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ブドウの均一熟度がワインの質となる

集中講義と銘打っときながら忘れたころにしかリリースされない7回目です。

実は6回目まではある程度書けていた状態で順次リリースしていたのですんなりと行けたのですが、テストと帰国等慌ただしくしており、着手する時間が取れませんでした。

6回目の最後にワイナリーの均一化ということについて説明するということを書き残していたので、今回はワイナリーの均一化についてです。


そもそも均一化は収穫時の熟度のムラがなくなることで、全体としていい質のワインができるということがコンセプトになっている。

1つの区画が均一化されていれば収穫日をずらせばいいだけなので問題ない。
しかし1区画内で不均一だと、未熟な果実や過熟の果実が混ざることになるので注意しなければならない。

一方でここ数回のワイナリー探訪でも書いたようにSBなどでは意図的に熟度の不均一さを利用することもある。片側除葉はその一番いい例だろう。

それはそうと本題である熟度の均一化というものに焦点を当てていく。
どうやって全体の均一化を図るのだろうか。

樹冠全体の熟度の均一化を見てみる。

まず全体の均一化がなされていないと、収穫時に未熟のブドウを採ることになったり、取り除いたりしなければならなくなり、それが時間や人手のロスとなったり、収穫の判断を鈍らせたりする。

例えば東側に面しているブドウの成熟が西側のブドウより遅かったり、水はけが悪く樹勢の強い箇所で遅かったりといったことがこの不均一を生む。

こういった例では東側が遅いのであればそちらだけ除葉して温度を上げてあげるといったアプローチもできるし、樹勢であれば今までに述べてきたように芽の数を増やして負荷をかけてあげるといったこともできる。

今まで取り上げてきたものであれば台木、挿し木品種、クローンというのも土壌の養分動態や水分保持能を参考にすると均一化に寄与しうる。

またここで少し「カバークロップ」というものにも触れておきたい。

カバークロップはブドウの列間に「意図的」に生やした植物のことである。

カバークロップには色々な種類があり、目的に応じて使い分けられるが、基本的には栽植密度の稿で話したのと同じ原理で、「競合状態」を生むことで樹勢を抑えるというのがコンセプトだ。

これによっても均一化に近づけることができる。

しかしこのカバークロップというのは意外と曲者で選定や栽培に気を使わなければならない。

例えばブドウのヴィレゾン後の水分過多を避けるためであれば、その時期に水分要求性が高いような品種のものを選ばなければならない。

また背丈が高いと影が増え、ブドウの成熟に影響するので、そこも考慮しなければならない。

やせた土地であればマメ科植物の空気中からの窒素固定なんかも考慮にいれるといいだろう。

これらのカバークロップを栽培したのちに鋤き込むか、畑の外に持ち出すかでも随分と翌年以降の土の組成が変わってくる。

病害を減らすこともカバークロップの重要な役割だ。
これはブドウに限らずだが、線虫という虫が土壌中に存在し、植物の根腐れや根こぶを引き起こす原因になっている。

その線虫の数を減らす効果のあるカバークロップというのも存在しており、それは一般的に休閑地に使われ、半年から数年というスパンで栽培される。

そして病気を減らすことは均一化という意味でも大事だ。
病気が増えその樹を取り除くことで、ブドウ樹の列の中にスペースができる。
それはつまり近隣の樹の利用できる養分と水の量が増えることに他ならない。

ただ先に述べたように線虫害を減らすカバークロップは休閑地につかうものが多いので、上記のような状態の畑に直接有効なわけではないが知っておいて損はない。

とかくカバークロップは使えるかもしれないと思ったときにどんな種類があるかというのを調べてみるといいだろう。
今私の手元にある冊子"Cover Crop Management"にも30種ぐらいは載っている。



このように均一化に寄与する取り組みは色々なものがあるが、基本的には畑のMicro Climateの不均一こそが畑のブドウの不均一だと思えばいい。

繰り返しになるが、気温や日照の不均一であれば、除葉やgreen harvest(ヴィレゾン前の小さい房を取り除くこと)などが有効だろうし、土壌の水分、養分の不均一であれば、カバークロップや台木、芽の数などによって調節することができるのである。


栽培集中の最後の稿にしてかなり中途半端で曖昧な記事になってしまいました。

ただこれを一旦終わらせないと他のことも書けないので、これで栽培集中講義は一度締めさせていただきます。

集中という形でやったのは自分自身が復習したかったからというだけなので、今後も単発で栽培に関することも随時更新していけたらと思います。


私事ですが、これから修士研究に入っていきます。
研究課題は「メルローの違う栽培管理法におけるIBMP(イソブチルメトキシピラジン)の動態と量」といったことをやります。
その詳細な結果は規定で公開できるかはわかりませんが、簡単な結果はお伝えできればと思っています。

そのためnoteとしてはなかなか更新できないこともあると思いますが、ご了承ください。

これからもワインに関する記事をuploadしていきます! 面白かったよという方はぜひサポートしていただけると励みになりますのでよろしくお願いします。