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『蝶がその手から羽ばたいた時』:心に残るエピソード‐バトンリレー企画


先日PCに向かって記事を書いていると…主人があからさまに

拗ねていた。

子供達や父(義理父)の事はコロナ体験記や他の記事で書いて顔写真を載せたりもしているのに…苗子は僕の事を書いてくれたことがない…

思いっきり拗ねている。。。

そんな時…お友達の立山さんからチェーンナーさんのバトン企画のバトンを受け取った。これは!!という事で、拗ねっぱなしの主人に笑顔を…

今回の心に残るエピソードは、
私と主人のエピソードをお届けしたいと思う。ふふふ。


§

『蝶がその手から羽ばたいた時』


23歳までの私を知る人は誰しも、私の恐怖症を知っている。
誰もが、多分「それ」を見るたびに私を思い出すくらい…

蝶々恐怖症

原因も理由も分からない。
物心ついた時から蝶々が恐怖であった。

小学校の理科の教科書…蝶が載っている頁は 全て母に白紙で覆ってもらい、それがハラリと剥がれようものなら教科書ごと投げ捨てる。

通学路に蝶々が羽休めをして居ようものなら…遅刻。
時には800m道を戻って横断歩道を渡った。

蝶を触った人には石鹸で3度は手を洗ってもらい、自分の体にとまろうものなら気絶する。

私の超恐怖症は酷いものであった。。。

遠目で蝶が舞う姿を見ているのはいいが、半径6m以内では私は凍り付く。
これが命尽きた蝶だったら、トイレに駆け込むくらいだった。
舞っていると恐ろしい、だからと言って命を奪われるともっと嫌だ。


それをいいことに私に蝶を近づけたり、命尽きた蝶を掃いた箒を見せつけたりする者が沢山いて、その度に私は恐怖と戦っていた。
中には、優しい人もいた。。。が、
優しさゆえに排除しようと物を振り回されると、もうその人には近づけない…
何とも厄介な恐怖症は、私を知る人ならば誰でも知っている程に目立っていた。
それは、遅刻した授業の先生もクラスメイトも…「蝶がいました」というだけで、、、「あぁーお前ならしょうがないな」と納得してもらえるくらいだった。


私の蝶々恐怖症を良く知る者でも呆れかえる

苦笑いが浮かぶ

厄介だとう表情や、ため息までも…

思いつくすべてのリアクションを23年間のうちで見つくしたような気がしていた。

自分でもなぜなのかが分からなかった。

芋虫や毛虫なら全然平気なのに、羽根が生えて美しくなった瞬間に、自分ではどうしようもないほどの恐怖が生まれる。
害もなく、儚く、美しいそれが
何故恐ろしいのか…。


私が23年間…戦い続けてきた恐怖を吹き飛ばした出来事。。。

恐怖を一瞬で消した者に出会った。


§


出会って、7日目…



彼は地面に降り立った一羽の蝶に震える私を見て

優しく微笑んだ。

笑う事もなく、呆れる事もなく。


彼は蝶に歩み寄ると、そっとしゃがんで人差し指を差し出した。


「Naekoは君が傷つくのが怖いんだ…

だからここじゃない静かな場所で羽を休めてくれないかな?」


そう蝶に呟くと、蝶は彼の細く長い指に歩み寄り

ゆっくりと指の上にその小さな体を乗せた。


そんな蝶を見て微笑むと、

蝶の羽に風を起こさない様にゆっくりと腰を上げる。

そして

蝶のとまる手を空高く掲げた。



羽根を数回ハタハタと広げ閉じ、

風を読みながら ふっと飛び立った蝶は

彼の言葉を理解したように、

誰も足を踏み入れる事のない 高く生い茂った草むらへと
ひらひらと飛んで行った。



この瞬間を私は忘れない。


蝶への恐怖も忘れ、私はカメラを彼と蝶に向けていた。


その時の写真


優しかった。

全てがまるまる優しさに満ちていた。

私の蝶への恐怖に対しても、

羽を休める蝶に対しても、

その空間が 時を止めたように暖かかった。


その時初めて、

蝶への恐怖が理解できたような気がした。



花から花へと飛び回る。可憐で美しくて儚い小さな生き物。
私には守りようがないくらいの小さな命。
羽根を痛めれば命尽き、
小さな風の動きで その行き先さえも変えられてしまう。
少しの衝撃で固い地面へ叩きつけられ
二度と甘い蜜を吸う事はない。。。

私は…蝶を傷つけるのも、傷つけられるのを見るのも嫌だったのだ。


「さぁ、蝶も君も安全だ…いこう」


海へと歩み出した彼の後ろ姿に、
自分の何かを救ってもらったような
そんな気がした。


その出来事からだった。

少しづつ、自分の中の蝶に対する恐怖を優しさに代えて行けるようになったのは。


蝶が目の前を通り過ぎる時には、じっと…
風を起こさない様に じっと。
蝶が肩にとまったときにも、花のようにそっとして。
すると、「ふぅー」と小さなため息を漏らすような声まで聞こえてくる。
そして、そっと
「気を付けてね…」そう語り掛けてあげる事が
生まれて初めて出来る日が来たのだ。

帰りのバスの中で…


§


人はそれぞれ恐怖と戦っている。
動物であったり、虫であったり、場所であったり、過去であったり…
些細な物から大きな物まで、その大きさも重さも全く違う。
それでも、「恐怖」という形である事には変わりはなくて
それぞれに戦っている。
それを鼻先で笑うことも出来れば、
認めて受け入れる事だって出来る。
そして、彼…今の主人のように、大切な何かを掴ませてあげる事だって。。。

よく恐怖とはまず 向き合うことが大切だと言う。
が、向き合うことが出来ないから恐怖なのであって、
だからこそ その根っこにあるものが何であるかも掴めない。
自分ではできなくとも、
この広い世界の何処かに
そのきっかけを与えてくれる あなただけの人が必ずいるはずだ。

その人に出会えるか出会えないかではなく、
そんな人が必ずいるのだと…
そう信じて、自分の中にある恐怖さえも温め

そして、他の人の恐怖に寄り添えるような
そんな人が沢山増えてくれることを願っている。


私は私の「人」に出会うことが出来て、最高に幸せだ。

今の主人と私


時が経ち…私たちの間にできた4人の子供達は
優しさを知る子供達に育っている。
家の中にいる蜘蛛、どこからか入り込んだ天道虫にバッタ…
必ずそっと手に取り外へ逃がす。
巣から落ちたリス、羽根を痛めた梟、
しっぽを痛めた蛇、飛ぶことを躊躇する小鳥…
近所の人にホースで水をかけられ逃げるようにしてガレージに震えていたコウモリ…
全て小さな手の中で優しく包む事の出来る子供達だ。

そしてその手から私も蝶を受け取ることが

今は出来る。

(ヘッダーは娘の元に降り立った蝶)


飛ぶ力がなかった蝶、羽休めの蝶達、死にそうな芋虫から蝶へ…そして飛べなかった野生の小鳥
私と長男のカメちゃん:)、巣から落ちてケガしたリス…三男と次男は自分達の下着を引っ張り出して即手作りの巣を作り上げた。池を見失ったカエル、レスキューされた蛇。
震えていたコウモリ、穴に挟まった天道虫、これは長男のビネガルーン:)、しっぽを痛めた蛇。


でも…

ロブスターを調理するママをエビ殺しと…
泣きながら叫ぶのだけは…
勘弁してほしい。。。ふふふ。



おわり

***********

チェーンナーさんの素敵なバトン企画を…

立山さんから頂きました:)


という事で…このバトンを渡そうと思うのですが…
全然お話をせずにお渡ししても 受け取ってくれるかしら?

私のお友達ゼロさん:)彼女のエッセイは本当に心に呼びかける素敵なメッセージが詰まっています。彼女を知らない人はいないと思うのですが、でも、読みに行くきっかけがなかった人がいたとしたら、これを機にゼロさんの言葉達を心に吸い込んでもらえれば嬉しいなってそう思います:)

ゼロさん!!引き受けてくれるかな?ふふふ。
いつものエッセイでそのまま大丈夫だって思うのですが…どうでしょうか?
もしも負担が大きかったり、スタイルが…という場合にはチェーンナーさんにバトンをお返しすることも出来ますので、
一応 バトンを差し出させていただければと思います:)


実は、主人とのエピソードをかこうと思ったのが、ゼロさんのこちらの記事を読んだからなんです:)

主人と出会って、デートではなかったのですが、サーフィンを教えて欲しいとのことで、メキシコの海岸まで5時間バスに揺られていった場所での蝶々とのエピソードです:)


読んでくださり、どうも有難うございました:)


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