歴バスのる〜ら
伊豆の国市の観光周遊型バス「歴バスのる~ら」。300円で1日乗り放題。バス旅で「伊豆の国」市の歴史的建造物を巡った。
伊豆長岡駅。「歴バスのる~ら」は駅前の「伊豆の国市 観光案内所」前から出発。運行は土日・祝日・夏休みや冬休みなど平日の指定日のみ。1日6本。
乗車券は観光案内所で購入可。ドライバーに提示して乗車。誰もいない!?(汗)
約10分で世界遺産「韮山反射炉」到着。
韮山反射炉は、幕末期に大砲などを製造した溶解炉。国内で唯一現存。2017年、世界遺産に登録された。
反射炉。
大砲。
真向かいの丘には茶畑があり・・・
展望台から世界遺産・富士山が見える。
ゆっくり見学して1時間。ちょうど良い頃合いに歴バスに、のる〜ら。あれ?乗車券が見当たらない!慌てて探しているとドライバーの男性が、
「さっき乗って下さったお客様でしょ?お顔、覚えてますから大丈夫ですよ!お乗りになってお席でごゆっくりお探し下さい」
その対応が嬉しくて、ドライバーの名前を確認。フロントガラスの上に「岡本」と書かれていま。岡本さん、か…
5分程で「蛭ヶ小島(ひるがこじま)」到着。乗車券は無事発見。降車時に「ありました!」と提示すると、岡本さんは笑顔で「行ってらっしゃいませ」と応えた。
源頼朝公配流の地。平治の乱に敗れた頼朝は蛭ケ小島に流され、1160年〜1180年(14歳〜34歳)まで20年間この地で過ごしたとされる。昔、この辺りには蛭(ヒル)がウジャウジャいたそう。頼朝は、この地で北条政子と出会い、結婚したと伝えられている。
現在は「蛭ヶ島公園」となり、二人の銅像が建っている。
ここら辺でちょうどランチタイムになるのだが、周辺に飲食店はない。園内の「蛭ケ島茶屋」に入る。
囲炉裏があって良い雰囲気。無料休憩所なので自由に出入り出来る。
名物「しいたけ蕎麦」を頂く。手打ちとか求めちゃダメよ(苦笑)
休憩終了。本当は岡本さんのバスに乗りたかったのだが、実はドライバーは、たった1人しかいないらしく、昼は休憩中のようだ。歴バスは来ないので、約20分ほど歩き「江川邸」到着。
1958年、国の重要文化財に指定された「江川邸」。NHK大河ドラマ「西郷どん」「篤姫」、TBSドラマ「仁ーJIN」のロケ地としても有名とか。
江川家は清和源氏の流れを汲み、保元の乱(1156年)頃、伊豆韮山に定住。鎌倉・室町時代は豪族として辺りを納め、江戸時代は徳川幕府の代官を世襲。36代目当主、江川太郎左衛門英龍(坦庵)は名代官として知られ、韮山反射炉などを建設した。
1600年頃建てられた主屋。
主屋の土間に立ち見上げると、屋根裏の木組みが見える。免震構造だそう。
立ち木をそのまま柱にした「生き柱」。
台所。
英龍(坦庵)は日本で初めてパンを製造した人として知られている。土間には当時のパン焼き窯も。
当時のパンは、長期保存を目的とした乾パンだった。
全国パン協会が建立した「パン祖の碑」。
裏門扉には、豊臣秀吉の軍勢による攻撃跡(銃弾・矢)が。
さぁ、歴バスに、のる〜ら。
「あ!岡本さん!?」
「はい、そうです。お帰りなさい」
ニッコリ笑った岡本さん。たった1人で何周も巡っていると知る。ラストは願成就院へ。約13分で「北条の里」到着。
「あともう1回、お会い出来ますね」
「はい、また後ほど。どうぞごゆっくりお楽しみ下さい」
高野山真言宗の寺院「願成就院」。文治5年(1189年)北条政子の父親である北条時政が、娘婿・源頼朝の奥州平泉討伐の戦勝祈願のため建立。
境内には時政の墓がある。
願成就院の大御堂には国宝(2013年、指定)がある。運慶が彫った5つの仏像だ。撮影禁止なので画像はないが、仏像の中から「運慶作」と書かれた木札が発見されている。宝物館展示。
願成就院の裏山、守山には「守山八幡宮」が佇む。
647年(大化3年)建立。1180年(治承4年)源頼朝が源氏再興を祈願し挙兵したと伝えられている。
階段はキツイ・・・
登り切ると社殿(本殿)がある。
あなたの願いが叶いますように・・・
こうして5箇所の史跡を巡り、帰途へ。
歴バスに、のる〜ら。
「お帰りなさい!」
「ただいま~!」
いつの間にかバスは満席になっていた。客の殆どが80代の女性。皆、伊豆長岡駅へ帰る。岡本さんがマイクを通して語り掛ける。
「本日は、歴バスのる~らをご利用頂き誠にありがとうございました。お楽しみ頂けましたか?」
「岡本さんのお蔭で楽しかったわ」
「今日のお客様は最高です!」
「岡本さんも最高よ!」
皆、口々に「岡本さん」と名を呼ぶ。誰ひとり「運転手さん」と呼ばない。観光バスでも貸切バスでもない。単なる循環バスのドライバーで、ここまで愛されるだろうか。
岡本さんは京都出身。観光バス等を運転し、現在はフリーのバスドライバーとして活躍中。土日は「のる〜ら」に乗り、たまに池袋や新宿の路線バスも運転する。ガイド顔負けの案内が素晴らしい。
「岡本さん、楽しかったです!」
「それは良かったです」
「ありがとうございました!」
「のる~ら」は静岡弁で「乗るよね〜」の意味。いつかまた、歴バスに、のる〜ら!
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