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天然の夢

 とある夢売り店に一人の少女がやってきてカウンターの店主に涙目で尋ねた。

「私、夢が欲しいんです。素敵な夢はありますか?」

 店主は少女に向かってあなたの夢とはサクセスかドリームのどちらかねと尋ねた。すると少女はまっすぐな目で店主を見つめてドリームの方だと言った。彼女は天然の夢はありますかと店主に尋ねた。しかし店主は首を振りため息をついてこう言った。

「天然の夢ね。そんなもの数年前からここには売ってないよ。夢なんて今じゃみんな自動生成で作ってるからね。だからそんなものはここには置いてないよ。ウチの店にあるのはすべて自動生成品さ。そこの壁に掛けてある有名クリエイターのものだってそうだからね。今は有名クリエイターも手作業で夢なんて作らないよ。自分のデータを使って自動生成しているんだよ」

「そうなんですか。天然の夢はないんですね。それじゃあおじさんは天然の夢を作っている人を知っていますか?私、天然の夢がないと生きていけないんです」

「そんな人間知らないね!さぁ、帰った帰った!他のお客さんに迷惑だ!」

 少女は店主の剣幕を恐れてすぐさま店を飛び出した。


 それから一時間ぐらいたった頃、貧しい身なりの青年が夢売り店にやってきてポケットから取りだした自分の夢をカウンターにいる店主に見せて頼み込んだ。

「あの、これ僕の手作りの夢なんです。是非店に置いていただけないでしょうか?売るとかそういうんじゃありません。ただ僕の夢をこの店に来る人に見てもらいたいんです」

 店主はこの貧しい青年が差し出した夢を見もせずに手のひらで叩き落とした。

「こんな手作りの夢なんてただでさえ欲しくないよ。今の時代夢なんてのは自動生成で作るものなんだよ。今どき夢なんてよく作れるものだね。夢なんか作ってる暇があったらまともに働いたらどうだ。その方がよほど生産的じゃないか。さぁさっさとその床のゴミを持って帰れ!この怠け者が!」

 憐れな青年は床から落ちた夢を持って店から逃げ出した。青年は街を見てあたりが自動生成の夢だらけになっているのを見て絶望した。もう手作りの夢なんてみんな求めていないんだ。あの夢売り店の店主が言ったように僕もこんななんの役に立たない夢を作るのをやめてまともに働いた方がいいのだろうか。とその時目の前に一人の少女が現れた。彼女は驚く青年に向かってこう言った。

「あなたが手に持っているのって手作りの夢なんですか?」

「そ、そうだよ……これ僕が作った夢なんだ。だけどもういらないんだ。だから捨てようと思って」

「よかったら」と少女は目を潤ませて青年の手に持っている夢を見た。

「よかったら私にその夢ください!あなたが作った夢、それは私の探してた夢そのものなんです!」

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