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ひと足お先にシュトーレン。

先日、ドイツのクリスマスといえば……ということで、シュトーレンを買った。


そのときはまだ10月の終わりだったのだけれど、近所のお気に入りのパン屋さんで売っているのを知り、これは買わねば!!と思い買ったのだ。


今回は、このシュトーレンの話を書いていこうと思う。


ドイツでは10月の後半、ハロウィンとほとんど変わらない時期から本格的にシュトーレンの販売が始まる。
逆にハロウィンはアメリカや日本のように、派手に町や庭がデコレーションされることはあまりない。子どものいるお家の玄関先にジャック・オー・ランタンがあったり、ハロウィン前後に仮装したり顔にペイントをした子どもが学校や幼稚園などのイベントに出掛けているくらいだった。

街のクラブなどでは大人が仮装することもあるようで、夜クラブのある方へ向かってコスプレ的な仮装をして歩いていく人たちをちらっと見たけれど、概ね子どもを持つ家族のイベントっぽい感じがあった。
規模感的には「ひな祭り」とか「こどもの日」、みたいな感じだろうか。日本のスーパーのコーナーと比べると、ドイツのハロウィン関連の売り場よりも「ひな祭り」などのほうが、イベントごととして大きいような気がする。

そんな予想よりも静かなハロウィンの裏で、ちょっとずつクリスマス関連のお菓子や飾りが売り場を広げていた。やはりドイツの秋~冬のイベントのメインは「 クリスマス 」なのだろう。


その先駆けとしてお菓子やアドベントカレンダーなどと並んで出てくるのが、「シュトーレン」だ。
先日も書いたけれど、ドイツではシュトーレンより「シュトレン」のほうが通じる。

10月の末になると、街のパン屋さんやお菓子屋さん、スーパーマーケットまでもシュトーレンを売り始める。

スーパーにも金シール付きのシュトーレンが売っていることも


値段やサイズも結構色々


ミニサイズもあるよ!

ちなみにここ以外にも、スーパーの通路の真ん中に積み上げられて売られていたりもする。
序盤からシュトーレンが大売り出し状態だ。


最初見たときは、「え、まだ10月だけど…」と驚いた。
「 シュトーレン 」はアドベントカレンダーと同じく、クリスマスまでを楽しみに待ちながら食べるお菓子なので、おそらくアドヴェント(待降節)頃から食べるのが正しいような気がする。
そうなると、12月の頭から食べるのが正しいような気もするが……
まぁでも、クリスマスを楽しみにしてるのは確かだろうし、早めでもOKということなのかもしれない。


そしてあらためて、私が買ったシュトーレンを紹介しよう。

いろんなパッケージのシュトーレンがあるけれど、
今のところ箱のデザインが一番好き

私の好きな近所のパン屋さんで買った「クリストシュトレン」だ。

「クリストシュトレン」は、クリスマスシーズンに作られるドライフルーツなどがふんだんに使われたシュトーレンをこう呼ぶらしい。
シュトーレンの右上についている、番号の入った金のワッペンシールがドレスデン・シュトーレン保護協会にも認められた「ドレスナークリストシュトレン(Dresdner Christstollen)」の証だ。
「ドレスナークリストシュトレン」はざっくり訳すと「ドレスデン風クリスマスシュトーレン」という感じだろうか。

発祥の地については諸説あるようだけれど、とりあえず伝統のあるシュトーレンの一つのようだ。

この称号的金シールは、伝統的なレシピ、材料の品質、製造がドレスデンと決められた近隣の町であること、そのほか諸々を守ったシュトーレンしか貼ることができないらしい。

お気に入りのパン屋さんでは、シュトーレンを1kg・2kg・3kgで売っていた。値段は20ユーロほどでそれより小さいサイズでは売っていなかったので、1kgを買うことにした。

1Kgのシュトーレンだと、箱の中はこんな感じ。

きっと3キロまで同じ箱に入れるのかな?

箱に対してはちょっと中身が小さく見えるし、厚みも一番厚みのあるところで5cm弱だけれど、ずっしりしていてしっかり1kgある。
かなり鈍器みを帯びたケーキである。

日本の一般的なまな板との比較

まな板に乗せると、もう少しサイズ感がわかりやすいだろうか。
長さは大体、A4のノートパソコンの横幅くらいある。
シュトーレンの包みにも金色のシールを貼ってあるところに、金ワッペンの誇りとプライドを感じる。

一見大きい大福みたいだが、シュトレンである

そんな誇りとプライドを脱ぎ去っていただくと、こんな感じに。
この白いものは全部粉砂糖で、2~3mmくらいの層になってシュトーレン全体を覆っている。

皆様ご注目ください、「シュトーレン入刀」です

シュトーレンには正しい切り方みたいなものがあって、買ったお店の人によると、真ん中から薄くスライスするのが良いらしい。
全体が砂糖に覆われているという状態から考えて、端から切っていくよりも水分が抜けにくくなるとか、何か保存的にもメリットがあるのだと思われる。

せっかく色々説明してもらったのに、私は半分に切ってからスライスすることと、少し温めて食べることしか、お店の人の話は聞き取れなかった。めんぼくない。

とりあえずこれくらいにしといてやろう

ど真ん中を一刀両断したあと、中心からから5mm~1cmくらいの厚みにカットしていく。もう少し薄めに切りたいと思っていたのだが、ご覧の通りお砂糖がボロボロ外れてしまうので、予定よりも厚めに切ることになった。

レーズンとナッツがぎっしり!
これぞ「ドレスナークリストシュトレン」なのである(たぶん)

そして切ったところだけ取り出してお皿に並べるとこんな感じ。
お酒に漬けられたレーズンと柑橘(多分レモンピールか、オレンジピール)ナッツなどがこれでもかと練り込まれている。

食べてみると、まずは周りのお砂糖の甘さを感じつつ、お酒の香りがするレーズン、爽やかな柑橘の香り、そしてしっとりとしたナッツが歯ごたえを与えていて、最後にバターの香りが鼻に抜けていく。
レーズンがあまり得意ではないのだが、むしろレーズンがあるから美味しいと思える。レーズンの甘みと香りがバターの風味とよく合うし、柑橘の香りも口当たりをさっぱりとさせてくれる。

コーヒーや紅茶との相性も最高だ。


保存をきかせるためもあってか全体的に甘味は強めだけれど、他の素材の香りや味もしっかりしているため、甘さだけが目立たないのだと思う。
パウンドケーキとクッキーの間のような生地の密度なので、1cm弱の厚みの1枚で、日本で売られているカットケーキを一つ食べたような満足感がある。


私は1cm弱のシュートーレンを半分くらいを朝ごはんとしてコーヒーと一緒に食べるのがお気に入りだ。
お砂糖が多いからか、朝食に食べると眠気が一気に吹き飛び、視界が少し明るくなるような感覚もある。朝ごはんとしてエナジードリンクを飲んだときのような、気合いを入るお菓子だ。(笑)
もちろん、午後におやつとして食べても美味しい。
しかし腹持ちがいいので、あまり食べすぎると夕飯に響くところにだけ注意してもらいたい。

約3週間経った現在。
残りこれだけになりました

この時期は「クリストシュトレン」の他にも、たくさんのシュトーレンが販売される。
パン屋さんやケーキを扱うカフェなどでもシュトーレンが売っているところが結構あって、お店によってマジパンが入っているものや、ナッツやアーモンドの粉(アーモンドプードル)が多いもの、チョコレートや紅茶が入ったものなども見かけている。
ドレスナーシュトレンとほとんど同じ材料でも、材料の配分が異なるクリストシュトレンもあるようだ。

ただ、金のシールが付いたシュトーレンはレシピが決まっているので、大体同じ見た目と味になると思う。
(シュトーレンパン職人は「そんなことはない!」と言いそうだけれど……すみません)

もうそろそろ1kgのシュトーレンを食べ終えるので、今シーズン中にあえて金のシール無しのシュトーレンも食べてみたいと思っている。
色々食べ比べるからこそ、その価値がよりわかることもあると思うし、何事も経験だ。


個人的に気になったビールアドヴェントカレンダー。
ビールを飲みながらクリスマスを待つ、それがドイツ流(?)
サンタもイカしている


ちなみに毎年の12月の始めにドレスデンでは「シュトレン祭り」なるものも開催されている。
何トンもある巨大シュトーレンとシュトーレンパン職人たちが練り歩くパレードを行ったあと、シュトーレンの解体ショーを行い、解体されたシュトーレンが販売されるらしい。

解体ショーは魚でしか見たことがないので、俄然テンションが上っている。
そんなに大きいシュトーレンをどうやって焼くのだろうか?
とにかく、気になりすぎてテンションが上っている。
本当に、テンションが上っている。



かなり人気のイベントらしく、解体されたシュトーレンが買えるかは分からないが、可能ならゲットしたいところだ。
とりあえず、様子だけでも見に行きたい。
各店の腕のあるパン職人が店名のプラカードを持って練り歩くお祭りというのも、なかなか珍しいと思う。


まもなく始まるクリスマスシーズン、色々発見の多い冬になりそうだ。

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