短歌 冬なんていらない
古時計錆びたふりこの重さぶん生きたあたしを刻んで欲しい
「人混みは嫌い」あなたの目に浮かぶ私のいないライブを想う
私の背中に降るのは流れ星君の瞳の中で消えてく
「ライバルだけど平日は頼んだよ」ぬいぐるみにも話す恋人
理想ばかり語る奴じゃダメだとかそんな理想を垂れ流す夜
今日君に触れるつもりで捨ててきた爪を帰ってじっと見つめる
きみの耳の下へ顔を埋めたら甘いミルクのにおいにとける
声も名も顔も写真も失って霞に残ったあなたの匂い
ほろ酔いの電車の熱に浮かされて夜風に問いたいあなたの行方
行き先で漆黒を照らす最終便のバスみたいなきみの髪
太陽が気づいていない右鎖骨下のタトゥーに昨晩触れた
並んだあなたの歩幅を知るたびに出会う以前の誰かが見える
なんでもいいのあなたといられるなら都合のよさに朽ちていった身
側溝に埋もれた光を引き上げるひとの指に刻まれた皺
昨日本降りに当たった白い靴紐をほどいて乾かした午後
まだ冬を認めていない私の足を包むのは「こたつくつした」
ねむそうな声でも聞いてみたかったきっと答えるHe’s special
血を掬うてのひらの溝に紫色が彫られて消えないんだよ
東京の見て見ぬ振りが上手くなり大人の成長を恨む昼
月の舟は傾いて朝に沈み眠れぬきみと遊んだクジラ
冬なんていらない僕の誕生祝い隔年と取引しよう
人は足指から老いていくらしい黄色い爪をじっと見るヨガ
明日会えるの楽しみになってきた!まるで今まで違ったみたい
・・・
今までの短歌noteとは打って変わって、白地に一行の縦書き画像を作りました。
なんでかというと、5.7.5.7.7の音節で音を区切らない歌が増えたからです。言葉の途中で切れちゃう画像は微妙なので、一行にしてみました。
音節で区切らない短歌は、歌集から徐々に学んでいるものです。
冬が嫌いな私の短歌、冬に詠んだら春夏より暗い色合いになりました。心象風景というやつでしょうか。
そして今回の創作意欲を掻き立ててくれた歌集は、木下龍也さんの『オールアラウンドユー』です。
表題にもなっているこの歌に対して、思ったことを詠みました。
ちょっとくすぐったいですね。短歌、むずかしいけど楽しい。楽しいけどむずかしい。
では、またお会いしましょう。
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