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医療あれこれ

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心臓の持病との付き合いもかれこれ30年。関心ある”医療の先端技術”について記しています。
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記事一覧

注射で骨を作る

注射で骨を作るという手法が生まれた。東京医科歯科大青木准教授らは、手術をせずに薬を口の中に注射してあごの骨を増やす方法を開発した。
実験動物はマウスだが、やがて兎とか犬のような大型動物に応用して、人間への可能性を探ってゆく。
京大再生医学研究所とアメリカのシーダーズ・サイナイ研究所との共同研究だが、切開して人工骨を埋め込んだり、体の他の部位から移植したりする手術をしなくても、注射で骨を作る可能性が

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レーザーで血栓を切除削除

スーパーカミオカンデで注目されている浜松ホトニクス社が、レーザーで血栓を溶かす技術を開発した。世界初である。光ファイバーが入ったカテーテルを患者の大腿部の血管から挿入、体内を経由して目的の血栓まで移動し、レーザー光を照射する。レーザー光は血栓だけを選択的に溶解できる波長532ナノメートル。短時間照射を断続的に繰り返して血栓を細かく切削する。この波長は血管壁には吸収されにくいので、血管を傷めるリスク

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触覚を持った手術ロボ

東京工業大学精密工学研究所の只野耕太郎准教授、川嶋健嗣客員教授(東京医科歯科大学生体材料工学研究所・教授)らは、先端医療機器の開発・製造を行う「リバーフィールド株式会社」を設立した。
同社は、空気圧を用いて精密制御を実現する技術を基盤として研究開発した手術支援ロボットシステムなどを広く、早く市場に普及することを目指す。
具体的には、執刀医の頭部動作により直感的に内視鏡を操作できる内視鏡操作システム

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虫で治療

九州大理学研究院の広津崇亮、伊万里協立病院園田外科部長らは、線虫の1種「C.エレガンス」を使い寒天培養地でテストをして、ガン患者の尿に線虫が誘導される反面、健常者の尿には近づかないことを発見。ここから、線虫を使って判定を行う方法を模索した結果、1滴の尿でガンの検査ができるようになった。確率は218名の試験者から95%を当てた。

このニュースを見て思ったのは、「それなら線虫にガン細胞を食べさせるこ

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血栓を引っ張り出す

脳に血栓ができたらやっかいだ。

切開して取り除くことなどできないし、溶解剤を入れて溶かすとなれば、すぐにすぐは間に合わない。時間がかかるので、その間に脳梗塞を病む危険性は高い。最近、町でよく見かける歩行不自由な人を見かけるが、脳をやられると半身不随に直結する。このやっかいモノの血栓を、器具で摑まえて取り出す治療法がすでに有って、年間3000例にもなっているという。その名も「脳動脈再開通治療法」で

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米を食べて花粉症を治す

米を食べて花粉症を治す

全国に3000万人いると言われ、今や国民病となっている「花粉症」患者に朗報である。

農林水産省はアレルギー原因となるスギ花粉成分をコメの中の蛋白質に注入し、抗原たんぱく質として白米に蓄積させて「花粉症治療米」なるものを販売する計画を進めている。2020年には実用段階に達するという。

ただし、スーパーなどではなく、医師の処方箋に基づいて調剤薬局が売る。マウス実験では、3週間でアレルギー反応の軽減

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鼻からインスリン

鼻からインスリン

重度の糖尿病だった義母は毎日自分で注射していた。

腕ばかり打つとだんだん皮膚が硬くなるので、脇腹とか太ももにまで打っていた。インスリン注射は負担が大きい。

今は鼻から吸入することができるらしい。鼻だけでなく、肺から、皮膚から、口から、直腸からと研究はめざましく進んでいる。

アルツハイマー病は脳の糖尿病と言われるが、鼻からインスリンを吸入させと、卓効があることが知られてきた。城西大学関俊暢氏の

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バイパス手術訓練機

バイパス手術訓練機

心臓バイパス手術は非常に高度なスキルが求められる。

細い血管を縫う作業は時計職人の繊細さに似て、ほんの少しの位置を間違えても重大な結果を招いてしまう。血管の表側ならまだしも、裏側を縫うなどという作業はどうしてやるのだろう。縫い目が粗ければ血が漏れるだろうし、やたらに沢山縫うこともできないだろう。血液が流れるだけの径を確保しながら、漏れないように、且つ目に見えない部分もしっかり縫合しなければならな

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動体追尾

動体追尾

レントゲンを撮る時の合図は「はい!息を止めて。そのまま~」。

しばらく呼吸を止めて我慢する。当然のことと思って来たが、三菱重工がこのほど開発した放射線照射装置は「呼吸などで揺れ動く病巣をリアルタイムにモニタリングして、狙った病巣にピンポイントでX線を連続的に照射する」そうだ。

(↑三菱重工HPより)

空を飛ぶミサイルを撃ち落とす技術を人体に応用したのだろうか?軍事技術が民生用に活用されるとし

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癌は臭いで検査

癌は臭いで検査

九州大学「味覚・嗅覚センサ研究開発センター」では、癌を臭いで検出する取組みを行っている。

ヒトと同じ形態の嗅覚受容体を持つ線虫(約1ミリ)のにおいと受容体のメカニズムの解明に取り組むと発表した。バイオセンサーと言われるもので、3年から5年をめどに成果を出したいとしている。麻薬犬のような犬を連れてきて臭いをかがせるような幼稚なものではない。完成すれば、尿を取って検査機関に送るだけで、数日で結果がわ

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術野

術野

日経の朝刊小説は、今まであまり面白く感じなかったが、今回の久間十義氏の「禁断のスカルぺル」というのは、興味が尽きない。

医学界を舞台にしたものだが、展開が速く、いかにもリアルで人物が生きていると感じる。その中で「術野」という言葉があって、手術の時の視野のことだと知った。オペをやる人にとっては、狭い小さな場所がいかに見え易いか、見えにくいかは、実に重大な問題である。術野の確保は手術の成否を決めるの

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富士ファルマバレー

富士ファルマバレー

地元静岡県の1位品目は少なくなってきた、と思っていたら、富士山麓ファルマバレープロジェクト(あまり聞かない言葉だった)の集積は非常に大きなもので、静岡県の医薬品・医療機器の生産金額が1兆円で全国1位だそうだ。

その背景には静岡がんセンターの存在(先端的治療センターで現在も引き続き拡張中)がある。私の周りにもここで手術を受けて生還した人がちらほらいる。企業ではテルモが富士宮市にあるが設備の更新に注

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カプセル胃カメラ

胃カメラは口からでも鼻からでも嫌なものだ。

ベテランならすっと行くが、経験が少ない医師だと当たりハズレがあって、時には何回も呑み込むはめになる。

カプセル型のカメラを呑みこむ検査方法が進んでいる。名古屋工大の安在助教が研究しているカプセルは、UWB(超広域無線)ローバンド帯とよばれる3.4ギガ~4.8ギガヘルツの高周波帯。オスロ大学との実験では深さ12cmでの実験で好結果を得た。人体への応用に

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ナースコール

ナースコール

入院中のナースコールボタンでは「どうしました?」という声に対して一通り状況を説明しなければならない。

急いでいる場合はもどかしいし、そうでなくても状況説明はけっこう難しいものである。スマホの普及はこんなところにも改革の波を寄せている。簡単にいうと、ボタンを押すと病床の映像がナースのスマホへ表示される。見れば一発で全てがわかり、手早く適切な手当てが可能になる。なるほど便利なものだと思うが、一方では

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