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読んでない本の書評

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表紙見て、あとがき読んで、数行目を通したら、だいたいわかる気がしてきた。 より深く理解するために、重さも測ることにする。
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#フランス文学

106「椿姫」デュマ・フィス

106「椿姫」デュマ・フィス

197グラム。いつも椿の花束を持っている美女。「椿が一本でもしおれたら……」とか「この椿が枯れる前に……」という描写が随所あるのだけれど、椿って枯れる前に落ちるんではないの。

 『椿姫』のおもしろいのは、まず経済小説なのだ。ちょっと執着しすぎなのではないかというくらい事細かにお金の話が出てくる。

 マルグリットは貧しい田舎で生まれ、14歳まで自分の名前さえ書けないような育ちである。それがパリに

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読んでない本の書評89「谷間の百合」

読んでない本の書評89「谷間の百合」

280グラム。279グラムまで語り手が完全に酔っぱらっていて、最後の1グラムあたりで盛大に冷や水をぶっかけられる。読んでいて変な声が出るくらいの剛腕の破壊神がいきなり登場する。

ナタリーという女性にむけた手紙で小説ははじまる。
「あなたが言えっていうから渋々言うんです。このような打ち明け話をしたからには、これまで以上に愛してくださいよ」という卑屈なラブレターの形で過去の悲恋が延々と語られていく

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読んでない本の書評59「パルムの僧院」

読んでない本の書評59「パルムの僧院」

上下巻で412グラム。いつまでたっても僧院が出てこないから違う小説を読み始めてしまったのかと心配になっていったんカバーを外して確認した次第。

 なにぶん長いので結構読み飛ばしている。わかるところ、盛り上がってそうなところを重点的に読んでいくと、結果的に「よくもまあ臆面もなくそんなこと書きましたね」というようなめちゃめちゃ面白いメロドラマだった。

 超イケメンの青年ファブリスが政争にまきこまれて

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読んでない本の書評49「眼球譚」

読んでない本の書評49「眼球譚」

 98グラム。ちなみに眼球の重さは7グラム程度、鶏卵はMサイズ50グラム程度、牛の睾丸は200~300グラムくらいらしい(理解の難しいものは重さで把握するクセがついてきた)。

 タイトルを見ただけでも、読んで楽しい気分になるような本ではあるまい、と察してはいた。しかしページを開いてみると、楽しいとか楽しくないとかいう問題ですらなく、情景も浮かばないしそもそもなんだか分からない。
 高校生カップル

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読んでない本の書評42「恐るべき子供たち」

読んでない本の書評42「恐るべき子供たち」

94グラム。ある地域に次々と危険な性質をもつ子供が生まれて一帯が大混乱におちいる怪奇小説かな、と思ったら意外にも結構おしゃれな小説。おまけに子供も出てこない。

 虚弱体質を理由に教育も途中でやめさせ、仕事もさせず保護者もないまま金だけ与えてぶらぶらさせておいたら恐るべき子供たちが仕上がった、と言われても、そりゃだいたいそうなるでしょう、と思うのではあるが、それはさておきサクマドロップの缶をひっく

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読んでない本の書評33「阿片 或る解毒治療の日記」

読んでない本の書評33「阿片 或る解毒治療の日記」

101グラム。短いながらも「これは読む順番を間違えているぞ」と思いながらページをめくる。せめて「恐るべき子どもたち」あたりを先に読んでおくべきではなかったか。

 そもそもジャン・コクトーが誰だかあまりよく知らないのである。詩人なの?映画監督なの?作家なの?何やって食べてた人なの?と思っている。
 さらには阿片をよく知らない。映画などではよく阿片窟で人がゴロゴロ横になってとろんとした目で煙をはきだ

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