最後の住人たち

路地のあちこちで、まだ避難していない最後の住人たちが目覚め、うめき、ため息をつく。
未婚の女性たち、娼婦たち、六十歳を超えた男たち。

「すべての見えない光」 Anthony Doerr




戦時下のフランスで逃げ遅れる、"最後の住人たち" の立場は、どの国でもいつの時代でも変わらない気がする。



遠藤周作の「海と毒薬」で未婚の看護師は

戦時下、ひとりで部屋に寝転んで

本当に戦争が起きているのかどうか考える

彼女と戦争は、まるでまったく関係がないみたいに。




人は、自分がこの "最後の住人たち" になるのを恐れる。



本当に怖いのは持っているものを失うことなのか。



だけど自分がこの"最後の住人たち"なら
戦争などまったく怖くないだろう。





すごい子だ、と彼は言う。
百万年たっても一緒にいるからね。

「すべての見えない光」 Anthony Doerr





※引用、Anthony Doerrの本作は2015年ピュリッツァー賞受賞作。第二次世界大戦下のドイツとフランスを描く。

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