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水の國の管理者

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夢でみた話を物語にしています。 幻想SF小説
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水の國の管理者⑤ (夢の創作物語)

水の國の管理者⑤ (夢の創作物語)

ヴヴヴ…

微振動と共に私のすぐ右側に女性型対話ホログラムが現れた。映像が乱れていて、かなり古いタイプのようだった。安定するまで少し時間を要した。

【……ザ…ッ……は…こ……こんにちは。こんにちは。会話は可能ですか?こんにちは。会話は可能ですか?】

『こんにちは。会話は可能です。』

【こんにちは。ああ、よかったです。長いこと起動していないようでしたね。驚かせてしまいましたか?】

『すこし

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水の國の管理者④ (夢の創作物語)

水の國の管理者④ (夢の創作物語)

なるべく心拍数があがらないように気をつけながら、意識のない小さき生命体の手をつなぎ、ゆっくり引っ張る形で左の奥へ進んだ。

本当は、抱きしめながら進みたいところだが、いつ攻撃がとんでくるか不明だったので、すぐに手放せるようにしなければならなかった。

上から差し込む光源の量が減っていた。あたりは暗くなりぼんやりとしか先を見通すことができない。

私は、足をとめた。

その15メートル先に、小型船の

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水の國の管理者③ (夢の創作物語)

水の國の管理者③ (夢の創作物語)

先ほどよりも、視界はクリアになってきた。明るさはグッと落ちたようにも思うが、その分、水の透明度は上がっていたので、さほど気にならなかった。
見上げると、上部の水面が何層にも重なっているようで、ここのセキュリティレベルはかなり厳重であることは間違いなかった。

しかし広い造りだな…わたしは、何もないが、壁の不思議な窪みや、あちこちにある奇妙な高低に目をやりながらも、小さい生命体の後を歩いていた。

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水の國の管理者② (夢の創作物語)

水の國の管理者② (夢の創作物語)

我々は常に耐久性の高いスーツを着用しているので、水の重みを感じることも無いのだけれど、何故だか、ここの不思議な水にはスーツの機能も対応外なのかもしれないと思った。

「ここからは、段差になりますので。」

小さな生命体は、振り向くことなく静かに沈んでいった。

わたしも、その揺らめく姿の後を追い、足元の感覚を探った。

視界は若干不透明だったが、しばらくすれば、自動で調整が効くだろうとあたりを見ま

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水の國の管理者① (夢の創作物語)

水の國の管理者① (夢の創作物語)

それにしても、此処の水質維持システムは極めて目を見張るものがあるな。基準値は我々が保有する地区よりはるかに高いというのに。素晴らしい…

そんなことをぼんやり思いながら、わたしは低空飛行を続けていた。

眼下には、壮大な水の國が広がっていた。

造り込まれたその徹底した王国を視察することが許可されていた。

ありとあらゆるテーマパークを集結させたようなその水の國は、静かにその営みを誇っていた。

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