見出し画像

祖母の魂の叫び


祖母の介護を手伝っていた頃の話である。
足腰が弱り、1人でお風呂に入るのが難しくなってきた祖母。心配なので、私も一緒にお風呂に入ることにした。
約25年ぶりに見る祖母の裸は、すっかり痩せて残るは骨と皮ばかりだった。幼い頃から田んぼや畑に出て働き詰めだったせいか、背中や腕には濃い日焼けの跡があった。
祖母が滑ったり溺れたりしないか緊張しながらも、久々の祖母と孫水入らずお風呂である。何かいい感じの思い出話が聞けるのではないかと期待していた。祖母が口を開いた。
「昔はほんまにお金がなくて、もうほんっっまに、お金がほしかった~!」
私が滑って溺れるところだった。いやもっとさ、苦労したけどおじいちゃんと結婚できて幸せだったとかさ、ないの?え、ない?じゃ、じゃあ、今までの人生で一番幸せだった時期っていつ?
「今が一番幸せやわ。毎日好きなだけ寝て、食べて、ずっと家にいて嫌いな人にも会わんでいいしな~あっはっは!ほなそろそろ上がろか」
祖母が88年かけてたどり着いた幸せから、学ぶところは多い気がする。


よろしければ、「祖母の悲しい夢」もあわせてどうぞ。同一人物です。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?