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才能の科学(読書感想)後編


才能の科学 マシュー・サイド著 
山形浩生・守岡桜訳 河出書房新社

私の少年時代だと、陸上競技ならカールルイスやベンジョンソン。ボクシングならマイクタイソンが黒人選手で有名だったが、私の少年時代あたりだと小学校の先生ですら、「人種的にやっぱり(黒人は)身体能力が高いからだね」と、差別意識なしに普通に社会の常識のように話していたし、それは反対に「日本人では絶対に勝てないよ」という意味でもあった。まだ、遺伝子というものが、一般に何か分からない時代の話である。

理解のレベルで言うと、「A子ちゃんのお母さんは美人だから、やっぱりA子ちゃんも可愛いよね」という、あのレベルの遺伝子理解でしかない。というか、メイクアップ技術や美容整形の発展していなかったあの時代、この公式はほぼ正解と言えた。 

だが、野球のメジャーリーグでも、サッカーの海外リーグでも、当時では考えられなかった程、現在は日本人が活躍しているではないか?特に最近のストリートダンスシーンやスケートボード選手の躍進などは、スーパーサイヤ人(アニメのドラゴンボールより)ならぬ、スーパー日本人の登場さえ思わせる。

しかし反対に、当時はエコノミックアニマル(経済しか出来ない動物)とまで揶揄された経済の達人である日本人と超経済大国は今や、その影さえも見れない。

そして、街中には、今やA子ちゃん級の美女が溢れかえっていて、私にはそのレベルが余りに僅差過ぎて、いい意味で全く区別がつかない!皆、同じ顔に見える。いや、今の若者が本当に羨ましい。

これは、日本人の遺伝子が変化したのか?

いや、元々遺伝子は関係ない。
そもそも、そんな短期間で遺伝子は変化できない。

周辺環境を含めた、努力の在り方が変化したのだ。

もちろん、本書にこれらの冗談めいたことは書かれてはいないが、実は同じようなことが、本書の第三部には書かれており、多くの才能ある陸上競技のアフリカの黒人選手の遺伝子検査から意外なことが分かったと述べられている。

それは、アフリカの黒人選手の遺伝子の中で、足の速い遺伝子を持った人々は、ほんの極一部なのだという検査結果だったと言うのだ。

彼(彼女)らは、決して遺伝子的に他の白人やアジア系人種に対して、優位でも何でもなく、ただ貧困から脱出する為に出来る努力の最も効果的な手段が、走ること(陸上競技)だったと言うだけのことだそうだ。

もちろん、要因はそれだけではない。社会(周囲の人々)がそれを確信(錯覚)して、資本(お金)を投じて走る(練習)環境や人材(コーチ)を整えたことも大きく、その変化(努力)を加速度的に広め増大させたともしている。

詳しくは本書を読んでいただきたいが、結局のところ全てを読んで、才能を作るのは遺伝子ではなく、努力でしかないし、実はその努力は内容(やり方)によって、時間的な操作や金銭的な成功さえも、トレンド(時代の流れ)を間違えなければ、時に約束されるそうである。

ただし、本番で「イップス」(上がり症)の様なミスをしなければという条件は付くが、それもコントロールは可能だと言う。(読書感想中編参照)。

「才能は後天的に伸ばせる!」という本書の帯を信じるならば、さて私も、これらの知識を利用して、人生もうひと花位は、四十代後半以降で、咲かせてみたいものである。笑

終わり


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