見出し画像

一人Book Club(3. "Hokusai Manga")


 大英博物館では現在、葛飾北斎の下記展覧会が開催されており、年末に時間を取って行ってきました。

「『Hokusai: The Great Picture Book of Everything』@ British Museum」
期間: 2021年9月30日〜2022年1月30日

 今まで葛飾北斎の絵や版画はあまり詳しく見た事がなく、特に原画を見る機会などなかったので、とても興奮して行ってきました。

なぜ北斎の絵が、イギリスに?と思われるかもしれません。。

 江戸時代の浮世絵などは絵師が描いた下絵を彫り師が版画にして印刷していたそうです。今回の展覧会は、北斎が彫り師に渡すのではなく下絵(原画)を小さな箱に保管していたものでした。その後、フランスの収集家が購入したそうですが、一旦行方知らずになり、最近発見されて大英博物館が購入したため展覧会を開催することになったそうです。

 10cm x 20cmの半紙に色々な中国の古い伝説や伝説の動物、仏教の教えなどを一枚一枚絵にした作品が並んでいて、本当に素晴らしかったです。

筆のタッチも繊細で、時に力強く描き、光を白と黒で表現するのは難しいところを、さすが見事に表現されていました。あの細い線で描く時はどんな筆で描いたのか、などと色々北斎が描いている姿を想像しながら見ていました。

 今回の本の紹介は、博物館のショップで売られていた『北斎漫画 – Hokusai Manga with Over 900 Illustration』です。
この本は3巻あり、1巻は「江戸の生活」、2巻目は「自然の不思議」、3巻目は「想像物」というタイトルで分かれています。
私の江戸時代に生きた人々のイメージは、着物をしっかり着こなして、堅苦しく、窮屈で、、とちょっとユーモアがあるとは思えないイメージだったのですが、そのイメージが360°ひっくり返りました。

北斎の描く江戸の人たちは、私たちの日常と何ら変わりなく、時にはふざけてみたり、踊っていたり、他の人を茶化したり、楽しそうに生活している人たちがたくさん出てきます。これは、北斎の想像だけで描かれたのではなく、やはり実際にユーモア溢れる人たちだったと思わざるを得ません。

また、私たちが現代に生まれるまでに残念ながら廃れてしまったり、生活の変化で使われなくなったりした道具や町の様子、細かく言うと垣根の種類なども詳しく描かれていて、とても新鮮でした。

絵のタッチや構図が、とても江戸時代に描かれたものとは思えないくらい「新しく」、石ノ森章太郎さんや手塚治虫さんの漫画にも何かしら影響を与えたに違いないと思ってしまうくらいです。
この時代、遠近法は日本では一般的ではなかったのにも関わらず、この本には遠近法の手法や構図の分析などもあり、人生をかけて絵の勉強に費やした北斎の熱意が伝わってきます。

 私たちは歴史的な事件や戦争などによって、時代が「変わる」と認識しますが、私たち日本人の生活は、今も昔も変わらず続いてきたと思わざるをえない、時代ごとに人々の生活を分断させて認識するべきではないと、考えさせられる本でした。



この記事が参加している募集

読書感想文

マンガ感想文

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?