記事一覧
野望ありマス オリビエ・ペリエ
先日引退が発表されたペリエ騎手。
これは2008年に出版された、騎手としての自伝的な本。結果的に、2009年以降はJRAに短期免許で来日しなくなってしまったので、現時点ではこの本が最初で最後の日本での自伝本になっている。
騎手としての成長や、思い出の馬などについて、日本のことだけでなくフランスのことも書かれており、競馬ファンであれば楽しく読むことができると思う。
ペリエ騎手の日本語能力の高さは
馬も笑う競馬のはなし―ファンに捧げる競馬のすべて 中野栄治
中野騎手がダービーを勝った翌年に出された本で、文章からもダービーを勝った喜びと自信が満ちあふれている。
内容としては、どちらかというと暴露話系が多い。
田原騎手や藤田騎手の本が広く出ている今となっては、あまり新鮮味がないが、おそらく当時としてはダービージョッキーがこんなぶっちゃけ話をする本は気象だったと思われる。
増沢騎手と親しかったようで、あまり語られない増沢騎手目線のオグリキャップの話がいく
賭けとイギリス人 小林章夫
小林章夫さんは上智大学などで教鞭を執られた英文学者。
小林さんは2004年に「イギリス人は何にでも賭ける」という本も書かれているようなのだが、とりあえず1995年のこちらの新書を読んでみた。
ギャンブル大国イギリスの賭博の歴史から始まり、その取締り、サッカーを通じた今のイギリス人のギャンブル観、と進んでいく。
やはり興味深いのはギャンブルの歴史で、誰もが思い浮かぶサイコロ・トランプや今の競馬・
スポーツノンフィクション 咬ませ犬 後藤正治
競馬の世界で有名な後藤正俊氏ではなく、後藤正治氏の作品。
5つの雑誌記事を1冊にまとめたもので、ボクシング、野球2軍監督、ラグビー、登山、そして競馬厩務員について書かれている。
競馬厩務員について書かれた「ライアンの蹄音」は、題名の通り、メジロライアンを担当されていた奥平厩舎の小島浩三氏についての作品。
ほかにもメジロドーベルやエイティトウショウなどを担当されていたのだというから凄い。
クラシ
奇蹟の馬 サイレンススズカ 柴田哲孝
柴田哲孝さんといえばライスシャワー本。
内容を見ずに、自分が持っていない柴田さんの本が平積みになっていたので買ってしまった(ハルキ文庫がなんなのかも分かってなかった)。
サイレンススズカほか、メジロパーマーやユキノビジン、ウオッカなどの名馬について柴田氏が書いたものをまとめた本。
基本的には過去に書かれたものを集めたもので、その後の各馬の状況などが加筆されている。自分が持っている版だとウオッカの
馬産地ビジネス―知られざる「競馬業界」の裏側 河村清明
アグネスデジタルの天皇賞制覇を機に書かれた本で、日本競馬がかなり暗い時期。新潟三条が廃止され、北海道も危機の最中。
このあと北関東3場が廃止される。
そんな中で、馬産地を巡って色々な人に聞き取りをした、画期的な本。
執筆当時安定扱いのメジロ牧場は既になく、マギーファーム小寺氏についてはネット上に変な噂話が載っている。マイネル岡田氏が勝負を賭けたカームとマイネルエクソンの結果も出ている。
ただ、勝
南半球で馬主になる 川上鉱介ほか
南半球で馬主になるには、という主題で、オーストラリア競馬についての説明がなされている。題名からして全くの初心者が買う本ではないが、ある程度の競馬の予備知識があることが前提の本。
競馬のルール説明は基本的に馬券購入者目線になるので、馬主目線で競馬の制度を見るという本はあまりない。のであるが、馬主目線の説明でも非常に分かりやすく、オーストラリア競馬の概要が頭に入ってくる。
振り返れば自分が競馬を覚え
競馬感性の法則 角居勝彦
週刊ポスト連載を再編して書籍化したもの。小学館新書から出ているのもその関係ですね。
最初の1・2章はレースごとのコラムをまとめている。
そのため、競馬を知っている人には当たり前の話も多く、世界の角居先生に書かせる話じゃないだろ、というものもある。
3章以降は角居先生の調教論なども出てきて、読み応えが出てくる。
厩舎を育てるためには「1人の腕利きより5人の平均的厩務員」という考えも出てきており、
注文の多い競馬場 高橋直子
高橋さんが海外の競馬場に行った際のエッセイが中心。岡部幸雄騎手のマカオダービーから始まるマニアックさです。
関係者への密着取材、という種類のエッセイではないため、変に現場に突っ込みすぎた話はなく、それゆえ当時の現場の雰囲気が伝わってきます。読んでいてそれが非常に心地よいです。
登場するラムタラやホワイトマズルは日本で種牡馬になっていますし、オークス馬エリンコートの母エリンバードの現役時代の話な
挑戦!競馬革命 角居勝彦
日本内外で素晴らしい実績を誇る、角居調教師の本。
2007年、ウオッカがダービーを勝った年に出た本。ご自身の歩みを振り返るような展開になっている。
酒でやらかしたとはいえ、基本的には人格的にしっかりした優しい先生なので(私が知っているのは引退を決めた後の先生なので、現場での姿は知らないが)、誰かを批判するような突っ込んだ暴露話はない。
それでも、中尾厩舎時代の話などは今となっては本当に遠い過去の
靄に消えた馬―園田の郷から 宇田遥
小説家になろう、というサイトで全文無料で読めることを知ったのは、読み終えた後。
オオエライジンを見て人生が変わった人たちをめぐる小説である。
もちろんオオエライジンの競走成績とともに話は進んでいくが、あくまでまわりの人たちについての小説であって、オオエライジンそのものについての話はない。
正直なところ、JRAと南関メインで見ているとオオエライジンについての印象はそんなに強いものでは無く(大井に
競馬の終わり 杉山俊彦
ロシアが日本を占領し、日本の首府は新潟に、中山競馬場は荒廃し、菊花賞は大ロシア賞になった、という世界でのSF作品。
ロシアが日本を占領、というのは現在(読んだのは2022年4月)のロシアによるウクライナ侵略を思うと変なリアリティがあります。この時期に読んだのは完全に偶然(そもそもロシアものだとも知らなかった)。
おそらく競馬が分からないとかなり辛い作品で、解説にもあるとおりそのような作品が新人
千三百四十一勝のマーチ―選手生活32年思い出すまま 松本勝明
2021年3月6日に亡くなった松本勝明氏の自伝。昭和58年の作品。
1949年という、本当に初期に競輪選手になった松本氏が1982年に引退するまでの作品なだけに、松本氏の歩みはまさに日本における競輪の歩みそのもの。競輪の歴史を選手視点で見ることができる、貴重な本である。
競輪学校が無い時代にデビューに至る流れ、鳴尾事件の衝撃、宝ヶ池競輪場の廃止、選手宿舎が無い時代の雰囲気、高原永伍への思い、海