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ブラック企業にいた経験から、離職しないための施策を考えてみた

びっくり退職

「びっくり退職」と言う言葉を聞いたことはありますでしょうか。
昨今、空前の売り手市場、SNSの普及などにより、大きく市場が変化しました。

・日ごろから精力的に働いている
・自己研鑽に励んでいる
・社内のプロジェクトにも積極的に参加している

こんな人が突然辞めると言い出して、マジでびっくりする。そんな退職が昨今増えており、「びっくり退職」と言ったりします。

あぁ、せっかく育ってきたのに…
若者の離職に頭を悩ませる企業のトップや人事担当者も多いはず。
何を隠そう、私もその中の一人なのですね。
採用するのにも苦労しているのに、離職に拍車がかかればジリ貧です。
はぁ~(クソでかため息)

離職に歯止めをかける事が正解とは思いませんが、若者がどのように考え動いてるのか、それがわからないままにして退職を眺めているのだとしたら、それは大問題です。
既に40歳の私と今の若者との間には大きな考えの差があるのは当然の事。
自分の20代の頃はどんな考えで仕事をしてきたのか?
どんな違いがあるか考察していこうと思いました。
なかなかほろ苦い思い出なのですが…

ブラックな思い出

ブラックな体質

前職はブラック企業と言っても差し支えないほど、だいぶ過酷な労働環境におりました。
※現在はオフホワイトな企業でぬくぬくブログを書いています。

まず最初1,2年は飛び込み営業。給与は完全歩合制で、成績を上げないと給料は上がっていかないシステムでした。ホワイトボードにでっかい棒グラフがあり、ノルマを達成しなければ、終礼で上司から皆の前で叱責されるという、もう絵にかいたようなごりごりの営業会社でした。

最初は飛び込みだけで、売り上げは上がらないので、1,2年はとにかくその叱責に耐えるというのが一つの任務。

また営業として芽が出なければ、自己都合の退職を促される、いわゆる「追い込み」をかけられることもありました。
10人いた同期も3年後には3人になっていましたね。(この3人は今でもよく会ってます。戦友ですね。)

しかし初めて就職した会社ですから「会社というのは、そういうものだ」と思いこみ、とにかく耐え忍んでおりました。
そんな地獄のような環境でも、3年ぐらいすると、徐々に慣れてくるんものなんですよねー。叱責されても鼻ほじです。

時間が経てばそれなりに仕事ができて来るもので、成績も少しずつですが、上げってきます。
一度だけ、成績優秀者ベスト5に選出されて、高級旅館のチケットを家族の人数分もらうという事がありました。
時々全員参加のイベントを行うのですが、だいたい高級中華の店やらクラブで行っていました。
厳しかったですが、とにかく羽振りが良かった。
こういうことができる会社への誇り、やりがいに似た何かを感じるようになってきました。
にんじんをぶらさげられた馬の完成です。

死ぬほどの忙しさ

まぁこれならこれで楽しくできそうじゃんと、思ってきた矢先、新たな問題が起こります。
とにかく忙し過ぎました。

営業なので平日の日中帯は営業活動。
図面などは外注すると費用がかかるため、夜中に自分で図面の作成。
内装業の特性上、休みに現場に出る事もしばしば。

たまの休みも、現場から電話がかかってくることも結構ありました。
だんだんと電話の音の幻聴もきこえてくるほど、心の平穏が失われていく感覚をひしひしと感じていました。
心が亡くなると書いて『忙』
うまい事言いますねー、って言うとる場合か。

急な転機

…とそんな生活を続け、30歳になってすぐぐらい。
家にデータを持ち帰っていつものように、夜中に図面を描いていた時の事。
USBの容量がパンパンになっていたことに気づか図面を保存した瞬間。

残念ながら全データは消えました…
デンデンデンデンデンデンデンデンデーンデン♪

わかったあなたは昭和生まれ

色々復元を試みましたが、完全にダメでした…
どうしようもなくなるとホモサピエンスは、リビングに行ってウィスキーを飲むという習性があります。

絶望を酒で洗い流していると、日ごろの疲れもあり、寝オチしてしまいました。

翌朝、ソファで寝ていると、妻が起こしてくれました。
は!まずい!!早く図面を何とかしなくては!!と仕事場に戻ろうとすると
妻が一言。

「そんなに大変なら、辞めたら?」

!?
ちょっと何言ってるかわからないんですけど

30歳。結婚したて。マンションも買ったばかり。
自分が働かなくて一体どうするのか?と…
すると、けろっとした顔で
「別に数か月ぐらいわたしが面倒みてあげるよ!」と言うのです。

かっこよ!!
妻は男前だった!

なんというか、辞めるという選択肢があったことに、その時初めて気づいたような気がしました。
他の選択肢が黒く塗りつぶされていたんですね。ちょっと心の病気に近いものがあったのかもしれません。

最終的には、会社に保存してあったデータで図面を書き上げることはできたのですが、その日中に上司に退職の意向を伝えました。
急な事で周りは驚いていましたが、案外あっさり受理してもらいましたね。

その後しばらくして、以前仕事で繋がりのあった今の社長に会って、全く畑違いのIT業界に入りました。
こんなIT未経験で、伸びしろもわからん30歳を拾ってくれて、社長には感謝ですわ。

なぜ辞められなかったのか?

こんな事を書いていると、もっと早く辞めるべきだったなと思うのですが、
その時の自分の気持ちを振り返ってみるとこんな理由があった気がします。

1.やりがいに似た何か

ノルマは確かにきつかったですが、忖度の無いわかりやすい評価でもありました。成果を感じる事ができるグラフは、上がると麻薬のように疲れがいっきにふっとぶ快感があります。そこに給与や高級旅館のチケットなどの目に見える報酬があると、またあの栄光を手にしたい!という気持ちで、モチベーションを維持できた気がします。

しかしノルマが常に頭から離れない状況を作り出していたので、ごりごり心を削っていたというのも事実です。
ですからこれは私にとって「やりがい」ではなく「やりがいに似た何か」であり、当のやりがいとは似て非なるものだったのかもしれません。

2.脳の錯覚

友人に仕事の話をすると、当然のように「それブラックじゃね?」って話になります。
ブラックだなぁとは自分でも感じてはいたのですが、そういうことを他人に言われると納得感より先に腹立たしさの方が勝ってきます。
会社を悪く言われたというより、ここまでの自分の苦労と成果を馬鹿にされたような気分になるんですよね。

テレビでこんな実験があって、まさにこれだわと思ったのが、
ひたすら輪ゴムを長く繋げ、その後に報酬として3000円と500円を上げるという実験を2グループにわけて行います。
すると報酬の多いグループは退屈だったという答えが多かったのですが報酬の低いグループは楽しかったという答えが多かったという結果になったというものです。
報酬の低い方は、納得行かない感情が生まれ、これが認知的不協和になり、なんとか自分を納得させようとどちらかの考えを変えてしまうという原理が働くのだそうです。自分で自分を納得させるように考えを変えてしまうんですね。まさにこんな原理が働いていたのかもしれません。

正解一受けたい授業でやってた気がする…

3.自分の意思が無い

よく考えると、なぜそもそも耐え忍ばなければならなかったのか?
私たちの時代は、ある程度見えない将来のレールが敷かれていたような気がします。選択肢が限られていたとも言えるかもしれません。
求人も今と比べ物にならないぐらい少なかったですし、「こういう仕事をするなら、この会社に入る」みたいな。
総合職は当然、適正と関係の無い仕事をしても、何も疑問に感じません。長く忍耐していれば、いつか出世できるはずだと盲目的になっていました。
無自覚に、考えることを辞め、会社の考えに依存して、それが正解だと、ゾンビのようにつき進んでいたのです。

会社にとって大事な事

若者を取り巻く現状

若者が、すぐに転職を選択できると言う事は、それだけの選択肢にあふれており、それ故自分で考えて決断することができると言う事です。
自分の人生を人任せにしていない。惰性で仕事をしていない。サトリ世代と揶揄される中に、そういった自立した精神が宿っているようにも感じます。

もし会社として昔の私のような働き方に期待して
「なんとなく惰性で続けてくれるだろう」と考えているのだとしたら、それは完全に頭お花畑ですよね。
でも私より上(40代以降)の人間が、そのような考えを少なからず持っているので、退職された時にびっくりしているということなのかもしれません。

離職をさせない秘策

では離職させないようにするには、どうすればいいか?

それは、結局「やりがい」じゃないかなと。
「いやいや、やりがいであなた痛い目みましたよね?」と言われると、まぁその通りなのですが、事実「やりがいに似た何か」が退職を選ばさなかったというのはあったと思います。私の場合は健全では無かったですが、成長や達成感は、過酷な環境でも楽しいと感じるものです。

今の会社に入社してからは
残業はほぼ無し。土日をも休める。きついノルマも無し。
さぞ満足したろうと思われるかもしれませんが、決してそんな事は無いんですよね!(さっきの社長への感謝はなんだったのかって感じですが…)
結局どこに行っても絶対に不満に感じる事はあります。
そんな不満を帳消しにするくらいの「やりがい」を持たせられているかを真剣に考えなければ離職は止められないのではないでしょうか。
健全な労働環境を整える事は当然なのですが
人の考えは千差万別で、どんな企業でも、環境だけでは、人によってはブラック企業と感じてしまう可能性があります。

会社の「強み」や「こだわり」という特色をしっかり持ち、そこに共感する人材が集まれば、ブラック企業になる可能性を低くしていけるのではないでしょうか。

今の会社は楽しいか

ちなみに皆さんは今の会社は好きですか?
即答できない管理職の方がいたら、そこが離職の原因かもしれませんよ。
ぶっちゃけ私も「まぁ嫌いではないけど好きかと言われると もごもご…」と切れ味の悪い回答をしてしまいそうです。
自分がつまらなそうなのに、相手に好きになってもらうことはできないですよね。相手を変えようとしても、うまく行く事の方が少ないです。
まずは自分が楽しく仕事をすること。きっとその楽しさは伝染していくものだと思います。
『今自分は楽しく仕事ができているか?』
『出来てないとしたら、何をすれば変わるのか?』
そんな事を考えるのが離職を減らすための第一歩かもしれません。

会社を大好きと言えなくてもいい。
「うまく言えないけど、なんか悪くないんだよなぁ」
従業員がこう思ってくれてたら、めっちゃホワイトな会社って言えるんじゃないですかね。

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