M.K.

東北地方のとある街に移住し、読書だけを生き甲斐として、静かで穏やかで古代ギリシア人みた…

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東北地方のとある街に移住し、読書だけを生き甲斐として、静かで穏やかで古代ギリシア人みたいな毎日を生きる(のが希望の)M.K.です。海外文学・SF・文化人類学・山岳小説といったジャンルを好んでいます。好きな作家はテッド・チャン、宝樹、カズオ・イシグロなど。

最近の記事

【映画レビュー】『ミスト』――映画と原作小説の比較、そこに描かれる善性

こんにちは。 おいお前、スティーヴン・キングの映画しか観てなくない?と思われそうですが、一応いろいろ観てます。この前は『パシフィック・リム』観ましたよ。でも残念ながらNot For Meでした……。 それでなんかキング映画に戻ってきてしまったんです。 今回は前2作『ランゴリアーズ』『ザ・スタンド』に比べると知名度もそこそこある、パニック映画の金字塔のような作品です。 スティーヴン・キング 『ミスト』 今回初めて原作を読んでから映画を観たので、両者の違いなんかも記していけ

    • 【映画レビュー】『ザ・スタンド』――ポストアポカリプト×聖書の物語

      またも映画レビュー、またもスティーヴン・キング原作です……。 この前観た『ランゴリアーズ』が面白くてキング映画の沼にハマりつつあります。 今回の『ザ・スタンド』も会社の人にDVDお借りしたんですが、後日映画の感想を伝えたところ、なんかその内容が物珍しかったようで、その場で似たような感想を発信している人がいないか検索しだしたりして……。 なんかそんな反応初めてだったんで、noteの記事にしてみようかなって気持ちになったんです。 とはいえ、おそらく大多数の人が見たこともない映

      • 【書籍紹介/海外文学】何故みんな"バートルビー"で哲学するのか

        いよいよ春めいてきましたね。 いつの間にか山菜が終わりかけてて、ふきのとうを食べ損ねたM.K.です。 だんだん暖かくなってきて、夜の時間も石油ストーブの前で震えなくても済むようになりました。 ガウンを羽織ってソファに寝そべって、照明をちょっと落として、読書をしたり映画を観たりといった日々を過ごしています。 そんな早春の夜にぴったりな、ペーソスに満ちた純文学と、その評論はいかがでしょうか? ジョルジョ・アガンベン『バートルビー 偶然性について』 この本は、ハーマン・メルヴ

        • 【映画レビュー】古さも低予算も気にならない至高のパニック映画!

          人生初めての映画レビューです。 先日お昼休みに会社の先輩とスティーヴン・キングで盛り上がったんですが、 後日その方がおすすめ映画のDVDがたくさん入ったケースを貸してくれました。 1990〜2000年代の古めの映画が中心なのですが、これが意外と面白くて。 それで居ても立っても居られず、記事を書こうと思い立ったのです。 今回語りたいのが、『スティーヴン・キングのランゴリアーズ』です。 スティーヴン・キングの記事が続いちゃいますがご容赦ください。 以下、概要です。 あらすじ

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          【書籍紹介/海外文学】スティーヴン・キングが授ける創作手法

          noteを始めてから、ここで創作活動されている方が意外と多くて驚きました。それも、例えば「エブリスタ」や「小説家になろう」といったプラットフォームよりも、ハードで純文学に近い作品を創作されている方を多くお見受けします。なんかブログや近況報告に交じってひっそりと創作小説があるの、ちょっといいですよね。好きです。 私もゆくゆくはそんな風に短編や連載をnoteに載せてみたいのですが、まだ修行中というか、完全にジャンル小説でいっていいのか、いくとしたらSFか、時代小説か……みたいな

          【書籍紹介/海外文学】スティーヴン・キングが授ける創作手法

          音楽遍歴

          こんにちは。一足早く春が来たと思ったら、また雪が積もって調子が狂いっぱなしのM.K.です。 最近よく聴く音楽の話をしたいだけなんです、それだけのために記事を書こうとしています。人の音楽の趣味とかマジでどうでもいいと思うのですが、でも改めて考えてみると、好きな音楽のジャンルがガラッと変わる瞬間、なかったですか? あの瞬間って、やっぱり不思議だなと思うのです。 それまで好きだった音楽がなんか色あせて聴こえて、新しい音楽がめちゃくちゃクレバーで良く考えられていてオシャレに聴こえる瞬

          音楽遍歴

          【選書】ノンフィクション山岳小説ベスト5

          誰にだって何にだって「初めて」の体験はあって、忘れ難いものだと思うが、私にとって山岳小説の「初めて」は、ジョン・クラカワーの『空へ』だった。 これは1996年のエベレスト大量遭難事故を扱ったノンフィクション小説で、のちに映画化もされたベストセラーだ。 当時、世界最高峰エベレストの登攀を、複数の登山隊が狙っていた。アドベンチャー・コンサルタンツ遠征隊、マウンテン・マッドネス遠征隊、IMAX/IWERKS遠征隊、台湾隊、ヨハネスバーグ『サンデー・タイムズ』遠征隊、アルパイン・ア

          【選書】ノンフィクション山岳小説ベスト5

          【記録】ベートーベンの第九を歌ったときのこと

          ずっとnoteに書きたいと思っていたことなんですが、昨年末にベートーベンの交響曲第9番「歓喜の歌」の市民合唱に初めて参加しました。 山間部のそんなに大きくない自治体のホールでやったのですが、お客さん1,000人弱ほど入ったそうで(普段イベントも少ないからでしょうか)、結構な賑わいでした。 社会人合唱団に所属している友人が誘ってくれたのですが、結果的に友人には大感謝しています。大変だったけど、とっても楽しかった。 本番の約2か月前に楽譜が届き、友人に猛特訓に付き合ってもらい、ゲ

          【記録】ベートーベンの第九を歌ったときのこと

          【書籍紹介/海外文学】なんかパッとしない天使のじいさん

          noteってもっと気軽に書くものだった筈なのに、気が付いたらこれまでの投稿記事を見返して、書籍のジャンルや話題でバランスを取ろうとしたり、そんなに好きでもない記事を紹介しようとしていたり、方向性を見失いかけていたので…… 紹介に値するかは一旦度外視して、ここらで私自身がめちゃめちゃ好きな作品を紹介して、好き勝手喋り倒して自分を取り戻しておこうと思います。 今回はこれです。 『純真なエレンディラと邪悪な祖母の信じがたくも痛ましい物語――ガルシア=マルケス中短編傑作選』 ガ

          【書籍紹介/海外文学】なんかパッとしない天使のじいさん

          【書籍紹介/海外文学】1万年の時を超えるアットホームドラマ

          なんだか急に暖かくなってきて、逆に体調を崩しがちなM.K.です。 前回もまた長すぎる記事を書いてしまい反省しています。今回は短く気楽にいきたいと思います。 もともとノンフィクションしか読まない(読めない)人間だった私が、ささやかながらフィクションの海に漕ぎ出したきっかけの一つはSFとの出会いであり、特に『1984』のようなディストピアSFが今でも大好きなのですが、 何を血迷ったのか、最近アーシュラ・K・ル・グウィンの短編集を買いまして、SFとファンタジーの接合点を行き来する

          【書籍紹介/海外文学】1万年の時を超えるアットホームドラマ

          【書籍紹介/海外文学】冒涜の限界に挑戦する

          すっかり雪も溶けて、そろそろ花粉が辛いM.K.です。 その国、あるいは民族集団、あるいは共同体におけるセンシティブなもの、例えば宗教や政治やセクシュアリティのタブーを揶揄して笑い飛ばすという行為は、部外者がやると顰蹙ものだが、内部の人間が自虐的にやるとき、無性に面白く感じてしまったりする。 あるいは、タブーをやぶることそのものが現状への反発・抵抗・批判を意味することもある。昔、東京都知事選の政見放送で、中指を突き立ててメンチをきった外山恒一という人がいたが、あれは政見放送

          【書籍紹介/海外文学】冒涜の限界に挑戦する

          珈琲遍歴

          読書のお供といえば珈琲という人は多いと思いますが、本の世界同様、珈琲の世界も一度浸かるとズブズブ沈んで二度と出られない底なし沼的な恐ろしさがあります。 定年間近の父がまさにその沼にどっぷりいってしまい、死ぬほどミルを買った挙句、デロンギのでっかいコーヒーメーカーまで買ってしまい、実家の台所の4分の1を占拠しています。 私は絶対こうはならない!と、極力旅先で豆を買うことだけに専念し、珈琲道具は手動ミル1本。ネルドリップに憧れはありつつも、現在のところ自制できています。 今回は

          珈琲遍歴

          【書籍紹介/海外文学】改変された百科事典と、そこに記される架空の惑星

          ロシア文学にハマった後、もっといろんな国の文学作品を読みたいと思って何となく手に取ったのが、バルガス=リョサの『密林の語り部』でした。文明社会の通時的現実認識と、魔術的世界の共時的現実認識が交互に繰り返される衝撃の構成に、見事にラテンアメリカ文学沼に引き摺り込まれました。 とはいっても、文学に疎い私はバルガス=リョサとガルシア=マルケスくらいしか知らなかったし、マジック・リアリズム全開のガルシア=マルケスはあんまり自分に合わないかなって思いながらも、無理して読んでました。

          【書籍紹介/海外文学】改変された百科事典と、そこに記される架空の惑星

          【書籍紹介/海外文学】理性のない人々に取り囲まれたら

          こんにちは、せっかく溶けたと思ったらまたすごい雪が積もってしまいました、東北の片田舎に住むM.K.です。 いきなりですが、私の好きな文学研究家・翻訳家に奈倉有里さんがいます。私がロシア文学沼にハマるきっかけをくださった一人なのですが、この方が翻訳されているベラルーシ人作家のサーシャ・フェリペンコがすごく良くて。 その人がよく描く人物像があるのですが、 それは社会主義の時代に、密告の恐怖に怯えながらも、読書や思想を手放さない勇気ある人。 周りの人々が考えることを辞めてしまって

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          【書籍紹介/日本SF】空想部族の空想言語vs文化人類学

          ※今回紹介する本、私はメッッチャ面白い!と思って選んだのですが、会社の先輩にあらすじを話してみたところ「難し過ぎて分からん」という反応だったので、うまく書ける気がしません! ひたすらつまらん記事になるかもしれないのであらかじめご了承ください! こんにちは、社会人になってからなぜか文化人類学にハマったM.K.です。 文化人類学といえば、まずマリノフスキーの「クラ」がどんな教科書にも最初の方に載ってると思います(すいません、長くなります)。 飛行機が飛ばずにトロブリアント諸島

          【書籍紹介/日本SF】空想部族の空想言語vs文化人類学

          【書籍紹介/海外SF】めちゃめちゃ地味なX-MEN

          暖冬と言われていたけど、ついにドカ雪になってしまった。家から出られないM.K.です。 突然ですが、MCU映画の『エターナルズ』が大好きで、特にマッカリが大好きなんです。 読書家で引きこもりなところ、いわゆる聾唖者だけど自信たっぷりなところ、そして高速移動の超能力。 他の登場人物に比べて、彼女だけが「友達にいそう」な超能力者でした。普通に街を歩いてそう。 彼女に密かに好意を寄せるドルイグも、卑屈な性格が彼女の前だけは一変するところとか凄く人間臭くて好きでした。 この2人のウブ

          【書籍紹介/海外SF】めちゃめちゃ地味なX-MEN