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『くもをさがす』読了📖

著者西加奈子さん本人の闘病記録。
カナダでの生活中にトリプルネガティブ乳ガンと告知され、そのままカナダで治療や手術をした。

西さんは私と同い年だ。
乳がん罹患には年齢は関係ないと思うが、やはり自分にもリスクがあることを、同い年というとより強く感じる。

とにかく生きて帰ることは出来そうだった。これからもしばらくは、Sの母でいられるのだ。

P169

ここが、一番今の自分に刺さった。
明日死にますと言われて後悔することがあるとすれば、子どもたちがどんな大人になって、どんな仕事をしたり結婚したりするのかをこの目で見ることができなかったということくらいだ。
それは、自分が素晴らしいことを成し遂げたからとかではないけど、あと1日ならば成し遂げられることもあまりないだろうし、欲しいものを手に入れてもあまり意味がない。
命が続く限り、子どもたちを見守ることができたなら、自分にとってそれが1番幸せだ。

この本は、お守りみたいだと思った。
いつ同じような悲劇が起きるかはわからないけど、病気は誰のせいでもなく病気自身もまたただ生きるために存在していて、たまたま居合わせてしまう。そんな悲劇が自分にいつ起こるかはわからないけど、その時絶望と恐怖を感じることは自分だけではない、ということをそっと寄り添って教えてくれて、見守ってくれる本。

カナダの人々の言葉が関西弁で表現されていて、重いテーマなのにそれを感じさせない軽やかさとユーモアがあって、何度も笑ってしまった。西さんが感じていた押しつけがましくない献身をあらわすのにぴったりだと思った。

それにしても、私はカナダでは手術しない、かな。両乳房とリンパ3本を切除する手術が日帰りだから!



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