今道友信わが哲学を語る ― 今、私達は何をなすべきか (今道 友信)
今道友信氏のお話は、10数年前、直接伺う機会がありましたが、著作も以前「エコエティカ」を読んだことがあります。とても興味深い内容でした。
さて、本書は、鎌倉高徳院で開講されていた今道氏の講義の書き起こしです。
第一章は「芸術と宗教をめぐって」、第二章は「東西の哲学を読みなおす」。この章の「自然哲学」を論じた講において、今道氏は、昼と夜に関して面白い指摘をしています。
昼は、明るい日のもとで対象物を精緻に計ることができます。この表出化された「量の認識」に基づく「自然科学」は「昼」の学問です。
他方、夜は「質の認識」に内面化され、「自然哲学」のひとつのテーマとなると説いています。
もうひとつ、この章で教えられたのは、孔子の教えの幅広さでした。
論語は封建思想の礎としての「儒学」ではなく、より広い哲学思想だとの指摘です。
たとえば、「論理学」としての側面。
論語の中の一節に「必ずや名を正さんか」との孔子の言葉かあります。この「名」が孔子の「論理学」の基本コンセプトです。「名」とはものの「定義」を意味します。定義がはっきりしなければ「言葉」は通じません。論理的な思考も対話も成り立たないのです。
本書の最終章、第三章のタイトルは「21世紀の倫理学」。身近で具体的な題材を採り上げて「倫理」を語ります。
たとえば、平成11年に制定された「国家公務員倫理法」をもとに「倫理と法との関係」について語ったくだりです。
現代は「人権」が認められる社会です。その基本は「人命の尊重」です。
しかしながら、現実的には不慮の死が世界中のいたるところで見られます。
今道氏は、この四大倫理徳目の中で、とりわけ「勇気」の大事さを訴えています。
「自分が正しいと信じたことをためらわずに主張する」こと、戦中を生きた今道氏は、この「勇気」の欠如による不幸を身に沁みて感じているのです。
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