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映画『愛なのに』を観た話。


「映画に必要なのは劇的展開」。
これは、瑞野も学んだシナリオ制作の鉄則である。

でも正直なところ、映画にあるような劇的展開って日常生活の中で起きることはまず考えられないようなことばかりである。だからこそ、非日常感が生まれて映画の存在意義が出るという考え方もできる。だが、あえて日常で起こりそうなギリギリのラインの展開で魅せていくことで、見る側の共感を集めることもできるのではないか。私はそう思っている。


映画『愛なのに』。2022年2月25日に公開され、テアトル系等ミニシネマで公開中の日本映画。『愛がなんだ』『アイネクライネナハトムジーク』などで話題を博した今泉力哉監督と、Vシネマ・ピンク映画界のトップランナーである城定秀夫監督のコラボレーションプロジェクト「L/R15」によって生まれた映画。

映画『コンフィデンスマンJP 英雄編』での振り切った演技ですっかり瑞野の推しになってしまった瀬戸康史が、主人公・多田を演じている。正直、瀬戸君が目当てで見に行ったところはあった(小声)

こぢんまりとした古本屋を営む多田。ある日、会計していない本を持ったまま店を飛び出した女子高生の岬(演:河合優実)を問い詰めると、岬は「多田さんが好きです、結婚してください」と急に切り出す。多田は、岬が女子高生であることを理由に返事をはぐらかしていると、岬は毎日店に通い、毎日想いを手紙にしたためるようになった。それを拒絶できない多田。実は彼には、終わったはずの恋への未練があって――


先日レビューした『猫は逃げた』とは違い、この作品のストーリー展開は終始ザラザラとした感じである。やはり「大人と女子校生」の恋愛だもんで、当然のことながら周囲からは逆風が吹き荒れる。おまけに、多田の元恋人(演:さとうほなみ)は結婚目前。しかもその結婚相手はお付きのウエディングプランナーとセックスフレンドという、ちょっとした修羅場ドミノである。どっかが倒れれば、連鎖してすべて崩れてしまうような危うい奴らだ。

結婚前のマリッジブルーや、終わったはずの恋への未練、普通なら選ばない相手との恋。どれもこれも、共感ができすぎてしんどい。この「誰にでも起こりそうな心のザラつき」を表現するのがすごく上手いのだ。この作品の大きな魅力はその点だろう。

多田も、自分の心を厚く覆う「ザラつき」に支配されて折れかけそうになるが、ちょっとずつ岬と向き合い「自分はどうしたいのか」を探り始めるのだった。結局、何か行動を起こせる者こそが目の前の現実をどうにかできる勇者なんだと思わされた。

『愛なのに』というタイトルの意味。

なぜこのタイトルなのかな~と私も上映までぼんやり考えていた。その意味がハッキリと分かる終盤の展開。エンドロールのギリギリまでしっかりと詰まった中身を、みなさんにもぜひ残さず味わってもらいたいと思う。



おしまい。



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