母の日が近づく5月初旬。

人は「母」という言葉に、誰を思い浮かべるのだろうか。

私の人生の中には、母と呼べる人が、3人存在する。

すなわち、産みの母である実母、父の再婚相手の継母、夫の母である義母の3人だ。

自分の中では、3人とも個性豊かで、3人とも私にはない魅力を持っている素敵な女性だ。

今日はこの3人について、思うところを綴ってみたい。

少し複雑な部分があるため、読みづらい点があるかもしれません。

何卒ご容赦ください。

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産みの母である実母は、一言で言うと、高学歴の教育ママ。

日本の最難関と言われる大学を卒業しているから、まあ頭は良かったのだろう。

そして、そこまでやるか！というほどに、子どもの成績に一喜一憂する母だった。

今思えば、母なりの愛情だったと思う。

母は、大学受験を制して、成功への切符を手にした部分があった。

そのため、良い教育を受けて、一流大学に合格させることが人生の勝利だと信じていたようだった。

私は子どもながらに、「そんなものかなあ」と思いつつ、学業以外の部活や芸術にも興味があったので、少しタイプは違っていたように思う。

正直なところ、成績が落ちて部活を辞めさせられないように、勉強を頑張っていた時もあった。笑

そんな高学歴で勝気な母にも、弱みがあった。
頭が良いのとは反対に、家事や育児には苦手意識を持っていたのだ。

事あるごとに「勉強以外の子育ては苦手だ」と公言していたように思う。

これが、彼女のプライドをいつも傷つけ、悩みとなっていた。

家事や子育てへの苦手意識が極めて強い。
なのに、子どもの出来を自分の出来のように気にしすぎるのだ。


そのため、私が悪い成績を取ると泣いたり怒ったりするのは、少し大変だった。

私は亀のような歩みだから、比べられても仕方ないのだけれど、生まれつき頭が違うのかもしれない…と思う事も多々あった。

私が悪い成績を取ると母が泣く。

「ママ、大丈夫だよ」

と私が慰めるという、謎の構図もよく見受けられた。


期待通りの成績を取れなくて申し訳ない。

もう少し頭が良くなれなくてごめんね。


いつもそんな思いでいっぱいだった。　



今思えば、学生時代の成績なんて、そんなに気にしなくて良かったのに。

さらに母は、家事への苦手意識からか、
「将来お嫁に行った時に、実家に戻されないように」
と私には料理や裁縫を身につけるよう推奨していた。

自分が料理は苦手だから、娘に作ってもらおう……という魂胆も透けて見えた気がする。笑

おかげ様で私自身は、料理に関しては母よりはできるようになったと思う。

ただ、勉強は……というとハッキリは自信はない。

母とは専攻科目が違うので、そもそも比較対象にならない、という理由もある。

また、それ以上に、「ママは賢い人」というイメージが幼少期から刷り込まれていて、なかなか払拭することができない。笑

まあ、どっちがどう、とか争う気はさらさらないのだけれど。

とにかくものすごい教育ママであったことは否めない。

母がいたおかげで、勉強をせざるを得なかったことには感謝しかない。

最近では会う事はほぼないが、
「子どもにプレッシャーをかけ続けたことについては申し訳なかったと思っている」
と後々述懐していた。

母となった今なら、自分の母の苦しみが、少しずつ分かってきたような気もする。

母の苦しみに寄り添いきれなかった分、今度は自分が、子どもの気持ちに寄り添っていきたい。　


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二番目の母は、父の再婚相手の継母。

離婚時、私と下の弟は父の側につくことを決めていたから、父が再婚するとなった時に、継母と同居することは必須だったろう。

歳がやや若いのに、本当によく私たちを育ててくれたと思う。

ただ、この母もやはり高学歴で、仕事ができる人だった。

ちょうど私たちも大人になりつつあったので、子育て真っ最中でないのが良かっただろう。

法学部出身で、リーガルマインドのある、正義感の強い女性。

私たちを叱る時も、言っていることは全て正論。

「まさしくその通りです！」
と正座をして謝罪したくなるほど、いつもその判断はダントツだった。

ただ、それだけではうまくいかないのも人情というもの。

リーガルマインドだけでは裁ききれないような人間関係の諸問題には、ご苦労されていたように思う。

私に反省点があるとすれば、「おかあさん」と呼べなかったこと。

歳が実母よりも若かったこともあるし、どうしても抵抗があって、下の名前に「さん」付けで呼び続けてしまった。

10年以上も一緒に過ごしたのに、「おかあさん」と呼んでもらえないことには、一抹の寂しさがあったかもしれない。

でも、学生時代の再婚だったから、私もどうしても上手く移行することができなかった。

「おかあさん」とは呼べなかったけど、本当に清らかで優れた女性でした。

父が亡くなってからは、なかなか会う機会がないけど、今でもとても尊敬しています。


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そして、3番目の母である、義母。

結婚した今となっては、この「母」が1番近く、日々関係している存在だ。

生まれも育ちも私とは違うのは当たり前だが、私が今まで知ってきた母親像とも大きく異なる。

義母は、いわゆる専業主婦道40年。

義父とは若い頃にお見合い結婚だったため、おそらく社会で働いた期間は極めて短かったのではないかと思う。

料理にはこだわりを見せており、味噌は手作り、ご飯も鍋で炊き、だしは昆布から摂る、という本格派だ。

独自の美学があり、食品添加物の入った冷凍食品やレトルト食品は一切受け付けない。

炊飯器や電子レンジも使わず、火を使った調理が1番身体に良いと信じている。

言ってみれば、料理嫌いだった私の実母とは真逆のタイプだろう。

40年の間、すべて手作りにこだわり、家族のために愛情ご飯を作り続けてきた義母。

その姿から学ぶことも多いし、尊敬すべき女性像の一つだ。

一方、私の料理はと言うと、「時間を資源」と考えている部分があるため、冷凍食品でも時短になれば重宝することもある。

たとえば、冷凍マッシュポテトなどは、3分で解凍でき、シーチキンとマヨネーズを混ぜれば、すぐに「ポテトサラダ」が完成する。

冷凍ほうれん草も、フライパンにバターと醤油を入れてそのまま炒めれば、「ほうれん草のバター炒め」になるので、忙しい朝には重宝している。

だしも昆布から摂ることもできるが、天然の出汁パックでも十分美味しい味噌汁ができると思う。

こうした食文化の違いから、しばしば義母とは食育について議論になることもある。

基本的には、義母の大切にしてきた食へのこだわりを尊重したいため、義母がいる時にはご飯は鍋で炊き、電子レンジも使わないようにしている。

ただ、義母が見ていない時には炊飯器も使うし、レトルト食品も上手く織り交ぜている。

何せ、冷凍やレトルトの食品は、忙しい現代人のために、企業が一生懸命開発した商品でもある。

文明の知恵を上手く使っていくのもまた、共働き世代の生き方の一つではないだろうか。

そのため、子どもにはできるだけ手作りの食品を出しつつ、大人はレトルト食品でも、美味しいものは食べれば良いと考えている。

このように、料理一つとっても家庭によって文化が違う。

私の義実家寄りの結婚生活は、育った環境とは全然違う部分を要求されているかもしれない。

日々、こうして手作りの料理にこだわっている私を知ったら、きっと実母はのけぞることだろう。

「料理だけはちゃんとやるように言っておいて良かったわ」

と言うかもしれない。

力を入れた勉強の方は、

「そこまで大成しなかったわね」

と悔しがるかもしれない。


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このように、三者三様の母親と出会ってきた私だが、最近になり、一つの答えを導き出しつつある。

それは、「私は私であり、他のどんな母親像とも同じではない」ということだ。

実母に似ているとかいないとか、継母に似ているとかいないとか、色々と言われては来たが、結論としては、誰にも似ていないし、似る必要もない。

偉大なる3人の母を参考にしつつ、自分は自分らしく、全力で母親として生きる。

それがまた、子どもたちに対しても、誠実であると信じている。

彼らが大人になった時に、「母親」としてどのように形容されるか。

そんなこともあまり気にしていない。

大切なのは、今のこの一瞬、出来うる限りの創意工夫をし、愛情を伝え続けることだと思う。

極論を言ってしまえば、子育てにおいて最も重要なのは、勉強でも料理でもなく、
「そこに心からの愛情があったかどうか」
ではないだろうか。


母の日が近づくと、自分の人生でお世話になってきた3人の母への感謝が湧いてくる。

きっとみんな、自分なりの美学で一生懸命「母」として存在してくれていたのだろう。

皆さん、私を育ててくださり、ありがとうございます。

そして、母の日モードの街を通り抜ける度に、自分もまた母であることを実感する日々。

この時間が有限であることも、自分が完璧な母親でないことももちろん自覚している。

その上で、今日も大切な子どもたちと共に過ごせることに感謝している。

いつも本当にありがとう。

勉強も料理もそこそこなママだけど、愛情だけは精一杯伝えていきたいと思ってるよ。

ママのもとに生まれてきてくれてありがとう。

大好きだよ。


【完】

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※このエッセイは、クロサキナオさんのこちらの企画に参加しています！

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