見出し画像

オリヴィア・ハワード・ダンバー「感覚の殻」

こんにちは。
最近新しい小説に何も触れていないなと思い、青空文庫で次何を読もうか探していた時に「感覚の殻」という表題を見つけました。作家の名前もですが、このタイトルが気になって読んでみました。ことの顛末から申し上げると、不覚にも染み入って感銘を受けてしまいました。こんな話があったんだと、人間らしい部分もあって、なんて美しいんだろうと久々に記憶に残りました。

冒頭だけ、というか登場人物だけ少しご紹介すると3人います。廃屋のようなお部屋に現れます。そのうちの1人は幽霊の女性、後の2人、男女が一人ずつ生きています。勘の冴えてる人はもうこの説明だけで、概ねの話の予想ができたかもしれません。でも、どうぞネタバレは実際に読んでみて「ああヤッパリそうか。」くらいに留めて頂けると幸いです。

幽霊に感覚ってあるでしょうか、感情ってあるでしょうか。また男女の考え方、物事を受け入れるのにどういう違いがあるか、生きているって?死んでいるって?と、などなど少々スピリチュアルな見方かもしれませんが、そういうキャラクターからの視点を変えてみると何度でもその捉え方が変わるように思われる小説でした。日本の霊に関するお話、ことに小泉八雲の書くお話なのですが、結構、死ぬ間際の「約束」や「契約」という点に重きを置いている様に思われます。亡くなる側が「私が死んでもこうしてくれますか」というのに対して、遺される側が「ああそうするとも」と言ってそれが果たされるか否かで結末が変わってくる、という具合です。裏切られた時の感情は物凄く分かり易いくらいに鮮明です。皆さんもこれを聞いただけで、どういう気持ちになるか、なんとなく想像が着くと思います。
この「感覚の殻」は女性が既に亡くなった状態ですが、読み進めていくと生きている者達とどういう関係性であったかじわじわと浮かび上がってきます。私が感銘を受けたのは、幽霊になっても生きているのと変わらない部分がある事と、本当の意味で「無くなる」というのはこうなのかもしれないという気付きをくれたことでした。

青空文庫の以下に掲載されているので、気になる方はぜひご一読いただければ幸いです。


この記事が参加している募集

読書感想文

振り返りnote

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?