死神のその一瞬
その一瞬のせいで交通事故が起きた。
その子の両親の命をとった、それが出会いだった。
その子の悲しげな淡い表情は僕の何かを揺さぶった。
致命傷はなく運良く生き延びた彼女は病院へ。
大丈夫、まだ彼女は死なない。
こんな一人の女性に何を思うんだろう。
たまにそばに行くけれど、僕の姿は見えない。
会話も、触れることも、この気持ちを伝えることも。
何十年も彼女は僕には気づかない。
彼女の寿命はもうなくなっていた。
シワシワの手に針をさされ、チューブのからまる顔に僕はまだ愛しさを感じていた。
ふと彼女と目線があった。
なぜか笑いかける彼女に僕はその一瞬のせいで悲しみを堪えきれないまま命をとった。
天国に行った彼女に、僕は永遠の別れを告げた。
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