大きな数字に騙されないための比較の習慣
起業前の学生時代に読んだ、ハンスロスリング他著のFACTFULNESSという本が急に思い出された。早速本棚から引っ張り出して久しぶりにもう一度読んだ。
当時は気にもとめなかったが、経営の真似事をしているうちに感覚が変わったのかある章が気になるようになった。
まず、この本の前提条件として世界の人々の貧富の差を1日の購買力平価でレベル分けしている。
レベル1: 1日1~2ドル
レベル1の国では裸足で数時間かけて泥水を汲んで水を調達する。世界におよそ10億人いる。コンゴ民主共和国、ソマリア、アフガニスタン、北朝鮮などが当てはまる。レベル2: 1日2~8ドル
レベル2の国では水の調達に自転車を使えるようになる。冷蔵庫を使えるほどは安定していないが、停電がなければ電球の明かりで学習を行える。世界におよそ30億人いる。インド、ナイジェリア、ベトナム、ケニア、ミャンマー等レベル3: 1日8~32ドル
レベル3の国では、水を外に汲みに行かなくても水道管から水を調達できるようになる。レベル3まで来ると、病気を治療しても貯金ができるのでレベル2に逆戻りする心配が格段に減る。
中国、ブラジル、エジプト、インドネシア等レベル4: 1日32ドル以上
蛇口からはお湯が出て、学校には12年間通うことができる。旅行のときは飛行機に乗り、車を買うこともできる。
日本、アメリカ、ドイツ、韓国、スペイン等
※2017年時点の情報
他にも有用な統計をギャップマインダー財団はWebサイトにて公開している。所得レベル別に人々がどのような生活をしているのかも動画で表していて面白い。
本の内容に戻る。
過大視本能
著者は、人は一つの実例や数字に捉われてしまうことがあると伝えている。そのせいで多くの人が限られた時間や労力を無駄にしてしまう。
著者の上げている実例で、政治家がレベル1、2の医療を改善しようとしたときに病院を建てることがある。しかし、レベル1,2にいる国では、病院のベッドで医者が子供の命を救うことは比較的少ない。これはベッドの数や医者の数という分かりやすい指標に捉われた結果病院を建てて医者を読んで病床数を増やすという対策に資金を投じてしまう。[1]
本当は子供の生存率の伸びる要因の多くは、病院の外にある。地域の看護師や助産師、そして教育を受けた親たちが講じた病気の予防策が効果を上げている。特に母親の努力が子供の生存率に対する貢献は大きく。子供の生存率が伸びている要因は、母親が読み書きできるということが上昇率の約半分を占める。
そのためレベル1,2に真に有効な対策は新たな病院を建てることでなく初等教育、看護師教育、予防接種を充実させるという施策だと辿り着ける。
過大視本能を回避するための習慣
本書がある特定の数字のせいで時間と労力を無駄にしないためには以下の3つが有効だと説いた。
数字を比較して考える。
パレートの法則をたびたび適用する。
割り算を使う
この中で特に人がやりがちなのが1を使っていないことだ。それは一つの数字だけに注目してしまうことである。
例えば日本の電気自動車の販売台数の伸びは2022年時では前年比150%で伸長している。[2]我が国の電気自動車は急速に発展している。
このように言えば、さも日本では電気自動車がたくさん走っているような情景が思い浮かべられるが、実際には2022年のEVの新車販売は約3万1600台で新車販売台数222万台全体の1.42%である。
このようにいくつかの関連する数字を集めて比較すると真実により近づける。
[1]
逆に売ることがうまい会社はソリューションの質が低くても過大視本能を使って問題とはあまり関係のない数字を使って商材を売り込む。しかし、もちろん問題の本当の要因とは関係のない数字の改善をした商品を導入しても効果が上がらないのは明白だ。
[2]
東京電力エナジーパートナーWebサイトより引用2023/12/1
メモ
世界の人口増加を食い止めるには今レベル2にある国をレベル4に引き上げることで達成できる。つまり多くの人が豊になり、教育や避妊を全員が行うようになれば人口増加は抑えられる。
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分断本能2項対立、坂本竜馬、攘夷、佐幕派
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