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2020年3月福島取材⑱/双葉駅の狂騒

「有料」とありますが、基本的に全て無料で読めます。今後の取材、制作活動のために、カンパできる方はよろしくお願いします。

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<続き>

大野駅から電車に乗るも、電車内は朝より酷く、完全に満員状態だった。これまで何度も電車で富岡まで通ってきたが、こんな混みようは初めてだ。全通したからといって全国からこんなにワラワラと人が集まってくるなんて。お前ら今まで9年間、どこで何をしてたのか。

周りの目を気にせずに、電車内では線量計を出して測っていた。この時、どこまで上がったかはっきりは覚えていない。代行バスで何度も走っていて、最も空間線量の高い場所は大野〜双葉駅間だとわかっている。僕の記憶では、乗客が多かったこともあり、この時は毎時1.0μSv以下だったと記憶している。

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双葉駅に着いて電車から降りると、あまりにたくさんの人の数で驚いた。まともに写真を撮る空間的余裕も気持ち的な余裕もない。降りてからも満員電車状態って、何なんだ。この頃には新型コロナウイルスが猛威を振るいつつあり、こんなところにいては感染するのではないかとさえ思った。

ホームを少し移動すると、背の高いコート姿の男性が目に着いた。「おかえり常磐線」と書かれた横断幕を元双葉町民らしき人たちと共に抱え、写真に収まっている。その後、お揃いのピンクの傘を持った人たちと談笑しながら、「え、ここ新しくなったんですか?」と話している。

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細野豪志。

散々寄り添う風なことをSNSで書きながら、この日初めて双葉駅が改修されたことを知った男。田中俊一の犬となり、自民党に擦り寄る恥も外聞も無い男。

「寄り添う」と公言しながら、双葉駅が新しく増改築されたことも知らなかったのか。急に頭に血が上り、カーッと全身が熱くなるのがわかった。睨みつけながら、僕はカメラのレンズを向けた。自称寄り添うマン細野豪志、この恥知らずな政治屋を、絶対晒してやろうとシャッターを切った。

怒りで数枚写真を撮った後、見覚えのある顔を見つけた。電車で来ると聞いていたドキュメンタリー監督の堀切さとみさんだ。11時過ぎの内堀福島県知事が出迎える予定の特急ひたちで双葉に着くと聞いていたが、電車が混雑すると知り急遽車で来ることにしたという。傍らには、堀切さんがドキュメンタリーでずっと追い続けてきた双葉からの避難者、Uさんがいた。

Uさんを紹介してもらい、お互いに挨拶を交わしてから、駅の構内で行われるセレモニーを見に移動する。

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内堀福島県知事。

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伊沢双葉町長。

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来賓者とマスコミ。

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物々しいSPたち。

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赤羽国土交通大臣。

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吉野元復興大臣。

錚々たる面々が挨拶をするなか、アワプラのHさんに見せてもらった報道関係者用のプレスリリースを確認すると、来賓者名簿にはさっき見かけた細野豪志の名前はなかった。奴は呼ばれてないのに勝手にやってきたのだ。

招かれざる男、細野豪志。

細野が来ていることを堀切さんに話すと、「ええ? よく来れたわね?」と言う。野田内閣で環境大臣だった細野豪志は、「採算度外視で除染をやりきる」と双葉町民に約束した。しかしその約束は反故にされ、今も双葉町の大半は除染されていない。彼は双葉町民を裏切った。

セレモニー終了後、双葉駅に乗り入れる特急ひたち出迎えのため、来賓が移動する。大臣や首長と一緒に、周囲に目を配りながらしきりに無線で会話をする物々しい雰囲気のSPやマスコミ関係者も移動する。京都府警の警官等も応援で来ていた。その厳戒態勢はやや過剰にも見え、僕の目には異様に映った。

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ホームでは標葉せんだん太鼓の演奏が行われた。目の前に立ち並び演奏を見入る内堀知事や赤羽国交相、吉野元復興相等の後ろには、呼ばれてないのに勝手にやってきた細野豪志が、JR職員とマスコミとSPと一緒にこっそり割り込む。

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(細野豪志曰く、この時は雨宿りしながら特急列車を待っていたと言う。果たして、一般人がこの場に立つことが許されるだろうか?)

この日は、それぞれの避難先から双葉町民がバスに乗ってやってくるはずだった。COVID-19感染防止のためそれらは中止になったが、蓋を開けてみれば、わずかな双葉町民と多数の鉄ヲタと政治家とSPとマスコミで駅は埋め尽くされていた。僕は何ともやりきれない思いでただシャッターを切り続けた。

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(内堀知事はいつも口ポカーンだ。こんな間抜けな顔をしつつ、自主避難者との面会には絶対に応じない冷血漢でもある)

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(勝手にやってきた細野豪志が来賓のすぐ後ろでSPに守られながら間抜け面を晒す)

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内堀知事が特急ひたちを出迎えて、そこでセレモニーは終わった。狂騒と言っていい異様なイベントが終了すると、満員電車のように溢れていた人たちは一気に去っていく。常磐線全通のセレモニーだが、電車に乗ってきたマスコミも政治家もおそらく一人もいないだろう(後日、細野豪志が僕が乗ってたのと同じ電車に乗ってたことを知った。但し、竜田駅まで車で来て、そこから電車に乗ったと言われている)。先日朝生に出ていた、元東電社員で、当事者性を前面に押し出して他人を黙らせる術に長けたAFW(Appreciate FUKUSHIMA Workers)代表吉川彰浩が、笑顔でマスコミと談笑し、車に乗って帰っていく姿も確認した。

魑魅魍魎が渦巻くカオスな空間で、僕は一人で怒り狂っていた。

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僕はここにいてはいけない人間なんだろうなと思いつつ、堀切さんらと駅の外に出ると、聞き覚えのある声が聞こえてきた。カウゴジラを乗せたリアカーを引いた希望の牧場の街宣車だ。吉沢さんには僕はまだ直接会ったことはないが、いつか会って話してみたい。

面識のある堀切さんとUさんが手を振るが、気付かずにそのまま去っていった。「東京五輪は中止」と連呼しながら去っていく吉沢さんの車は、とてもシュールに見えた。

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その後堀切さんらと別れ、一人で駅構内や駅周辺を少し歩く。

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お偉いさんがSPに守られながらバスでお帰り。常磐線全通を祝いながら常磐線には絶対乗らない人たち。

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双葉駅は無人駅だ。何かあれば遠隔地のオペレーターとモニターで直接話し、応じることが出来る。大野駅と同様、福島県外では立入禁止になるレベルの空間線量の場所で、出来ることなら人を働かせたくはない。苦肉の策のヴァーチャル対応を、NHKをはじめとする大手メディアは「最先端のハイテク技術」として的外れな伝え方をする。

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双葉駅の東口はニュース等で散々宣伝されたが、西口はこの有様。これを伝えたメディアは見たことがない。

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五輪の聖火リレーに間に合わせるために、バタバタと準備したことがよくわかる。

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駅前のモニタリングポスト。後ろの駐輪所には、震災時のまま、多数の自転車が置き去りにされている。電光掲示板には「0.274μSv/h」と表示されている。福島県外では毎時0.23μSv以上の場所は立入禁止で除染対象。つまり、ここは本来なら立入禁止だ。

「原子力緊急事態宣言」をいつまで経っても解除しないことで、本来なら帰れない場所に人を帰し、入れない場所に人を入れようとしている。

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住む人は誰もいない。夜ノ森駅東口も大野駅前も双葉駅前も、立入規制が緩和されただけで、決して「避難指示解除」ではない。マスコミの報道は「住めるようになりました」と思わせるミスリードだ。そしてワイドショーでカンニング竹山がそのことを知らずに「住めます帰れます移住したいです」とアピールする。

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倒壊しつつある工場。これをテレビや新聞は伝えただろうか?

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ここは元々あった双葉駅のままの場所。中には入れない(この時点では)。

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双葉駅のトイレは何年も前に外に設置されたもの。新しく増築された部分にトイレはない。駅構内には(この時点では)待合室もベンチもない。欠陥駅だ。聖火リレーに間に合わすためにいい加減に作ったことがよくわかる。

ちなみに夜ノ森駅は外に薄汚れたスーパートイレ(仮設トイレ)があるだけだ(6月現在待合室とトイレを建設中)。

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雨がますます激しくなり、撮影はなかなか困難。今回は2泊3日のスケジュールで、3日目の3/15は晴れると聞いていたので、早めにいわきへ戻ることにした。

14:24双葉発。代行バスもなく電車一本で帰れるのはありがたいが、どこか寂しい。

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帰りの電車内では、双葉〜大野駅間で毎時1.27μSvに達した。代行バスと違いすぐに通り過ぎるし電車内なので内部被曝もほとんどないとは思うが、やはり如何なものかと思う。

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いわきへ到着。駅構内のコンビニのおにぎりやサンドイッチ等は、すべて売り切れていた。

3月に開通した夜ノ森大野双葉の3駅には、コンビニはおろか自動販売機さえ1台もない。6月に大野駅を再訪した際、警察の職質を受けたが、「ここは売れないこととか、“いろいろあって”、自販機もないから」と話していた。僕は勝手に、業者が拒否したと考えている。帰還困難区域に自販機用の商品を運び込むには、職員に危険手当を出さなければいけなくなるからだ。

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…いわき駅前のデパイチで惣菜と酒を買い込み、この日も部屋で一人呑みつつ、3日目のルートを検討した。小良ヶ浜のフレコン置き場がどうなったかをみて、夜ノ森駅から双葉へ向かおう。

<続く>

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