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#10『恋するザムザ』村上春樹

10日間読んでnoteに投稿してきた『恋しくて』、最後は訳者自らの作品が収録されていた。

『恋するザムザ』は、読み始めてすぐにカフカの『変身』がベースにあることが分かる。
ザムザって、グレゴール・ザムザのことだったんだ。グレゴールは覚えてたけれど、ザムザって覚えていなかった。
『変身』は学生の頃読み、その内容がこれまでにないものであったから覚えている。けれど、細かい部分は朧気だ。村上春樹も「遥か昔に読んだぼんやりとした記憶を辿って」書いたとのことだ。

『恋するザムザ』は、あの毒虫に変身してしまったザムザの後日譚とのことだが、「恋する」となると、もしかして妹に恋? なんて思ったりした。確か、毒虫の兄を最後まで優しく面倒を見たのが妹じゃなかったっけ?

ま、その予想は、見事にはずれたんだけれどね。

長い間毒虫であったザムザが、突然人間に戻ったらしいところから物語が始まる。
長い間毒虫だったもんだから、人間の身体に戸惑いつつも、少しずつ順応していく。しかし、彼の家は、突然家をあけたようにもぬけの殻になっていた。ただ、食卓にはできたばかりの食事の用意がしてあった。四人分の。

ん、四人分…?

というと、ザムザ本人の分も入っているという事かしら? 毒虫になって家族に冷たくされていたザムザだったけれど、人間に戻ったということでザムザの分も作ってくれていたのかしら?
のわりには、厳重に施錠していたザムザの部屋の鍵が壊れたから、家族が鍵の修理を依頼していたようだ。ようするに、ザムザが部屋から出て来たら迷惑だから、閉じ込めておくために修理を依頼したんじゃあ…?

ザムザに対する家族の気持ちがいまいち分からない。家族は突然姿を消していたわけだし。

食事の準備をして、さあ食べようかという時に家族が姿を消したようだ。
この原因、はっきりと明記されていなかったが、兵隊とか銃とか戦車とか書かれてあったし、どうやら穏やかじゃない様子。
もしかしたら、この舞台がチェコだとすれば、戦時中にナチスの支配下にあったことと関係があるのかな。罪のないチェコの人が処刑されたことがあった。それにザムザの家族が巻き込まれたのかな。
時代がちょっと違う気もするけれど。
『変身』が1910年代の話だとして、WW2は1940年代。さらに時間を経てのプラハの春?なんてことはないと思うけど。

ま、細かいことはいいか。

ザムザが恋をした相手は、依頼を受けて鍵を修理しに来たという「せむし」の女だった。
「せむし」は、江戸川乱歩の小説以来お目にかかってなかったが、最近、市川沙央の『ハンチバック』で「ハンチバック」のルビに「せむし」ってあった記憶が新しい。
その女の姿、特に、もぞもぞと動く姿に妙に興奮してしまったザムザ。

どうやら、情勢は穏やかじゃない様子だったけれど、人間として目覚めて、一発で恋をしちゃうなんて!!

さっき作った夕飯と…鯖フライ…

ということで、10日間にわたって投稿した『恋しくて』。
noteに綴っていったおかげで、どの作品も丁寧に読めたし、その時間を楽しむことができた。

さて、次は何を読もうかな。

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