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雑感83 讃美歌

 ある夏の日に、キリスト教系の学校へ見学に行った。案内された講堂では、生徒がパイプオルガンを弾いていて、音の調べとともに席に着く。空調が、じんわりかいた汗を消していく。
 渡されたパンフレットを見ていると、聴いたことがある音楽が流れてきた。音楽に合わせて、歌詞を思い出す。スマホでそっと検索したら、讃美歌だった。
 子どもの幼稚園がキリスト教系だったので、讃美歌にはいくつか馴染みがある。聴いただけでメロディの音階と歌詞がわかるということは、かつて歌ったことがあるのだ。
 声には出さないけれど、歌詞を心の中で歌っていく。歌詞はおぼろげにしか覚えていないけれど、メロディは覚えている。繰り返されるパイプオルガンの音を聴いていたら、涙が出そうになった。私は、パンフレットで顔を覆った。
 外国の風習や景色の中に、親近感があるものがいくつか私にはあって、もしかしたら過去の記憶に触れているのではないかと思うことがある。あくまで想像の範囲を超えないけれど、私は中世のヨーロッパで讃美歌を歌っていたり聴いていたりしたのかもしれない。それとも、パイプオルガンを弾いていたのかも。
 一度、パイプオルガンを弾いてみたい。そこでまた、過去の記憶のようなものに出会えたら、なんて思っている。



 


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