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『パリ、テキサス』過去に向き合う終わりなき旅が未来をもたらす<★4.0/5、2022年12本目>

<映画情報>
『パリ、テキサス』1984年
監督: ヴィム・ヴェンダース

<1文内容紹介>
妻子と別れた男が、過去の自分に向き合い息子の未来をつくる

<ネタバレ感想>


荒野を一人歩く男、トラヴィスからこの映画は始まる。彼が歩く目的はわからないが、行き倒れになったことでロサンゼルスに住む弟と連絡がつき、迎えがやってくる。

弟にすら目的を言わない、いや言えないトラヴィス。彼にはかつて家族があったが、崩壊してしまい心に深く傷を負ってしまった。

妻ジェーンの行方は知れないが、息子ハンターは弟のウォルトとその妻アナが引き取って育てている。

ロサンゼルスにつくころには少し喋ることができるようになったトラヴィス。4年ぶりに再開したハンターとの距離感に戸惑う。

それでも懸命に父親として振る舞おうとし、ハンターとの距離は徐々に近づいていく。

トラヴィスがハンターを学校に迎えに行き、最初は一緒に帰るのも嫌がられるが、次は道を挟んで歩くようになり、最後は一緒に帰るという演出で、視覚的に距離が表現されていた。

アナは家族同然のハンターを失ってしまうのが怖い。ジェーンからの連絡は途絶えているが、彼女から月に一回決まった場所からハンター宛に送金があることを告げられる。

それを聞いたトラヴィスはハンターを誘い母親探しのロードトリップに出ていく。

トラヴィスから母親の写真を見せられていたことが幸いして、ハンターは母親に気づく。車で後を付けるトラヴィス。母親は「覗き見クラブ」で働いていた。

ハンターを車に残し、店に入っていくトラヴィス。客の顔は女性に見えないが、客は女性の顔を見ることができる。この日は想いを伝えられず、結局やけ酒して終わる。

"But I'm even more afraid of not facing this fear"と考えたトラヴィスは、再度店に向かう。辛い過去の記憶を掘り起こし、ジェーンに語りかける。

このマジックミラーを多用したカットが美しかった。自分は相手が見えるが、相手は自分が見えないというのは、コミュニケーションを可視化していた。私たちが言葉を交わすとき、どれだけ相手を理解し得るのか。

負った傷が消えることはない。だが傷を癒やし、前に進み続ける活力を得るには、傷そのものに向き合わないといけない。トラヴィスが勇気を出したことで、ハンターは実父との思い出を得、実母と再会を果たした。

それを見届けたトラヴィスはハンターをジェーンに託し、旅を続ける。

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