【短編小説】かつて「銀座」という街があった
銀座という街が、いつしか日常になっていった。
はじめは、銀座で働くということがとても特別なことに思えて、駅の改札口を抜けてみゆき通りの店に行くまでに、いつも心が華やいだ。
ここは特別な場所なのだ。それは確かに間違いがなかった。私が働いている店には、テレビでしか一生お目にかかれない人がいっぱい来ていた。
いわゆる著名人との話は楽しく、こちらから無理に話を合わせる工夫などもなかった。もちろん最低限のマナー、気配りなどは徹底的に店から叩き込まれるのだけど、時にはお客様