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医療あれこれ

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心臓の持病との付き合いもかれこれ30年。関心ある”医療の先端技術”について記しています。
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2015年4月の記事一覧

動体追尾

動体追尾

レントゲンを撮る時の合図は「はい!息を止めて。そのまま~」。

しばらく呼吸を止めて我慢する。当然のことと思って来たが、三菱重工がこのほど開発した放射線照射装置は「呼吸などで揺れ動く病巣をリアルタイムにモニタリングして、狙った病巣にピンポイントでX線を連続的に照射する」そうだ。

(↑三菱重工HPより)

空を飛ぶミサイルを撃ち落とす技術を人体に応用したのだろうか?軍事技術が民生用に活用されるとし

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癌は臭いで検査

癌は臭いで検査

九州大学「味覚・嗅覚センサ研究開発センター」では、癌を臭いで検出する取組みを行っている。

ヒトと同じ形態の嗅覚受容体を持つ線虫(約1ミリ)のにおいと受容体のメカニズムの解明に取り組むと発表した。バイオセンサーと言われるもので、3年から5年をめどに成果を出したいとしている。麻薬犬のような犬を連れてきて臭いをかがせるような幼稚なものではない。完成すれば、尿を取って検査機関に送るだけで、数日で結果がわ

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術野

術野

日経の朝刊小説は、今まであまり面白く感じなかったが、今回の久間十義氏の「禁断のスカルぺル」というのは、興味が尽きない。

医学界を舞台にしたものだが、展開が速く、いかにもリアルで人物が生きていると感じる。その中で「術野」という言葉があって、手術の時の視野のことだと知った。オペをやる人にとっては、狭い小さな場所がいかに見え易いか、見えにくいかは、実に重大な問題である。術野の確保は手術の成否を決めるの

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富士ファルマバレー

富士ファルマバレー

地元静岡県の1位品目は少なくなってきた、と思っていたら、富士山麓ファルマバレープロジェクト(あまり聞かない言葉だった)の集積は非常に大きなもので、静岡県の医薬品・医療機器の生産金額が1兆円で全国1位だそうだ。

その背景には静岡がんセンターの存在(先端的治療センターで現在も引き続き拡張中)がある。私の周りにもここで手術を受けて生還した人がちらほらいる。企業ではテルモが富士宮市にあるが設備の更新に注

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カプセル胃カメラ

胃カメラは口からでも鼻からでも嫌なものだ。

ベテランならすっと行くが、経験が少ない医師だと当たりハズレがあって、時には何回も呑み込むはめになる。

カプセル型のカメラを呑みこむ検査方法が進んでいる。名古屋工大の安在助教が研究しているカプセルは、UWB(超広域無線)ローバンド帯とよばれる3.4ギガ~4.8ギガヘルツの高周波帯。オスロ大学との実験では深さ12cmでの実験で好結果を得た。人体への応用に

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ナースコール

ナースコール

入院中のナースコールボタンでは「どうしました?」という声に対して一通り状況を説明しなければならない。

急いでいる場合はもどかしいし、そうでなくても状況説明はけっこう難しいものである。スマホの普及はこんなところにも改革の波を寄せている。簡単にいうと、ボタンを押すと病床の映像がナースのスマホへ表示される。見れば一発で全てがわかり、手早く適切な手当てが可能になる。なるほど便利なものだと思うが、一方では

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臓器を造る時代

臓器を3Dプリンターで作るという研究開発が行われている。

バイオファブリケーションという研究分野で、医学と工学の連携で既に臨床研究を終えているのは、東大とネクスト21の共同開発のカスタムメイド人工骨である。骨なら3Dで作りやすいだろうと思ったら、心臓、肝臓、腎臓などもターゲットになっている。富山大はゲルを用いる方法、佐賀大は細胞塊を積み上げる方法、東京女子医大はシート状に増殖した細胞を積み上げる

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義肢世界一

世界一の義肢メーカーはドイツのオットーボック・ヘルスケア社である。マイクロプロセッサーを搭載して制御機能を発揮する。背景には高齢化で糖尿病患者が増加し、合併症で下肢切断に至るケースが多いからである。恐ろしい話だが日本の近未来を見せられる気がする。飽食の時代の、偏った運動しかしない日本人は、糖尿病の予備軍で一杯だ。必ずしも太った人がかかる病でもなく、痩せていても発病する。高カロリーの美食に耽り、肉体

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逆CTスキャン

日本ビジュアルサイエンスという会社が目指しているのは、CTスキャンの逆応用である。CTスキャンが取り込んだ断層撮影のデーターをソフトウエアで圧縮処理して、半透明なプラスチック板に印刷し、積層させて模型をつくる。対象物の「見える化」という概念が出発だ。対象物が生物の場合、内臓や血管まで宙に浮いた状態で見える。更に見やすくするには血管だけ色をつけることも可能。どんな分野に応用できるかは、まだこれから探

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