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mikujiの「お話の世界」

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小説、ショートショート、詩から替え歌まで、mkujiraの創作の世界です。 一度足を踏み入れたら、迷い込んでしまう…?
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子くじらムーのおかあさん

子くじらムーのおかあさん

わんぱくな、くじらのムーは、ある日
見たことがない空を飛ぶ魚を見て、追いかけているうちに、群れからはぐれ、迷子になってしまいました。

おかあさーん
おかあさーん

ムーは探し続けました。

すると、はるか先に、お母さんの黒い大きな背中を見つけました。

おかあさんだ!
おかあさんだ!

ムーは懸命に泳ぎました。

近くまでくると、なんだかお母さんの様子が変です。
潜ることも泳ぐこともせずに、じっ

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タコとタコ

タコとタコ

勝男はタコ上げが大好きだった。
この日も、お正月にお父さんに作ってもらったタコを、嬉しそうに上げていた。
ところが、途中でタコの糸がプツリと切れて、勝男のタコは、遠くに飛んでいってしまった。
勝男はタコが飛んでいってしまった方向を寂しそうに見つめた。

一方、タコは嬉しそうに空を飛んでいた。
タコは1度でいいから、自由に空を飛んでみたかったのだ。
そして前の晩ネズミに頼んで、糸の途中を少しだけかじ

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夢を食べるクジラ【企画参加その後】

夢を食べるクジラ【企画参加その後】

あるところに夢を食べるクジラがいた。
そのクジラは、空を漂い、人々の夢を吸い上げて食べてしまった。

そのクジラが上空を通り過ぎると、人々は途端にやる気をなくして、自暴自棄の言葉を吐いたり、不機嫌になったりした。

ところが、ヒカルだけは違っていた。
クジラに夢を食べられても食べられても、次々と新しい夢を持ち続けた。

ケーキ屋さんになりたい
おもちゃ屋さんになりたい
野球選手になりたい
お笑い芸

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暁のトンボ (後編)

暁のトンボ (後編)

前編はこちらです。

トキ子が宇品で幹治を見送ったのち、二人の息子達は電車に乗り、疎開先の静岡の父の実家を訪ねた。
連絡はしてあったが、二人はけして温かい待遇は受けられなかった。
末の子が八か月過ぎるのを待って、トキ子たちも、学徒動員に行っている長女以外、静岡に疎開し、六人で小さな小屋を借りて生活を始めた。
幹治が言ったとおり、その後国内あちこちで空襲を受けるようになった。
トキ子達が疎開した場所

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星屑ドライブ【毎週ショートショートnote】

星屑ドライブ【毎週ショートショートnote】

街灯もない真っ暗な一本道。
する違う車もほとんどない。
その一本道を走る車の後部座席で、私は上を向いて寝転んで、窓から見える星空を眺めていた。
それはまるで、星空を切り取ったキャンパスのよう。
キャンバスは、無数の星で埋め尽くされ、白い帯のような天の川もはっきりと見えた。

毎年盆と正月に必ず行っていたおばあちゃんの家。
そこで大勢のいとこたちと会うのも楽しみだったけど、その帰り道の夜のドライブが

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ファーストクラスの人生をあなたに

ファーストクラスの人生をあなたに

今を最高に生きるために
ダウンロードファーストクラスはいかがですか?
ショッキングピンクの宇宙服のような服を着た美女が、僕に声をかけた。

こちらのマシンで、ダウンロードファーストクラスをダウンロードしていただきますと、あなたが今後一生のうちに稼ぐお金を事前にお渡しして、ファーストクラスの人生を送ることができます。
そのお金で資産運用したり事業で儲けて、資産を増やして生きていけばいいのです。

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思い出のドライブ【毎週ショートショート だんだん高くなるドライブ】

思い出のドライブ【毎週ショートショート だんだん高くなるドライブ】

僕はその車に乗り込むとハンドルを握った。
怖がりのお姉ちゃんは、僕の後ろに座った。
係員のベルトの確認が終わるとブザーがなり、
二人乗りのその車は動き出した。

車は回りながらだんだん高くなって行った。
パパとママが2人並んで、下から手を振っている。
風が気持ちがいい。
僕は思わず両手を上に上げて、
ひゃっほー
と叫んだ。

まるで空をドライブしているみたいで、僕はこの遊具が大好きだった。
パパに

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ボクのオナラは旅をする

ボクのオナラは旅をする

ある日ボクは、教室でオナラがしたくなった。
必死で我慢していたけど、授業の終わりの挨拶で立ち上がった瞬間
ブッ
と出てしまった。

オナラの音は、みんなが立ち上がる椅子の音でかき消された。
その時、
「行ってきまーす!」
小さな声がした。
一瞬臭い匂いがした気がしたけど、すぐにしなくなった。

先生が、慌てたように教室を出て行った。その時
「ただいまー」
と声がして、微かにオナラの匂いがした。

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お一人様クリスマス

お一人様クリスマス

今年のクリスマスイブは、仕事が休み。
美和の仕事は、シフト制なので、土日もお盆も正月も関係ない。
就職して5年、初めてクリスマスイブが休みになった。

でも、全く嬉しくない。
むしろ仕事の方がよかった。

毎年人にクリスマスの予定を聞かれると、
その日は仕事だから・・・
帰り遅いし、翌日も早いから、家に帰って寝るだけよ、
なんて、いかにも残念そうに言ってたけど、
こうして休みになっても何の予定もな

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星からのプレゼント

星からのプレゼント

冬の夜は、星がより綺麗に見える。

りっちゃんは半纏を羽織って、外に出ました。
空はたくさんの星で埋め尽くされていました。

うわあ!綺麗。
しばらく星を眺めていたりっちゃんの目から、涙がスーッと流れました。

その時、りっちゃんの目の前に、小さな光がスーッと落ちてきました。
思わず両手を前にして受け止めると、そこには、キラキラ光る星のかけらがありました。

驚いているりっちゃんに星のかけらが語り

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白いくじら

白いくじら

ある朝男が空を見ると、
真っ白い馬が青空を駆けていた。

男は長い長いロープを持ってきて、馬を捕まえた。

男はその馬に乗って、空を駆け回ったが、しばらくしてまた馬に乗ろうとした時は、馬の姿はどこにもなく、ロープだけが残されていた。

また別の朝、男が空を見上げると
真っ白い大きな鷲が青空を飛んでいた。

男は大きな大きな網を持ってきて、鷲を捕まえた。

男は鷲の首にロープをつけて、鷲に乗って空を

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鳩になりたかったカラス

鳩になりたかったカラス

一羽のカラスが、道に落ちていた光るものを見つけて、これはなんだろう?
と、つついたり転がしたりしていた。
すると、どこからか
カラスだ!
カラスだ!
と子供たちが石を投げてきました。

カラスは驚いて飛び上がりました。
すると、子供たちは
仕返しされるぞーと叫んで、ちりぢりになって逃げました。

カラスは、どうして私は、こんなに人間に嫌われるんだろう。
小さな動物を捕らえたり、落ちているものを食べ

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子供第一党

子供第一党

我が党は、子供の権利と自由を目指し、子供が何者にも縛られない社会を目指します!

そう声を上げたのは、12歳の少年であった。
彼は、9歳の頃から、ネットで仲間を集め、政治活動を始めた。党員はほとんど18歳以下の少年であったが、大人たちの中に彼らを支持するものも多くいた。

彼は裕福な家庭で不自由なく暮らしていたが、両親が昼間仕事で家にいない間、毎日のように塾や習い事に明け暮れ、夜は教育や生活面で厳

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【企画参加】 再会

【企画参加】 再会

「先にお飲み物お伺いしましょうか?」

いかにもバイトらしい若い女の子が、僕に向かって、言った。

僕は、彼女に、
君は、レモンサワーだよね。
というと、彼女は嬉しそうに頷いた。

レモンサワーひとつと、生ひとつ。

バイトの女の子は、怪訝そうに僕をみてから、戻っていった。

久しぶりだね。

去年の秋、彼女とは、些細なことで喧嘩して以来、1年以上連絡がとれなくなっていたのだけれど、さっきこの店の

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