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傲慢と善良と素直さと

学生時代付き合っていた彼が英米文学を学んでいて、ジェイン・オースティンの『自負と偏見』を知りました。

桐野夏生さんが彼らの滑稽なほどの俗物ぶりも見栄も虚偽も妥協も、厳しい世を生き抜くための切実な方便とあとがきに書いていて、人生を狂わす名著 50』 三宅香帆も『月9ドラマも今時放映しないぐらいベタベタなラブコメディ』『人間の失敗をユーモアをもって微笑む』と紹介してました。

令和版『自負と偏見』は傲慢と善良がキーワードになってます。

傲慢と善良  辻村深月

婚約者・坂庭真実さかにわまみが忽然と姿を消した。その居場所を探すため、西澤架にしざわかけるは、彼女の「過去」と向き合うことになるー。彼女は、なぜ姿を消したのか。浮かび上がる現代社会の生きづらさの根源。圧倒的な支持を集めた恋愛ミステリの傑作が、遂に文庫化。《解説・朝井リョウ》

朝日文庫

ふふふ。やはりジェーン・オースティンの『高慢と偏見』がありました。前橋の結婚相談所の老婦人が、それに対しての現代は『傲慢と善良さ』だと架に話してます。

うまくいくのは、自分が欲しいものがちゃんとわかっている人です。自分の生活を今後どうしていきたいかが見えている人。ビジョンのある人。

縁結び 小野里の小野里夫人

上品で現代的で若者が使うような的確さで「ビジョン」という言葉がさらりと出て、婚活舐めんなよ、という姿勢の老婦人の『傲慢と善良』という言葉が、架に人を、自分を深く知ることに導いてくれます。

架が会う人々は、傲慢であり善良で。
架も真実も傲慢で善良で。

真実はいい子と誰もが認めるように、いい子ってわかりやすい。でも傲慢って、自分ではなかなか気がつかない。

わたしも、それを持っている。悪意のない傲慢さ、ぺろりとどこかで吐露してしまう。

この物語の中だと、わたしは真実のお見合い相手の金井の妻であったり、真実の県庁勤め時代の友人、恵であったり。

あとがきが朝井リョウさんで、なぜ僕?と選ぶ、というヘビーさを書いてらっしゃいますが、朝井リョウさんの小説のようにザワザワするからじゃないかしら。

傲慢と善良、という表題だけでもザワザワ。ザワザワがあるから、最後が生きてくると思います。

婚活をとおして人間の在りようを知りビジョンでなく、素直に謝り認め合い受け入れて軌道修正をし、成長していく物語です。

200年以上前に描かれたものと似ている部分がおもしろい。好きという気持ちは難しくない。単純。素直になったほうが勝ち。

スキとスキの交流のある、あやとりりいさんがこの度入籍されました。

おめでとうございます。

ただその人と一緒にいたいと思う結果、結婚が決まっていたことを嬉しく思う。(中略)人生が自分の人生を生きている結果、導いたパートナーといられることは、私にとってこの上ない幸せ。

あやとりりい

あやとりりいさんも、一緒にいたいという素直な気持ちがありました。幸せ、で終わる文章好きです。

決まっている、潔くっていい。
傲慢も善良も関係ない。

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