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街のデザインを観察したらZINEができた

なぜか分からないが気になる。とてもとても気になる。目が合うのだ。
街を歩いていると、こんな不思議な経験をしたことがないだろうか?

わたしの場合、電流が走ったようにビビビッ!とくる景色がある。それは工事現場のカラーコーンだったり、道に落ちているカラフルなタバコの吸い殻だったりする。景色たちと目が合うのだ。

なぜこんなことが起こるのだろう?
誰に頼まれるわけでもなく、謎を突き止めるために自主制作を始めた。
こうして1冊のグラフィック集であるZINEが完成した。

今回は珍しくデザインのことを綴ってみようと思う。
不思議な出会いから生まれたヘンテコな自主制作について、少しだけお話を聞いてくれたらうれしい。


1) つい写真を撮りたくなる景色

上京してから、よく歩くようになった。車移動と違って、ゆっくりと景色が変わっていく。
東京は人口密度が日本一であるように、景色の密度も日本一だと思う。
工事現場の看板、右側通行をうながす案内、しましま模様のポール、規則正しく並んだエレベーターのボタン。
つい写真を撮ってしまう。気になって仕方がない。

「近づくと危険だから気をつけてね」
「右側通行で人とぶつからないようにしてね」

どれも誰かに何かを知らせようと作られている。そんな景色たちが愛おしく、気づけば写真が400枚になっていた。

2) まずは規則性を探ってみる

スマホのアルバムに、写真をまとめてみた。規則性がないものだろうか?

「万物の物は円と線で描ける」

ふと葛飾北斎の言葉を思い出した。どうやらシンプルな円と線で構成されているものたちが多そうだ。
写真とにらめっこしていると、もうひとつ気がつく。色が鮮やかだ。特にビビットな蛍光色に胸キュンしがちなよう。
形と色がキーポイントかもしれない。

3) 手を動かしてトリミングする

形と色がすぐに抽出できる折り紙を使って、景色の一部分を切り取ることにした。気になる景色のパーツを観察し、折り紙で形を切って、貼りつけてみる。

作品はこちらをチェック!

折り紙で色と形だけに分解していく。
切って、貼って、また切って。
手を使って作業することで、見えてくるものがあると信じている。大切なことを見落としてはいけない。

4) 何が魅了させるのか?研究結果

できた作品を床に並べてみると、わくわくした。街はこんなにもカラフルで、面白い形にあふれていたのかと。
景色を形と色に分解して、分かったことがある。

まず、しましま模様が多いことが分かった。たいてい「無彩色」+「一色」だ。
注意喚起したい時にしましま模様がよく使われるが、まさに目を引く。
改めて写真を見返すとしましまがやたら多かった。見事、相手の思惑通り。まんまと引っかかっていた。笑

また、街のベースカラーは灰色だと分かった。コンクリートの占める割合が多い。だから、地面に置かれたカラーコーンやタバコなど、カラフルなモノたちと目が合うのだなと納得した。

5) 発表しないと意味がない

完成した作品は、約160日間に渡ってインスタグラムに投稿した。
「制作しても、発表しなかったら意味がない」。
当時通っていた専門学校で、先生が言っていた言葉だ。
肯定も否定も、世間に晒(さら)さなければ何も起きない。何も起きないということは、作っていないに等しい。

会社から帰ってきて1時間ほど制作する。土日に作品をスキャンして、Photoshopで微調整して、平日に投稿する。
物事が続かないのなら、強制的にやらざるを得ない状況にする。毎日投稿すると断言する。忙しくて2〜3日投稿できなくても許容範囲内とする。とにかく続けた。
全部で50個ほど作った。題名は「トリミングシティ」だ。

村上はなのInstagramはこちら

6) 本にまで発展した

しばらく経ってからのこと。
手を使って自主制作したので、また手を使ってなにか作りたくなった。そこで、作品集としてまとめることにした。
折り紙と同じサイズの正方形。紙に刺繍糸を通して手製本。
極めつけに2ページほど、ビリビリと手で破ったページを作った。紙を切り貼りして作った「トリミングシティ」なのだから、紙であるページもビリビリした。30冊全て違う表情になった。

本の完成形はこちら

現在は下記のお店で販売中☟
MOUNT TOKYO
nuunu KYOTO
村上はな Webショップ

スマホを見ながら歩く人が多い。何度ぶつかりそうになったことか。
街はすばらしい景色ばかりなのに、小さな画面ばかり見てどうするのだろう?
歩く時くらいは前を見よう。あなただけのビビビッ!がそこにある。そんな思いで作った。

最後に

恥ずかしながら、自主制作のプロセスを記してみた。
制作は探究心がないと続かない。少々凝り性で、少々オタク気質の方が向いているのかもしれないと思った。
そして、完璧を求めない。「完璧になったら」と言っている間は、なにも発表できない。
成長するかぎり、完成はない。悪く言えば、いつも未完成な作品を作っている。でも、その時の精一杯で制作しているのは事実だ。
制作と発表を繰り返しながら、時には批判を浴びて、以前よりも納得するものを作ればよいと思っている。

そんなこんなで、今日もなにかを作って、研究しているのだろう。


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