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世界のツナ缶事情🐟(生産編)

むぅちゃんはツナ缶を使ったトマトパスタを作ることが多いです!
ツナ缶は保存が効くので、「わ~💦今日は冷蔵庫に何にもないぞー💦」というときでもささっと一食作れるのがいいところ✨
家計にも優しいし、とても頼もしい存在ですよね😊

今回は、そんなツナ缶の生産量ランキングや、生産の歴史、論点・問題点などについて調べてみました。
ぜひ最後まで楽しんで読んでみてくださいね👀


世界のツナ缶生産量ランキング

FAO統計によると、世界で最もツナ缶が生産されている国は「タイ」のようです。
以下は水産庁の調査資料から、1976~2016年迄のまぐろ類(カツオを含む)缶詰生産量の国別比較の図を引用しています。

国別まぐろ類(カツオを含む)缶詰生産量の動向(1976‐2016年)FAO統計
(「2019 水産庁 水産研究・教育機構『まぐろ類の漁業と資源調査(総説)』」より図参照)

これを見てむぅちゃんが思ったことは…

「「あれ、ひと昔まで、アメリカと日本が結構生産がんばってた??」」

確かにツナ缶と聞くと「はごろもフーズ」さんのCMを思い出します🐟
ツナマヨおにぎり、ツナサンド等、日本の家庭料理にもツナって浸透してますよね。

でも、アメリカのツナ缶料理なんて知らない…
そもそもいったいツナ缶っていつ・どこで誕生したんでしょう?

ツナ缶ができたわけ・広まったわけ

実は、ツナ缶ができた背景には、「イワシ缶」が大きく関係しています。
イワシの缶詰というと、例えばオイルサーディンなどが有名ですね🐟
ここでは少し遡って、イワシ缶の発明から話し始めましょう👀

①はじめての魚の缶詰として「イワシ缶」が発明されたから

19世紀初頭、フランス政府はとある問題に悩まされていました。
それは「遠方の軍隊への食糧供給」の問題です。
目的地が遠ければ移動に時間がかかってしまい、自前で持ってきた食糧が傷むリスクが高まります。
かといって、食糧を敵地で現地調達するのも安定性に乏しいですよね。
そこでナポレオン率いるフランス政府は、国民に対して1万2千フランもの懸賞金を提示し、「画期的な食品貯蔵法」を募ることにしました。
そんな中で、フランス人の料理人であるニコラ・アペールさんが発明したのが、「食品の密閉保存技術」です。
これは「びんに調理済の食品を詰め、コルクでゆるく栓をしたのち、鍋に入れて沸騰過熱。その後、びん内の空気を除いて、コルク栓で密封する」という内容のものでした。
また、同時期に、アペールさんの友人であるジョセフ・コリンさんは、フランス北部のブルターニュ地方の海岸沿いで、漁師たちがイワシを揚げた後、粘土の瓶でイワシを保存している光景を目にします。
コリンさんは、既存のブルターニュのイワシの保存法とアペールさんの「密閉保存」の技術を応用し、こんにちの「イワシの缶詰」を開発しました。

アペールさん・コリンさんの英知により発明されたイワシ缶は、たんぱく質を手軽に摂取できる食べ物として、またたく間にフランス中で人気になりました。
1880 年迄には、ブルターニュ地方で 5,000 万個以上のイワシ缶が生産されるようになったと言われています。

このようにイワシ缶が大量生産されていく裏側で、徐々にイワシの乱獲が問題になっていきました。

②イワシの乱獲により、次世代の「魚の缶詰」が求められていたから

イワシ缶が普及すればするほど、イワシの乱獲が横行し、イワシの漁獲量が漸減していきました。
そんな最中の20世紀初頭、アメリカのイワシ漁師兼「南カリフォルニア・フィッシュ・カンパニー」の共同経営者だったアルバート・P・ハーフヒルさんが、イワシの代わりにツナを使った缶詰を作ることを思いつきます。
ハーフヒルさんは、ツナを煮ることで色が白くなり、まろやかな味わいになることを発見し、こんにちの「ツナ缶」を開発しました。
ツナ缶はアメリカ中で人気を博し、イワシ缶同様、世界中に広まっていったといいます。

ツナ缶が発明されて以降、アメリカは第二次世界大戦に直面しました。
ツナ缶は良質なタンパク質を得られるだけでなく、長期保存が効く便利な食品として、アメリカ海軍で採用されました。
海軍として徴兵された漁師も多く、ツナ缶の供給量は限られていましたが、需要は高かったといいます。

戦後も、ツナ缶の生産は続けられ、1950年代にアメリカは世界最大の生産国・消費国となりました。
同様に、日本でも1920年代からツナ缶の生産がスタート。
敗戦後、アメリカ・日本の連携が深まるにつれ、二国でのツナ缶製造もどんどん盛り上がってきたようですね🐟

🔍ちなみに…
「ツナ」はマグロのみならず、スズキ目サバ科マグロ属に分類される魚の総称。欧米では、用途が似ているカツオも同じくツナと呼ぶので、日本でも、「マグロ類=ツナ」とまとめて呼んでいる。そのため、ツナ缶の原料にはマグロとカツオの両方が存在する。

https://umito.maruha-nichiro.co.jp/article59/

③巻き網漁・FAD(集魚装置)によって、生産効率が高まったから

1958 年、アメリカ マサチューセッツ州の漁船から、マグロ・カツオ漁の用途としての巻き網漁が始まりました。
巻き網漁とは、大型の網を円形に広げて、泳ぎ回る魚を群ごとすばやく包み込むようにして獲る漁法のこと。
魚群を網で囲んだのち、網の底をしぼって囲みを小さくしていきます。
この漁法はとても効率がよく、一度に大量に獲ることができるのが長所なんだそう👀

巻き網漁。画像は以下より
https://www.wwf.or.jp/activities/basicinfo/2140.html

さらに、「FAD」と呼ばれる集魚装置も発明されました。
これは、洋上に浮遊物を流すことで魚を1ヶ所に集める仕掛けのことです。
FADで魚群を集め、巻き網漁を用いてまるごと獲ることで、マグロ・カツオの漁獲量はみるみるうちに多くなっていったと言われています👀

FADを用いた巻き網漁。画像は以下より
https://charitsumo.com/news/8884

巻き網漁・FADの開発とともに、アメリカ・日本のみならず、さまざまな国がマグロ・カツオ漁やツナ缶の生産に踏み切りました。
中でも、ツナ缶製造が盛り上がったのが、現在の生産量1位であるタイ。

タイは、西太平洋・インド洋の集約地点であるという地理環境から、安価に原材料のツナを調達することができる状況にあったそうです。
また、先進国と比べ人件費が安かったことや、ツナ缶製造の先進国から積極的に加工技術を吸収し安定した品質の製品が行えるようになったこと等から、生産量1位の座に上り詰めたんだとか👀

ちなみに、タイ現地ではツナ缶の国内消費はそれほど多くなく、ほとんどが輸出用。
生産大国なのに消費していないのはちょっと意外かも🐈

ツナ缶を取り巻く論点・問題点

ここまで、ツナ缶の生産に至るまでの歴史や背景を学んできました。
ここからはツナ缶生産を取り巻く論点や問題点について一緒に学んでいきましょう🐈

①タイの漁船における「海の奴隷」問題がある

ツナ缶の最大の生産国であるタイで「海の奴隷」が問題になっています。

実は、ツナ缶製造に携わっている方の多くがミャンマーやカンボジアなどの東南アジア諸国から連れてこられた男性たちなのだといいます。
たとえば人身売買業者に「魚の缶詰工場で仕事がある」などと騙されたり、飲み物に睡眠薬を入れられて意識を無くしている間に誘拐されたりと、非合法的な手段で強制的にマグロ・カツオ漁の漁船に乗せられてしまうことが多いのだとか…
更に、タイのマグロ・カツオ漁の漁船の中では、労働者へのパワハラ・暴力が横行しているそう。
「エイの尾や金属パイプで殴られた」「熱湯をかけられた」「眠いのに寝かせてもらえず、覚醒剤を渡され起き続けることを強いられた」「友人が海に投げ捨てられた」「休みなく働いたが報酬は一切なし」…
まさに奴隷のように強制労働を強いられ続けているのだといいます。
魚は母船に積み替えられ、食糧や燃料も母船を通じて供給されるため、彼らが陸地に逃げ出すチャンスはほとんどないのだそう…

このような状況から、EUは2015年、タイに対して、IUU(違法・無報告・無規制)漁業に対する改善を要求し、改善されなければ水産物の輸入を停止するとの「イエローカード」を発出したとのことです。
その後、タイ政府は、IUU対策を強化する法制度の整備や、2019年にはILO(国際労働機関)の漁業労働条約の批准等に向け動きだしたようです。
現在は、水産業関連の国際会議等で、水産業における労働問題も大きく取り沙汰されるようになり、徐々に解決の方向に向かいつつあるようです。

ドキュメンタリー「ゴースト・フリート 知られざるシーフード産業の闇」より
タイのツナ缶向けマグロ・カツオ漁の奴隷となり、24年間も故郷に帰れていないカシム
画像は以下より
https://www.huffingtonpost.jp/entry/ghost-fleet_jp_628ec3d8e4b0933e736edb9f

②マグロ漁においてイルカを混獲してしまう

マグロ漁における「イルカ等の混獲」が世界で問題視されています。

マグロって、大抵水深150メートルほどの深さで泳いでいるので、海の上からではどこに巻き網を投げるべきか分からなそうですよね🐟
では、漁師の方々は何を手掛かりに巻き網を投げているのか気になる…

実は、マグロを獲るヒントは「イルカ」にあります。
太平洋では、キハダマグロとイルカが群れで泳いでいる光景をよく目にするのだそう。
水深150メートルほどの深さで泳ぐマグロは目には見えませんが、イルカは海面近くで泳いでいるため、海の上からでも観測が可能👀
そのため、中央アメリカ地域周辺の漁業者は、イルカを頼りにキハダマグロを獲ってきました。
イルカを手がかりに巻き網を投げるわけですから、巻き網の中にはマグロ・カツオだけでなくイルカも紛れ込んでしまいます。
紛れ込んでしまったイルカの多くは、そのまま網の中で死んでしまいます。

こうした混獲を防ぐための方策が求められ、より選択性の高い漁法が導入されました。
それこそ、イルカ頼みにするのではなく、FAD(集魚装置)を使ってマグロの魚群を探す手法等もその一つと言えるでしょう👀
漁法の改良に伴い、1985年から1997年にかけて、巻き網漁中のイルカの死亡率は99%も減少したといいます。
現在、欧米ではイルカとの遭遇を避けた漁法によって供給されたマグロ・カツオ類かどうかを表す「ドルフィンセーフ」・「ドルフィンフレンドリー」等のラベルが缶詰につけられています。

ちなみに、巻き網漁で巻き添えになるのはイルカばかりではありません。
海面を飛んでいた海鳥や、ウミガメなどが巻き網に引っかかってしまうこともあるようです。
それでも、海外の記事を見ていて問題視されているのは、イルカの混獲ばかり…どうも海外におけるイルカやクジラのヒエラルキーの高さを感じます。
インドでは、イルカやクジラに対して「一定の権利を持つ人類ではない人」として、生命や自由の権利を保護する対象としているほど👀
日本では、イルカ・クジラを食べる文化があるので、「他の魚たちとそう変わらないよね」という感覚を持つ方も多いかもしれませんね🐈


③マグロの乱獲による絶滅が危惧されている⇒改善傾向にある

ツナ缶の消費量が増大するにつれ、問題視されてきたのが「マグロの乱獲」。
長年続いた過剰な漁獲により、マグロの資源量が低下してきていることが、2011年に発表されたWWFの調査結果により判明したのです。

特に日本で話題になったのは「クロマグロ」。
太平洋クロマグロや、本マグロとも呼ばれる種類のマグロです。
日本は寿司や刺身などでもクロマグロを利用する世界最大の消費国でした。
しかしながら、クロマグロの資源量は、2010年には初期資源量(漁業が開始される以前の推定資源量)の1.7%まで減少したとされ、当時IUCNの「危惧種」にランクイン。その後、2014年には「絶滅危惧種」に指定されてしまったのです🐟

絶滅を防ぐため、WWFなどの呼びかけのもと、世界中でマグロの漁獲量規制が行われました。
資源量に応じて国ごとに漁獲枠の割り当てが行われたり、未成魚の漁獲規制や制限が設けられたり…
マグロの種の保存のための取り組みが行われました👀

さまざまな施策の結果、現状マグロの資源量は回復傾向に転じています。
たとえばクロマグロの場合は2020年時点で初期資源量の10.2%(約6.5万トン)までに回復。IUCNのランクも「近危急種」まで引き下げられたといいます。
一方、2021年時点においても、ミナミマグロは「絶滅危惧種」に認定されています。
私達にとって身近にあるマグロにも、絶滅危惧の懸念があることは覚えておきたいですね🐈

「マグロの学校」『レッドリスト』より(2021年度)
https://contest.japias.jp/tqj25/250016R/4-1_red_list_j.html
「マグロの学校」『レッドリスト』より(経年)
https://contest.japias.jp/tqj25/250016R/4-1_red_list_j.html

④マグロに含まれる水銀に対する懸念がある⇒人体に対する適量が定まっている

マグロの消費が拡がるにつれ、徐々にマグロに含まれる「水銀」に対する調査が進められました。

むぅちゃんも知らなかったのですが、マグロには一定量のメチル水銀が含まれているようです。
メチル水銀は特に妊婦さんのおなかの中の赤ちゃんの中枢神経系の発達に影響を及ぼすとされているほか、メチル水銀の取り込みによって水俣病が引き起こされる恐れなどもあります。
実際に、1970年代のアメリカ農水省の検査の結果、ツナ缶の水銀濃度が規定量以上だったことから100万個以上のツナ缶を回収した事案も発生したことがあるようです。

現在、日本生協連などから発表されている情報によると、妊婦さん・幼児・近く妊娠を予定されている方々に対しては、マグロは週1回以内(合計で週におおむね50~100g程度以下)にすることが勧められているようです。
それ以外の方に対しては、1週間に3.4μg/体重kgの水銀を摂っても十分に安全性が見込まれるとされているようです。
これは、50kgの人であれば1週間に170μgの水銀を摂っても良いという計算になります👀

ツナ缶80gには、9.12μg程度の水銀が含まれていると言われています。170÷9.12≒18.6ですから、50kgの人であれば1週間に18個のツナ缶を食べても十分安全ということですね🐟

なお、カツオにはほとんど水銀は含まれていないとされています。
どうしても気になる方は、カツオで作ったツナ缶がおすすめかも🐈


ツナ缶には人の営みが詰まってる

いかがでしたでしょうか。
日頃食べているツナ缶に、まさかイルカの混獲や奴隷船などの問題が絡んでいるなんて知りませんでした👀
ツナ缶に潜む論点を知ったことで、これからは国際ニュースを見る目が変わりそうです🚢

むぅちゃんは普段当たり前に食べているものの背景にあるストーリーを知ると、とってもワクワクします🐈
みなさんにも、私が感じるワクワクを少しでも感じ取ってもらえたら嬉しいです!
後日、ツナ缶の消費編の記事もあげようと思いますので、ぜひお楽しみに😊
最後までお読みいただきありがとうございました🌱

出典・参考資料

「2019 水産庁 水産研究・教育機構『まぐろ類の漁業と資源調査(総説)』」

「MFR 37(3), 1975『The Purse-Seine Fishery for Bluefin Tuna in the Northwestern Atlantic Ocean』GARY T. SAKAGAWA」

https://www.zingermansdeli.com/2023/02/sardine-history/


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