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展覧会レビュー:東京藝術大学大学美術館「"買上展"藝大コレクション展2023」

興味が引かれる展覧会名かつ、今まで藝大に行ったことがなかったので、この展覧会に行きました。その感想を書きます(約2,300文字。写真約30枚)。

結論から言うと、良い点は、1)色々なジャンルの作品を見られる点、2)藝大の歴史、「買上」の制度が興味深い点でした。おすすめ度は★3。藝大に行く機会は多くない(?)ので、「買上展」は良い機会だと思います。

東京藝術大学とは

芸術系の大学で一番入学が難しいと聞いたことがあります。
私が思いつく主な藝大出身のアーティストといえば、横山大観、菱田春草、高村幸太郎、藤田嗣治、萬鉄五郎、青木繁、東山魁夷、高橋由一、千住博、村上隆などでしょうか。
多摩美には行ったことがあるので、藝大にも行きたいと思っていました。

場所は、上野の東京都美術館や東京国立博物館の裏です。そのため、存在感が薄いのか、お客さんは多すぎずスムーズに鑑賞できました。来ている人の年齢層は若干高めの印象でした。

上野公園入り口にある看板
東京藝術大学大学美術館の入り口
東京藝術大学大学美術館のロゴ。どういう意味か調べても分からず。「M」を崩したのかな?

"買上展"藝大コレクション展2023

「買上」とは…

「買上」とは、東京藝術大学が卒業および修了制作の中から各科ごとに特に優秀な作品を選定し、大学が買い上げてきた制度です。(略)本学が所蔵する「学生制作品」は1万件を超えますが、本展ではその中から約100件を厳選し、東京美術学校時代から現在にいたる日本の美術教育の歩みを振り返ります。

公式サイト

”買上”と初めて聞いたとき「親切な大学だなぁ」と感心しました。しかし、よく考えると、「将来に大成するアーティストの卒業制作を買い取っておけば、大学のプレゼンスが今後上がる」という都合の良い制度のようにも思いました。生徒側からすると名誉なのか、自分で作品を持っておきたいから返してほしいのかどっちなんでしょうね。

藝大の変遷や、「買上」という制度自体を知ることができたのが一番の収穫だったかもしれません。卒業制作がメインのため超有名作は多くありませんが、ファインアートに加えて、ミクストメディアもあるため、色々な作品を鑑賞できるのはお得な気分でした。ジャンルがバラバラでも「買上」というテーマがあるため、全体のストーリーに違和感はなかったです。

第1部「巨匠たちの学生制作」

第1部は、撮影不可が多かったです。(全部を撮影可能にしてほしい訳ではないですが)買い上げているのなら、権利は藝大側にあるので、規制はかからないのではないのか?と単純に疑問でした。
また、ガラスの反射がきついのが気になりました。(写真が撮りにくいからどうにかしてくれ、という訳ではなく)鑑賞していても違和感を感じるほどの反射でした。MOA美術館のような反射を抑えるガラスを使うなどの取り組みを参考にしてはどうでしょうか。国立大学なので、展示スペースに設備投資をするハードルが高いのでしょうか。

第1部の入り口正面の様子。ここで人が滞留しがち
板谷波山「元禄美人像」
横山大観「村童観猿翁」。横山大観は日本画卒業の第1期生。彼がいなければ、千住博や村上隆はいなかったのだろうか
菱田春草「寡婦と孤児」。岡倉天心の推しにより主席になったとか
青木繁「自画像」。色使いやタッチが「海の幸」っぽい
朝倉文夫「進化」
石田英一「銅製群兎置物」。一枚の銅板から作られている(すごい
赤松麟作「夜汽車」。床に落ちたみかんの皮やゴミがリアルかつコミカル。東京ステーションギャラリーで開催した「鉄道と美術の150年」で展示された作品
吉田五十八「レクチュアホール」
細部の描き込みが美しい。こんな卒業制作もあるんだと驚き
明治26年の卒業証書。彫刻科の第一期生のものだそう

そのほか、東山魁夷「スケート」がかわいくて印象に残りました。

第2部「各科が選ぶ買上作品」

第2部の入り口。撮影禁止はほぼない
荒井由美「ひろがる」。どことなく可愛い
丸山智巳「千一夜」。「ヴィーナスの誕生」のゼフィロスみたい
上村豊「早佐織物工場」
どれも同じような和紙に見えるけど、順番が決まっているみたい
鎌田友介「Other perspectives -The entrance-」。こんな大きい作品を大学に保存するのは大変そう
初めて見た「踏んでもいいよ」という注意書き
鑑賞者は踏まずにはいられない
橋本和幸「時空の顕在化」
なんとなくドラゴンボールのジャネンバを彷彿とさせる
越田乃梨子「壁・部屋・箱ー破れのなかのできごと」。シンプルな発想だけど面白い。森美術館にありそうな映像作品

第2部で驚いたのが、「作曲」部門で楽譜だけが展示されていたこと。その風景は撮っていないが、とてもシュールな光景でした。

チケット。開催期間は短め
買ったポストカード。髙山辰雄「砂丘」:作品の撮影は不可だったが、一番印象に残った。どこから見ても目線が追ってくるような不思議な作品
国際子ども図書館(安藤忠雄の設計)もいつか行ってみたい

今日の美術館飯

ミュージアムカフェ 東京藝術大学大学美術館 - 紅茶のシフォン ドリンクセット (¥1,000)

補足

展覧会名:「買上展」藝大コレクション展2023
場所:東京藝術大学大学美術館
おすすめ度:★★★☆☆
会話できる度:★★★★☆
ベビーカー:ー
会期:2023年3月31日(金) - 5月7日(日)
住所:〒110-8714 東京都台東区上野公園12-8
アクセス:上野駅から徒歩約10分
入場料(一般):1,200円
事前予約:不要
展覧所要時間:1時間〜2時間
混み具合:ほぼストレスなし
展覧撮影:一部撮影不可
URL:https://museum.geidai.ac.jp/exhibit/2023/03/collection23.html

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