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【エッセイ】旅動画を作ろう②─下越地方の特産品と男の料理─(『佐竹健のYouTube奮闘記(44)』)

 ひとまず、新潟一周という実現不可能なプランから、下越地方一周という現実的なものにおさまった。だが、またここで問題が発生する。旅の中で食材を探し、その食材で何かを作るという要素が追加されたのだ。

 実行する時期はお盆。とてつもなく暑い時期なので、買える食材は限られてくる。米などといった、乾いているものなどなら大丈夫だろう。だが、生食は無理がある。そのため、クーラーボックスを持ってくるとか、その他食材は3日目にスーパーで買おうなどの案が出た。

 あと、せっかくの下越一周なので、私は、

「どうせ下越一周するなら、下越地方の有名なものを買うのはどうかな?」

 という案を出した。

 普通に食材を買ってそれを調理するだけなら、家でもできる。どうしても外でやりたいのなら、キャンプ場を貸し切ってそこでBBQなりカレー作りなりすればいい。でも、今回の目的は下越一周。普通にやってもつまらないだけだ。

 ならば、どうすればいいか? と考えると、現地の有名なものを使って何か作るというアイデアがまず先に思い浮かんだ。

 その方が何を作ればいいか少しはわかりやすくなる。そして、新潟県、もしくは下越地方のことを知ってもらえるいい機会になる。

 この提案については、後輩やその相方も、

「いいねー!」

 と言ってくれた。


(そういえば新潟県の下越地域って、何が有名なんだろう?)

 次の日、言い出しっぺの私は、ふとそんなことを考えた。

 新潟県といえば、お米とお酒が有名だ。あと、笹団子(緑色の餅にきんぴらや餡子を包んでさらにその上に笹で巻いたお菓子)とか柿の種とかもある。

 上野駅や秋葉原駅、池袋駅とかで物産展を時折目にすることがあるが、新潟県に関するものといえば、この4つがメインに売られていることが多い。

(米、酒、笹だんご、柿の種以外の名物無いのか?)

 私はふとそんなことを考えた。

 東京の浅草のり、埼玉の狭山茶や川越の芋、千葉の野田の醤油、矢切ネギ。どこの県にも、

「○○県といえばこれ!」

 という代名詞にはなっていないけれど、

「○○市(市のところは町村でも可)といえばこれでしょ!」

 と言えるほどのそれなりに知られた食材があるからだ。

 また、京都の鹿ヶ谷かぼちゃや九条ネギなどの京野菜のように、その土地でしか作られていない特徴的な野菜も存在する。

(これは少し調べてみる必要がありそうだな)

 そう思った私は、後で調べてみようと思い立った。

 ある日の夕方、私は休憩を兼ねて喫茶店に立ちよった。持っていたPCを起動させ、chromeを開き、下越地域に該当する自治体や観光協会のサイトを片っ端から調べた。

 山間にある阿賀野市や阿賀町などは、畜産が有名であることがわかった。その証左に、牛乳やハムといったものが数多く出てくる。対して新潟市のような海岸部や平野部は、米はもちろんのこと、野菜、果物などの農作物が有名であった。海のある場所では、海産物もしっかり獲れる。

 山間部の阿賀野市や阿賀町で牧畜が盛んなのは、意外に感じた。

 冬は寒く、夏は暑い。おまけに雪も降る盆地で、乳牛や豚などをどのように育てているのか気になる。

 新潟市やその周辺は食材の宝庫という感じだった。

 米はもちろんのこと、梨やブドウといった果物、ナスや枝豆といった夏野菜も獲れる。区ごとに見ていくと、トマト、桃、さつまいもといった具合で様々なものの名産地がある。

 これに関しては、信濃川や阿賀野川といった大きな河川やその支流がいくつも流れているのが大きい。大きな川があるところには、川の流れで山から土砂が運ばれてくる。その土から養分を吸収し、いい作物が育つ。新潟市やその周辺の場合は、信濃川や阿賀野川本流やそこから枝分かれした川に流れて行きついた土に含まれる養分が、おいしいお米や野菜、果物を育んでいるのだろう。

 なお、京野菜のような変わった形の形状の野菜は見つからなかった。


 夜。また配信をやっていたので、私は見に行くことにした。

 私は今日調べていたことを後輩に伝えた。

 後輩の反応は意外にもあっさりとしたものだった。参考程度に、といった具合で調べていたので、こういう反応になるのも想定内だったが。

 そしてその後は、何を作るかという話題になった。

 焼きそば、ラーメン、カレー、焼き肉。様々な候補が出てきた。が、当日どうなるかわからないので、あくまで「作りたいねー」という願望のみに押しとどめておくことにした。だが、後輩は、

「せっかくなら何かを1から作りたいな。できれば、『男の料理』を作りたい」

 と話していた。

『「男の料理」か』

 何だかかなり豪快な感じだが、どんなものができるのか、楽しみである。だが、直接彼らと会うことは無いし、会うこともできない。けれども、見守ることはできるから、彼の言う「男の料理」がどのようなものになるのか、東京の片隅で見届けようと思う。

(続く)


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