったような気がする。3本のビールを手にした私は、親のお使いじゃなく自分の為のビールを買った事で大人になったような気がした。

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ビールを手に家に帰った私は、こっそりと冷蔵庫の奥へビールをしまった。

食事を済ませ、TVを見てお風呂に入った。お風呂から上がったら、ビールを飲むんだ!とワクワクしながら湯船に浸かり鼻歌を歌った。髪の毛をタオルで拭きながら、冷蔵庫から取り出すビール。冷たく冷えた銀色の缶はとてもとても魅力的に見えた。缶に映る私の姿はきっと期待に膨らんでいた事だろう。

最初の1本はやっぱりスーパードライにしよう。自室に戻り缶を手にすると、そっとプルタブを開けた。今ならグビグビと飲むんだけど、当時は初めてのビールだったので、そっと口にした。ごくんと飲み込むと、苦かった……。正直、あまり美味しいとは思えなかった。大人はみんなこんなのを美味しいと思って飲んでいるのだろうか。

その頃の私は、チューハイを少し飲むだけだったので甘いお酒しか飲んだ事がなかった。それなのに、少しアルコール度数が高めのビールを飲むのはきつかった。けれど、せっかく買ったビールだ。もったいないので、とりあえず1本飲み切った。ビールの味にも少し慣れた私は、2本目はまた味が違うのかもと思い、また飲んでみる事にした。

2本目はキリンを飲む事にした。味の違いは、その時はよく分からなかった。初めて飲んで、味の違いがバッチリ分かる様では、それはそれでちょっとどうかと思う。そうなる様では、生粋の酒飲みみたいだからだ。
味にも慣れてきて、さっきより飲みやすくなってきたけど、半分ほど飲むともういらなくなってきた。だけど、ここで飲み残すのはもったいないと思い2本目も頑張って飲み切った。

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2本のビールを飲み終わった私は、結構酔っていたと思う。今の私なら、ビールを2本飲んだくらいではどうって事はないが、当時はやわなお嬢さんだったので必死に2本のビールを飲んだのだった。自分で買ったからもったいないという、それだけの理由で。

私vsドライビールの戦いには、多分負けてしまったんだと思う。これが居酒屋で飲むチューハイなら、もっとグイグイ飲めていただろう。ビールの苦さに負けてしまった。流行りに乗ってはみたけど、CMの様にうまくはいかなかった。

でも、ほわんとした状態になったので、多少は仕事の憂さ晴らしにはなったのかもしれない。いい気持ちになったまま、ぐっすり眠った。そして、残った3本目のビールは翌日に飲んだ。

それからの私は、少しずつお酒も強くなっていく。特別飲み歩いたりした訳ではないし晩酌を毎晩した訳でもないけれど、素質があったのだろう。その年の忘年会の時には、ビールも熱燗も美味しく飲んで「みゆさんはざるだ」という称号を頂いてしまった。

今の私は、noteでも土曜日の晩には夜みゆとして飲みながら記事を書いている。こういう楽しい事ができているのも、あの日にドライビールに果敢に挑んだからだと思っている。あの日、私はドライビールとの戦いには負けてしまったけれど、確実に大人への階段を一歩登ったんだと思っている。


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ずっと下書きに入っていた物をやっと書く事ができました。

一体自分は何を書いているんだと思わない事もありません。私の酒飲みキャラはあの頃からなので仕方がありません。

だけどね、だけど、私はそこまでお酒に強い訳ではありませんから。焼酎もあまり飲めないし、赤ワインも飲み過ぎると頭が痛くなるし、日本酒を飲み過ぎると酔っ払って吐いちゃうし。ただ、軽いお酒をだらだらと飲み続けるのが楽しいだけなんです。

初めて自動販売機でドライビールを買った時の事を考えていたら、短歌ができました。最後にお披露目して締めようと思います。


銀色の缶に魅せられ月明かり
小銭で買える大人の一歩



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