シナノの王墓 森将軍塚古墳
11月の3連休最終日、長野県千曲市にある森将軍塚古墳を訪ねました。
森将軍塚古墳とは?
千曲市森地区にある『偉い人のお墓』として、古くから森の将軍塚と呼ばれてきました。国指定史跡(昭和46年)の前方後円墳で、全長は約100mと県内最大規模。なんと小学校6年生の社会科教科書にも掲載されたとか。(知らなかった)
埴輪が並んだ様子をテレビなのか新聞なのかで見てから、ずっと行きたいと思っていた場所です。自宅から高速道路で1時間半、ようやく行くことができました。
2階の展示室へ入り、まず目に入って来たのは大きな石室。発掘調査の際に型取りをして作られた、実物大の竪穴式石室です。ホンモノかと思うくらい精密なつくりでした。
当時、石室の内部はベンガラで真っ赤に塗られていたそうです。
この覗き穴というのがまた面白く、ナントカ(名前を忘れました)という盗賊が盗掘にはいる際に内部の様子を窺うために作った穴を再現したものなんだとか。つまり、盗賊目線ということですね。おもしろい!
竪穴式石室は、長さ:7.6m 幅:2m 高さ:2.3m と、日本最大級。展示室はその石室を見下ろしながらぐるりと一周できるように、展示品が並べられていました。
副葬品のショーケース、なにより気になったのは三角縁神獣鏡です。盗掘にあったせいか、破片しか残っていなかったようですが、実物が展示されていました。
邪馬台国の女王卑弥呼に関わるといわれる三角縁神獣鏡、これが副葬されていたということは・・・邪馬台国と交流があり、シナノの地を治める権力者として認められていたということですね。
そもそもこの規模の前方後円墳ともなると、おカミの許しなく勝手に作るということはまずあり得ないと、パネルにも説明がありました。
古墳が作られた4世紀、交通網はどのようなものだったのかわかりませんが、沿岸部から離れたこの山間地でも、意外と外部との交流は盛んだったのだな、と想像しました。
◇ ◇ ◇
さて、館内をざっと見たところで、いよいよ古墳へ向かいます。山の上にある古墳までは歩いておよそ20分とありましたが、ここで体力を無駄に消耗したくなかったわたしは、迷いなくバスを選択しました!
バス(というかちょっと大きな車)でくねくねの坂道をのぼり、あっという間に頂上へ到着。
善光寺平を一望できるこの山の上に、わざわざ作ったのはどうしてでしょうか?平地に作るのに比べ、きっと何倍も大変だったはずです。実際この古墳は、尾根の形状にあわせて左右対称ではなく、ちょっと歪んだ形で作られています。
復原で使われた石はすべて近隣から調達されたもので、千曲川の河原から採取した石もあるそうです。大きな円筒埴輪をここまで運んでくるのも大変だったことでしょう。
では、王になった気分で古墳の頂上へ行ってみましょう。
『おーい!はに丸』を見て育った世代としては、ヒトやウマの埴輪を期待していたのですが、この古墳は4世紀築造のため、残念ながらありません。あのかわいい系の埴輪はもう少しあとの時代(5世紀以降)の登場なのだと、さきほどの古墳館展示で知りました。
善光寺平を見下ろす、最高の見晴らしです。ときおりゴーッという音が聞こえてきたのでそちらを見ると、北陸新幹線の車両が走っていきました。(写真中央あたり、線路が通っています)
これほどの古墳を築造できる力を持っていたシナノの王ですが、この後、古墳時代後期になると古墳の分布は、ここ千曲川水系の善光寺平(長野盆地)から、県南部にある天竜川水系の伊那谷(伊那盆地)へと移ったようです。
なぜか?
要因のひとつとして挙げられているのが馬です。伊那谷は日本有数の馬の産地として発展しました。軍馬の供給基地として大和政権と深い関係を持っていた伊那谷が徐々に重要性を増し、古墳が集中するようになったのでは?と考えられています。南の方が、大和へも近いですしね。
なるほど~
もちろんそれだけが原因ではないでしょうが、いずれにしても時代の流れには逆らえなかったということですね、栄枯盛衰。
しばし古代ロマンに浸ったあとは、歩いてふたたび下界へ。
山道の階段つづきでそろそろ膝が笑いそうになったころ、無事下界の『科野のムラ』へ辿りつきました。
それにしても、季節外れの暑さで小さな飛ぶ虫が大量発生し、次から次へと服へくっついてきます。はらいきれないので、諦めて虫といっしょに散策。
◇ ◇ ◇
復原された科野のムラ
このムラは、隣にある長野県立歴史館の地下から発見された古墳時代中頃のムラを復原したもので、茅葺の家や倉庫など7棟の建物をはじめ、田んぼや畑もあります。
復原された古墳が見られればいいかな、くらいの軽い気持ちで訪れた森将軍塚古墳ですが、想像以上に興味深く見ごたえがあり、とても楽しい時間が過ごせました。
古墳時代後期は伊那谷が栄えていたとわかり、そちらに対する興味がむくむくと沸いてきましたが、今回はひとまずこれでおしまい。ひょっとしたら来年は、古墳や歴史博物館めぐりをしているかもしれません。笑
お気持ちありがとうございます。大切に使わせていただきます。